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航空機の車輪格納に使われるリンク機構メカメカリンクで設計しよう(5)(3/3 ページ)

動作が終わったとき、コンパクトに格納したい! そんな機構を作るときのよいお手本が、航空機の車輪格納機構だ。

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【No.19】航空機に見られる車輪格納機構(交差・思案点通過)

 No.16と同じ機能を持つ機構で、リンクを交差したものです。

 図4のアニメーションから、下記のことが分かります。

  • タイヤが接地すると反力によって駆動リンクがストッパに押し当たりリンク機構が拘束され荷重を受けることができる。
  • 接地による負荷を解除した後、駆動リンクを時計回り(CW)させると、タイヤが付いた従動リンクが持ち上げられ、折りたたまれることで格納できる。

 格納時に思案点を通り越しますが、思案点ではタイヤ位置は持ち上がるため増加するスペースを考慮しなくてもいいのが特徴です。

航空機に見られる車輪格納機構(交差・思案点通過)
図4 航空機に見られる車輪格納機構(交差・思案点通過)

航空機の着陸装置

 航空機の着陸装置は、緩衝支柱、車輪、ブレーキで構成されます。着陸装置の機能として、下記のものがあります。

  • 離着陸時に地上滑走をする
  • 機体重量を支える
  • 着陸時の運動エネルギーを吸収し衝撃を緩和する

 大型の旅客機には約20本のタイヤが装着され、ボーイング777で約340トン、エアバスA380で約560トンの機体重量と、離着陸時250〜350km/hという高速回転荷重や衝撃荷重にも耐えなければいけません。

 さらに高度1万メートルの気温−45℃から着陸時のタイヤ表面温度250℃超までの温度変化の大きな耐環境性も要求されます。

 そのため、航空機のタイヤは特殊な合成ゴムが使われていると思われがちですが、一般的な機械製品も使用される天然ゴムが使われています。離着陸を繰り返すうちに摩耗するので、離着陸回数の多い国内線では1カ月半でタイヤ交換するとのことです。



今回のまとめ

 リンク機構を設計する場合、動作終了時にコンパクトに折りたたんでスペースを確保したいという場合がほとんどだと思います。このようなときに、航空機の車輪格納機構が参考になります。

 今回は四節リンクの揺動機構のみに絞った構造を紹介しました。四節リンクの回転運動を利用したものやスライド機構を利用したものは、この連載の中で紹介していきます。



 今回までは四節リンクの揺動機構を取り上げてきましたが、次回からは四節リンクの回転機構を取り上げ、それらの動作特性や特徴を確認しましょう。(次回に続く)

Profile

山田 学(やまだ まなぶ)

1963年生まれ。ラブノーツ代表取締役、技術士(機械部門)。カヤバ工業(現、KYB)自動車技術研究所で電動パワーステアリングの研究開発、グローリー工業(現、グローリー)設計部で銀行向け紙幣処理機の設計などに従事。兵庫県技能検定委員として技能検定(機械プラント製図)の検定試験運営、指導、採点にも携わる。2006年4月、技術者教育専門の六自由度技術士事務所を設立。2007年1月、ラブノーツを設立し、会社法人(株式会社)として技術者教育を行っている。著書に『図面って、どない描くねん!』『読んで調べる 設計製図リストブック』(共に日刊工業新聞社刊)など。



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