プラレール電車を「断面急変」で切る!:甚さんの設計サバイバル大特訓(9)(3/3 ページ)
最終回では、いままで学んだ設計サバイバル術が身についているか、テストで確認。身についていないと甚さんのゲンコツが……。
“挽回中”は本当か? その心意気だ! 院卒のオメェならなんとかできる。断面急変部の探索スキャンは、アセンブリが切れて初めて役に立つ。XYZ方向、斜め30度、45度の探索スキャンも当たりめぇだ!
断面急変部の探索スキャンなら、僕も得意になれそうです。
最後に、X方向の断面急変部に関する探索スキャンを実施します。
X方向の断面急変部に関する探索スキャンを施した図4において、設計上の懸念点を下記に示します。
- 断面急変6:車輪と車軸の間に「R」か、「段付き軸」を設けた方がいいかも。
どうだ良君! 断面急変部の探索スキャンは、部品掛けるに掛けるのがまずは基本だ。そして、最後の仕上げでアセンブリに掛けることがベテラン設計者に近づけるコツってもんよ。
なるほど! 部品の探索スキャンでOKでも、アセンブリではダメってときがありますよね。今回の『樹脂製おもちゃの電車』から学びました」
やっぱ、院卒はできる! ただしだ、出図前に実施しろ! 出図後に実施するやつは、『豚に真珠、猫に小判』だ! 3次元CADと同じだ、有効利用しろ!
はい、甚さん! 僕もベテラン設計者に一歩近づいた気分になれました!
それでは、ここで総仕上げとして、重要な個所を復習しておきましょう。下図は、第1回 3ページ目に記載されている図6です。設計サバイバル術の定義を理解しましょう。
最も重要な設計サバイバル術の「知識」である「断面急変部の探索スキャン」を再確認できましたら、さらにもう一歩、ベテラン設計者へ近づくために、第4回 2ページ目の表1を復習してください。
設計サバイバル術の『知識』とは学生や技術者1年生レベルのことだ。軽視するんじゃなくてよぉ、基本中の基本だから、頭にたたき入れろ! 次に、オメェが設計の職人になりたきゃ、『大道具』をマスターしろ!
『大道具』といっても、たった5つでしたね。甚さん、僕はもう、理解していますし、実務で活用しています。エリカちゃんも実施していましたし……。
さすが、院卒! だったら、もう一丁、『小道具』の使い方をマスターしろ! これでより深くベテラン設計者の域に入れるぜぃ!
『小道具』とは、第4回以降で紹介のあった『底抜き』などですね? これもたったの10つですよね。とっくに理解していますよ! 僕もベテラン設計者に一歩近づけましたよね、甚さん!
「小道具」とは、第4回以降で解説のあった以下の道具です。
- 底抜き:第4回 2ページ目の図3
- 円ボス:第4回 3ページ目の図5
- ボス:第4回 3ページ目の図6
- 平均肉厚(メタボ対策):第5回 2ページの図4
- 山切りカット:第5回 2ページ目の図6
- フィレット:第5回 3ページ目の図7と第6回 1ページ目の図2
- スナップフィット:第6回 2ページ目の図4と図5
- 嵌め殺し:第6回 3ページ目の図6
- 熱カシメ:第7回 1ページ目の図1と2ページ目の図2、図3
- 板金部品との融合:第8回 1ページ目の図1と2ページ目の図2
設計の「職人」なるためには、たった10つの道具ぐらいは、一気にマスターしましょう。
とっくに理解しているだとぉ? そんじゃ、ここでいきなりテストだ! 『スナップフィット』と『嵌め殺し』の違いをいってみやがれ!
なっ、何で、またいきなりテストなんですか? 甚さぁ〜〜〜ん! 違いまで理解していませんよぉ。
テンメェ……ウソつきやがったなぁ? 最終回ということで、『愛のゲンコツ』の復活だぁーーーっ!
ボコボコッ! 町工場の中心で愛を叫んだおやじ、のゲンコツ。
うぎゃーーーっ!! 親父にもぶたれたことないのにぃーー! っていってんでしょーが、でしょーが……」
冒頭でも説明しましたが、学校では旋盤加工とフライス加工に注力した機械材料や機械製図のカリキュラムしか存在していません。しかし、もう一度、第2回 1ページ目の図1を見てみましょう。
当事務所では、「今年から、第3次産業革命が始まる!」と、クライアントさまに告げています。
- 第1次産業革命のキーワードは、石炭、蒸気機関車です。
- 第2次産業革命のキーワードは、石油、内燃機関、自動車です。
- 第3次産業革命のキーワードは、バッテリー、コンピュータ、EV車です。
昨年、筆者は隣国にてEV車の開発に携わってきました。開発中のEV車に関するコスト分析と部品点数分析の結果に驚愕しました。上図とまったく同じになったのです。 切削のカリキュラムや実務教育を無視してはいけません。機械加工、機械設計の基礎だからです。しかし、板金と樹脂、特に樹脂設計に注力しなくては、今後の日本はますます隣国の工業国に追いつかれ、いずれは挽回も困難になってくるでしょう。
いま、若手技術者にお願いしたいことがあります。それは、かつて機械設計者は、「鋳物の設計ができて一人前」が、いまや「樹脂設計ができて一人前」の時代になっているのです。第3次産業革命に乗り遅れないように!
皆さん、またお会いしましょう!(終わり)
Profile
國井 良昌(くにい よしまさ)
技術士(機械部門:機械設計/設計工学)。日本技術士会 機械部会 幹事、埼玉県技術士会 幹事。日本設計工学会 会員。横浜国立大学 大学院工学研究院 非常勤講師。首都大学東京 大学院理工学研究科 非常勤講師。
1978年、横浜国立大学 工学部 機械工学科卒業。日立および、富士ゼロックスの高速レーザプリンタの設計に従事。富士ゼロックスでは、設計プロセス改革や設計審査長も務めた。1999年より、國井技術士設計事務所として、設計コンサルタント、セミナー講師、大学非常勤講師としても活躍中。Webでは「システム工学設計法講座」を公開。著書に「ついてきなぁ!加工知識と設計見積り力で『即戦力』」(日刊工業新聞社)と「ついてきなぁ! 『設計書ワザ』で勝負する技術者となれ!」(日刊工業新聞社)がある。
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