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なぜスマートハウスが必要なのかスマートグリッド スマートハウス開発法(1)(1/2 ページ)

電力事情が不安定になっているなか、電力を自給できるスマートハウスに注目が集まっている。住宅の屋根に太陽電池を取り付けること以外に何ができるのか、なぜスマートハウスがなかなか立ち上がらないのか、どのような技術が重要なのかを2回にわたって紹介する。

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太陽電池以外に何が必要なのか

 かなりの電力を自給できる住宅──スマートハウス──に関心が集まっている。地震や停電、原子炉の事故と運転停止、「強制」節電など、電力をめぐる不安がますます高まっているからだ。

 スマートハウスを実現するには何が必要だろうか。建物の屋根に太陽電池を載せて「創エネ」を進め、大容量二次電池やEVで「蓄エネ」を実現し、家電の運転を制御する「省エネ」の技術が必要だ(図1)。では、どの技術が最も重要なのだろうか。太陽電池だろうか、二次電池だろうか、制御用のHEMS(Home Energy Management System)だろうか。そもそも技術の問題なのだろうか。


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図1 スマートハウスの一例 福岡スマートハウスコンソーシアムが構築したスマートハウス。太陽電池、二次電池、EV(電気自動車)など必要だとされる技術を取り込んだ。写真にはないが、風力発電も導入している。出典:福岡スマートハウスコンソーシアム

なぜ太陽電池だけでは不十分なのか

 太陽電池を備えたいわば第1段階のスマートハウスは既に実現している。月々支払う電気料金よりも売電の金額が上回り、光熱費をゼロにすることも十分可能だ。第1段階のスマートハウスは電力系統に強く依存しているものの、戸建て住宅の太陽電池の普及率は、1%程度*1)にとどまっており、大容量の太陽電池を備えた住宅が、いわば従来型の住宅の中に1軒だけ建っている状態だ。

*1)総務省が5年ごとに実施する住宅・土地統計調査(平成20年住宅・土地統計調査(速報集計)結果の要約)による。

 しかし、10年以内には太陽電池の普及率が政府の計画に沿った方向で高まっていき*2)、太陽電池を備えた住宅がずらりと並び始めるだろう。こうなると、系統に強く依存していることが問題につながる。晴天時の日中には一斉に系統に電力を送ることになるからだ。系統側の電圧が上昇し、柱上トランスなどの配電系統に負荷が掛かる。発電(売電)するばかりで、消費する住宅がなければ、うまく売電もできなくなる。逆潮流による系統電圧の上昇が問題を生むわけだ。

*2)前述の総務省の調査で最も普及率が高かったのは佐賀県の3%だった。同県の普及率は2011年3月末時点で既に2倍近い5.8%に達している。

 このような問題に対応するには、電力が余ったときにある程度宅内で蓄電ができ、なるべく系統に電力を送らないよう家電などを制御する第2世代のスマートハウスが必要だ。宅内で電力が余っているときにはあらかじめ温水を作る、冷熱を蓄えるといった家電の動作制御も必要になるだろう。

なぜスマートハウスが開発できないのか

 系統に負担をかけず、電力の地産地消ができるようないわば第2世代のスマートハウスを開発しようとしている企業は多い。全くの新技術を開発する必要はない。ほとんどの部分は既存の技術を組み合わせることで実現できる。すぐにでも実現できる部分は多い。しかし、多くの開発プロジェクトの進展は遅く、実用化時期も見えにくい。開発プロジェクトの進め方に問題がありそうだ。

 スマートハウスの開発プロジェクトは、2種類に大別できる。1つは自社の技術でほとんどの部分をまかなおうとするもの、もう1つは複数の企業や研究機関が参加する国のプロジェクトだ。

 総合電機メーカーは、スマートハウスに必要な技術の開発を進めており、自社の先進技術を多数盛り込んだスマートハウスを構築しようとしている。既に数社が工場などの敷地内にモデルハウスを建設し、実証実験に取り掛かっている。課題は、他社の有力な技術を取り込みにくいこと、構築コストを引き下げにくいことだ。ある総合電機メーカーのスマートハウスを見学した際、上物のコストを質問したところ、約1億円という回答を得た(2階建て、延床面積220m2、2x4工法)。このままでは普及は難しい。

 国のプロジェクトにも課題がある。開発期間が4〜5年と長いことはともかく、実証実験を開始する以前に成果として要求される内容が大量の書類とともにまとまっており、成果を素早く出すというよりも、書類通りに進めることが優先されてしまう。参加社同士の利害関係の調整も難しい。このため、プロジェクトの1年目は宅内に機材が全く搬入されていないということも珍しくはない。

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