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コラム

環境配慮設計と標準化の動向環境配慮設計のいま(2/3 ページ)

欧州議会で公布されたErP指令。あらゆる電機・電子機器製品に影響があるこのルールの現状と、企業への影響を識者に聞く

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リードタイムを考慮した設計の見直しに注意が必要

 このような事情を反映してか、ErP指令では、まず、環境配慮設計を実施した製品であることが要求され、さらに、製品カテゴリごとに規定されたエネルギー効率の改善や消費電力量の削減に関する基準値をクリアすることが要求される。後者は、定義と基準値が示されるのではっきりした要求事項であるが、前者は大まかな枠組みのみが規定されており、その実現方法は個々の事業者に委ねられている。提示されるのは枠組みだけであるが、そこでの言及は、製品企画、設計から量産過程や流通、ユーザー利用時の状況から廃棄に至るまでを含む製品ライフサイクル全体に対しての包括的な環境配慮が求められている。

 ErP指令に準拠してメーカーが環境に対して責任を負う際、最も注意しなくてはならないのが、製品出荷までのリードタイムだ。

 「規定の内容によっては、大幅な設計の見直しが必要とされる場合もあります。実施措置には、施行までのリードタイムが明示されているものや、基準値が段階的に引き上げられるものもあります。これらの動向をうまくキャッチアップしなければ、出荷直前に大きな手戻りが発生する可能性があります」(齋藤氏)

 一般的に、電機・電子機器製品などのコア技術に関連する部品は、調達のリードタイムが長いケースも多い。この部分が出荷段階でErP指令の規制に抵触する場合は、新たに設計からやり直しが必要になり、多くの時間を浪費することになりかねない。

サプライチェーン全てに責任を負うセットメーカーが注意すべきこと

 こうした規制に対して、セットメーカー側の視点に立つと、製品に含まれる1点1点の部品に対してどこまでコントロールできているかが大きな課題となってきているという。

 「例えばパソコン1製品に対して部品数は数万点にもなります。製品によっては、コアモジュール以外を全て海外から調達しているものもあります。これらの取引先全てをきちんとコントロールできていなければ、CEマークの取得ができません。ErP指令も、環境配慮設計の適合証明をCEマークの制度に即して実施するルールになっています」(齋藤氏)

 CEマークは欧州市場で製品を販売する際に、法規制に準拠していることを証明するもので、これを取得できなければ製品を販売できない。

 セットメーカーにとってはサプライチェーンのコントロールがいままで以上に厳しくなることが予想される。

 齋藤氏によると、CEマーク適合とされた場合でも、実際の生産工程にも注意していく必要があるという。

 「ErP指令では、各国に市場監視、つまり、市場調査での抜き打ちの検査などを行うことが義務付けられています。その際に、規制ルールぎりぎりの条件で製造していた場合には、製品個々のバラツキ状況によっては検査対商品が偶然規制ラインを超えてしまう場合があります。こうした意味でも製造時の品質管理が重要な課題ですし、設計段階で、規制に対して保守的な要件で考えていかざるを得ないかもしれません」(齋藤氏)

グローバル設計・製造での「標準語」の意義

 ErP指令はEU経済圏でのルールだが、RoHS指令、REACH規則のように、今後世界各国で同様のルールが作られる可能性がある。

 近年、特に、電機・電子機器製品ではモジュール設計によって共通プラットフォームを設計し、グローバル展開に際して個々のモジュールレベルでローカライズを行うケースが多くなってきている。ローカライズには現地で設計を行う場合が多く、調達も同様に現地メーカーから行うことも少なくない。

 「従来のグループ内に閉じたサプライチェーンと異なり、フラットな関係での末端までの管理は格段に難しいものになっています。日本の製造業が得意な『阿吽(あうん)の呼吸』では意思疎通は難しいでしょう。その際に、1つの基準として標準規格に準拠した製品アセスメントを実施していることを、客観的に証明することは非常に重要になってきています。そういう意味で、今般、IECは環境配慮設計の国際標準規格(IEC 62430)を発行しました」(齋藤氏)

 多くの大手セットメーカーはREACH規制やRoHS指令などへの対応として、既に独自のルールを持っており、一次サプライヤ、二次サプライヤくらいまでのコントロールは十分に行えていることだろう。

 しかし、グローバルで製品設計や製造を進めたうえで、特定有害物質の含有だけでなく、欧州市場の要求する包括的な環境配慮設計に対応するためには、末端の部品メーカー1社ずつに対処していかなくてはならない。

 「その際、セットメーカー側においても、前述のIEC 62430のような『標準語』をベースに、そのバリエーションとして自社基準を持つべきです。同時に、各国のサプライヤとの間においても、『標準語』をベースに、環境配慮設計の実施に関するコミュニケーションが図れることになります。国際的に競争とそのスピードが求められる中で、末端の中小部品メーカー1社ずつとの意思疎通においても、『標準語』をベースとしたコミュニケーションがより一層重要になってくると思っています」(齋藤氏)



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