全てのステンレスは、さびる!:甚さんの「技術者は材料選択から勝負に出ろ!」(4)(1/3 ページ)
「ステンレスはさびない」と勘違いしていないだろうか。ステンレスの腐食が原因の破損や火災などのトラブルは、非常に多い!
当連載の登場人物
根川 甚八(ねがわ じんぱち)
根川製作所 代表取締役社長。団塊世代の大田区系オヤジ技術屋。通称、甚さん
国木田良太(くにきだ りょうた)
ADO製作所 PC事業部 設計2課 勤務。80年代生のイマドキな若者。機構設計者。通称、良君
編集部注* 本記事はフィクションです。実在の人物団体などとは一切関係ありません。
オメェ、さっさと「3次元モデラー」と「CAEキー坊」を卒業しろってんだ、あん? 大体オメェは、「いよいよ卒業か?」って思うと、すーぐに元に戻っちまうんだからよぅっ。
設計者ではない造形者、それを「3次元モデラー」と呼び、1日中、キーボードをたたいているCAE技術者を「キー坊」と呼んでいる。
(連載第2回、甚さんの言葉より)
甚さん! 何度も何度も同じことを言わせないでください。「CAEキー坊」だけは本っ当に止めてください。それ以上言うなら、甚さんのタバコ、奥さんに言い付けますよ!
その理由を聞かせてもらおうじゃねぇかい? あん?
今回の震災で、しっかり目が覚めたんです。このままじゃいけないって! 僕は、甚さんに「CAEキー坊」だと指摘された次の日から、ちゃんとおさらばしました!
あん? 分かったような口を利くんじゃねぇ!
確かに僕は、「大学院を首席で卒業したけど、実務はダメ」って、甚さんには何度も言われてきました。以前はCAEの仕事がないときも、キーボードをたたいて仕事をしているフリをしていました。でも、そのままじゃダメだって、僕自身もよく分かっていたんですよ。そして甚さんから、「CAEキー坊」と呼ばれたあの日、早速、CAEの“仕事”について職場の仲間と夜を徹して話し合ったんです。
それでどうした? 結論から言えってんだよ。
その結論は、「CAEの仕事は待つのではなく、取りに行く!」。これを仲間とともに決めたんです。そしたら、エリカちゃんが……。
ドォ、どぉしたんだ?
僕のことを「頼もしい」「震災後、変わった!」と言ってくれたんです。
泣けるじゃねぇかい! オイ、お前さんも江戸っ子だねぇ〜!
いいえ、違いますっ! 富士山麓大学の地元、静岡っ子です。焼きそばとおでん、いわし、そして富士スピードウェイが大好きです。
そうか……。ともかく、オメェのことは「CAEキー坊」ともう言わねぇよぅ。ゆるしちくり!
ボルタの電池は“悪魔の電食”
オイ、良君! 第2回でこんな部分があったのを覚えているかい? あん?
ステンレスは、「人類初、急激に使用された材料である」といわれています。その一方で、「ステンレスが原因のトラブルが急増しています」と当事務所では情報を発信しています。
トラブルとはなんでしょうか?
実は、よく覚えています。なぜかというと、「福島第一原発」を連想したからです。
なっ、何だ、オレサマにも教えちくれ! 冴えまくっているじゃねぇかい。
昔の話ですが、原子力発電所の「原子炉圧力容器」や、その近傍の「配管類」の材料は「SUS304」で、その溶接部がさびまくって、現在は「SUS316」に変更になったと聞いていたからです。
だからといって、あの災害で「真水注入」でなく、「海水注入」はまずいんじゃねぇの?
原子炉史上初の「海水注入」だと、ある国の専門家が警告したそうですが、そのリスクを上回るリスクがあったのでしょう。私たち素人には、難解な話題ですね。
なるほど、さすが富士山麓大学の院卒だぁ! 「目の付けどころが、シャープでしょ」だ。ところで、あの三洋電機の件(パナソニックグループの事業統合、白物家電事業の売却)は残念だなぁ。「関西系のメーカーには、もう少し頑張ってほしかった」と、江戸っ子のオレサマもそう思っちまうぜぃ!
甚さん? 昨日のホッピーが残っているんですか?
バッカモン! 次の日に酒を残さないために、ホッピーを飲んでいるんじゃねぇかい。あん? オメェがもし職人ならよぉ、「人類初、急激に使用された材料である」と知って、有頂天になってステンレスを使うんじゃねぇぞ。
あっ! もう分かりました。「職人なら常に裏を読め!」、このことですね! 甚さん、いつもワンパターンだからすぐ分かります。
ワンパターンは余計だ! しっかしよぉ、良君。大震災は悲惨な爪痕(あと)を残したがよぉ、オメェら若造がよう、たくましくなったよなぁ。感心、感心!
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