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金型屋さんがSNSで協力者を仕切って商品開発するマイクロモノづくり〜町工場の最終製品開発〜(8)(2/3 ページ)

日本の金型屋さんが製品開発を開始。外部の人たちを巻き込み、かゆいところに手が届く製品を開発しようと奮闘する

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チームクラウド――緩やかな、モノづくりに直接関係のない方々との連携

 モルテックは、10年近く自社で金型研修というプログラムを行い、外部の受講者をずっと受け入れていました。その受講者たちの中でネットワークが作られて、実際仕事につながったケースもありました。前述の学生たちのアイデアを形にするところで協力してもらったデザイナーも、そのネットワークの一員でした。

 この研修の受講者には、モルテックのWebページやブログを見たという方々が多いとのこと。インターネットというバーチャルな場で情報発信して、リアルな研修へ人を招き入れ、新規取引や新規事業の展開につなげるという戦略がうまくいっている事例といえます。

 私たちenmonoで支援するマイクロモノづくりも、こういったことを一層推めるべく、ソーシャルメディア、Amazonなども活用しながら、販売までつなげていけるようにしています。

ストーリー作りの大切さ

 松井氏は金型屋さんとして、前述の学生たちと作り上げたアクセサリーをギフトショーに出展しながら、そこを訪れるバイヤーたちといろいろと話をしたとのことです。

 バイヤーが「ここをもう少しこうしたい」といった要望を出せば、社長はその場ですぐに「それは対応ができる・できない」と回答していきます。このスピード感に、バイヤーたちは驚かされたようです。通常、相手にする小売業さんだと、商品を作り変えるような判断は、その場ではすぐできません。しかしこの場合、金型屋さん自らが売ってるので、そういう場合もその場で即答できます。これはすごく優位なことです。

 第1回で登場したミツワ 代表取締役の三輪隆一氏も、「モノを作っててほめられたのは、最終製品を売るようになってから」とおっしゃっていました。

 モノづくりに長けた町工場は、今までにはないところに活路を見いだすと、未来が開けるのではないでしょうか。そういう部分で、インターネットの活用は、中小製造業にこそ必要なのではないでしょうか。

 松井氏は、自身でWebページを作る中で、どうやってお客さんに自社のことを知ってもらおうか、常々考えるようになり、“お客さん目線”を身に付けられたとのことです。Webページの訪問者たちが見る内容、見るポイント、見る順番……、そういった動線を応用して、名刺のデザインも見直しました。例えば、まず自分の似顔絵でひき付けておき、その下に「裏面へ」の文字を入れます。これで名刺の裏面もスムーズに見てもらえるようになると考えたのです。

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松井氏の名刺

 アクセサリーを作って売ることの中で、ストーリーを作り、そのアクセサリーを持つ人同士の間に会話が生まれるようなことを考えたいと松井氏はいいます。モノを作るだけではなく、そのモノを持つことでコミュニティーが形成されるようになれば、「そのコミュニティーに関わりたい」という目的でモノを買う人も出てくるだろうということです。

 このように、モノづくりの中で「モノにストーリーを持たせる」ということが、日本のモノづくりには必要なのだと私は考えています。すなわち、そのストーリーこそが、物の価値であるということになります。

金型初期費用を負担してあげる

 松井氏は、本業の金型製造に関して、ユニークなアイデアを持っています。マイクロモノづくりにおいて、大切なことです。

 従来、金型屋さんは、メーカーに金型を販売していました。この場合、製造原価+マージンで、メーカーに買ってもらうだけだったので、値段交渉をされ、一層のコストダウンを求められてしまう状態です。

 松井氏がマイクロモノづくりに取り組んでみて、可能性を感じたことは、「金型費用を金型屋さんが負担すること」だといいます。従来モノづくりに踏み切れなかった人たち(フリーのデザイナーやエンジニア、中小企業の人など)が持つアイデアをより形にしやすくなるのではと考えたのです。

 まず、イニシャルで掛かる金型費は金型屋さんが負担することで、アイデアのある人たちの費用負担を軽減します。やがて製品化したものを売っていく中で、金型屋さんは費用を償却していけるようにします。モノが売れなければ金型費用は回収できないけれど、逆に売れていけば、従来のやり方で得ていた収益以上の額が手元に残ることになります。そのためには金型屋さんも、「売れるものかどうか」の目利きが必要でしょうし、営業にも協力する必要が出ます。

 自分が作ったものが売れていくためには、苦労も多いけれど、モチベーションも上がるものです。

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