横弾性係数を知らないのにCAE?:甚さんの「技術者は材料選択から勝負に出ろ!」(2)(2/3 ページ)
縦弾性係数と横弾性係数の使い分けを明確に! キーボードをたたいているだけのCAE技術者「キー坊」ではダメ。
まず、縦弾性係数とは何かを説明します。読み方は、「たて・だんせいけいすう」です。縦弾性係数とは、高校1年の物理で習った「ヤング率」そのものです。ヤング率といえば、ばねが登場し、「フックの法則」が出てきました。覚えていますか?
それでは、下記に「フックの法則」を書きます。
フックの法則:E(縦弾性係数)=σ(応力)/ε(ひずみ)
例えば、鋼材や鋼板の場合、図3の特性を有しています。これを、「軟鋼の応力−ひずみ線図」といいます。各種の資格試験や入社試験における出題の定番ですから、今すぐに丸暗記しましょう。
縦弾性係数(E)は、グラフにおける傾き(=σ/ε)であることに気がついてください。線分の「傾き」とは中学1年生の数学で習いました。Y=aXの「a」の部分を「(グラフの、直線の)傾き」と習いました。
図3の原点(0点)からσp(比例限度)の間で成立するのが、フックの法則であり、そこには縦弾性係数が存在します。
あっ、これは富士山麓大学の大学院入学試験と、就職試験にも出ました。試験によく出るということは、昔から非常に重要な「目利き力」だったのですね。
良君! その通りだ。さすがに実務はダメでも、受験には強い。なんか、最近はやけに冴えているじゃねぇかい、あん?
図3は、何とも変わったカーブを描いていましたね。
一方、鋼材や鋼板以外の場合は、図4の特性を有しています。今度は、何とも特徴のないカーブです。「以外」の単語がキーワードです。
★目利き力ポイント!:軟鋼以外の材料は、図4に示す特徴のない「応力−ひずみ線図」を描く。
ここで、重要なメッセージがあります。
筆者は、設計コンサルタントとして生計を立てていますが、そのクライアント様から、設計審査員としてよく呼ばれます。
ここで気づいたのですが、応力計算や安全率の計算式のなかで、多くの箇所で使われているのが縦弾性係数(E)であり、ほとんど横弾性係数(G)に巡り合うことがありません。なぜでしょうか?
実は、横弾性係数(G)という用語の存在を知らないのです。これが日本の設計力であり、「設計書がない日本企業の弱点」が露呈してしまいました。
ナイナイ主義の日本企業(参考記事): | |
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⇒ | 甚さんの設計分析大特訓(6)「競合商品を設計分析で駆逐しようぜぃ!」 |
じょ、ジョ……冗談だろう? あん? 料理人における「調味料の全てが醤油(しょうゆ)」……みてぇなもんよ。大工の全ての工具が、「チェーンソー」ってかぁ? ドヒェツ〜〜!
縦弾性係数(E)と横弾性係数(G)の「使用目的の明確化」を確立しましょう。
使用目的の明確化とは(参考記事): | |
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⇒ | 甚さんの設計分析大特訓(1)「灯油ポンプの設計書を書こうじゃねぇかい!」 |
一流の職人になるために、くどい解説はあえて避けました、図5の画像で理解してください。そして、図5の「画像」で記憶してください。「画像」の単語がキーワードです。
★目利き力ポイント!:縦弾性係数(E)と横弾性係数(G)の区別は、図5の画像で理解/記憶すること。
このまま「目利き力」の解説を進めていくと、学校における「材料力学」や「材料工学」になっちまうからよ、また次回に説明するぜぃ。
助かりました。ちょっと、退屈してきましたから。
退屈なのは、オメェの顔だぁ。こっちだって、美人のエリカちゃんを教えていたほうが楽しいんだぜぃ!
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