なぜスマートハウスが必要なのか:スマートグリッド スマートハウス開発法(1)(2/2 ページ)
電力事情が不安定になっているなか、電力を自給できるスマートハウスに注目が集まっている。住宅の屋根に太陽電池を取り付けること以外に何ができるのか、なぜスマートハウスがなかなか立ち上がらないのか、どのような技術が重要なのかを2回にわたって紹介する。
第3の手法を実現した福岡プロジェクト
これまでのプロジェクトとは異なる手法でスマートハウスの技術開発を進める取り組みがある。「福岡スマートハウスコンソーシアム」だ。スマートエナジー研究所のCTOファウンダーである中村良道氏の呼びかけで2010年6月に発足し、20社以上の企業の他、学術団体などが参加した*3)。
同プロジェクトは、多数の企業が集まってコンソーシアムを結成後、4カ月でスマートハウス構築にこぎ着けた(図2)。他のプロジェクトと比較すると素早さが際立つ。
図2 スマートハウスの構成 通常のスマートハウスは、創エネ、蓄エネ、省エネをうたうが、福岡では「制御」を重視している。福岡市東区の福岡アイランドシティ中央公園内にある2階建ての既設住宅をスマートハウス化した。出典:福岡スマートハウスコンソーシアム
太陽電池や二次電池、電気自動車が接続されており、創エネ、蓄エネ、省エネを実現した第二世代のスマートハウスだ。
素早い構築以外にも福岡スマートハウスコンソーシアムには他のプロジェクトにはない、幾つかの特長がある。
- 開発期限を定めない
- 主導する企業はなく、国や地方自治体に主導権がない
- 参加企業は既にほぼ完成している自分の技術を持ち寄る
- 技術偏重ではない
このような特長を打ち出せたのは、偶然の出会いや人と人とのつながりによるものだった。福岡市は組み込み産業を立ち上げようと、各種の団体を立ち上げ、セミナーなどを開催していた。これが福岡市という立地を決めた。
中村氏はエネルギーのデジタル制御に関する研究者であり、組み込みソフトウェアにも詳しい。セミナーでは、創エネ、蓄エネ、省エネを植物細胞の葉緑体、液胞、ミトコンドリアに例え、スマートハウスやスマートハウスのハウス間連携(スマートタウン)、さらには田園都市ともいえる「スマートコミュニティ構想」を紹介していった。
アバール長崎の川浪義光社長は、組み込み技術を電源に適用することで他社との優位性を得ようとしていた。dSPACEの有馬仁志社長は自動車に適用してきたモデルベース開発の適用分野を探していた。
スマートハウスを開発するという目的が当初からあったわけではない。「当社は組み込み専業であり、制御ボードなどを設計している。組み込み技術があまり適用されていない分野としてデジタル制御の電源開発を考えていた。中村氏との出会いの中で、スマートハウスという用途が開けてきた」(川浪氏)という。
このようにしてスマートハウスに適用できそうな技術を既に持っている企業がセミナーを通じて集まり、スマートハウスを作るという目的を共同で実現しようと福岡スマートハウスコンソーシアムを立ち上げた。
スマートハウス化した住宅も、他の用途で利用されてきた取り壊し予定の建物を借り上げただけであり、他のプロジェクトとは様相が異なる。
機器間をどう接続するのか
とはいえ、スマートハウスを構成するさまざまな機器は、電力線や通信線を通じて互いに結合している。もともと無関係だった各社が独自技術を持ち寄っただけでは、開発が進まず、制御もできないだろう。次回は、どのようにして多様な技術や機器を結び付けてスマートハウスを実現したのかを紹介する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- スマートハウスの実現相次ぐ、トヨタが販売を開始、パナソニックは街ごと開発
創エネ、蓄エネ、省エネを早くも実現 - スマートグリッドを機に、なぜものづくりが変わるのか
開発プロセスの圧縮が必要