PS2のスナップフィット&ナットプレート:甚さんの設計サバイバル大特訓(8)(1/3 ページ)
テレビゲーム機 PS2の外装ケースに秘められた「あっぱれ!」な設計サバイバル術は、板金と樹脂のコラボがポイント!
当連載の登場人物
根川 甚八(ねがわ じんぱち)
根川製作所 代表取締役社長。団塊世代の大田区系オヤジ技術屋。通称、甚さん
国木田良太(くにきだ りょうた)
ADO製作所 PC事業部 設計2課 勤務。80年代生のイマドキな若者。機構設計者。通称、良君
編集部注* 本記事はフィクションです。実在の人物団体などとは一切関係ありません。
世界の技術スカウトマンは、日本の研究者と生産技術者はスカウトしますが、日本の設計者は決してスカウトしません。
第7回の「締め」は、上記のセンテンスで終了しました。大変ショッキングなコメントではないでしょうか。
がっかりです。甚さんに『役立たずの院卒』といわれて以来、一生懸命に勉強しているし、専門学校卒のエリカちゃんにも教わっているし……。
そうだよなぁ。管理職指向のいまの会社を辞めてぇといってたよぁ。でぇじょうぶだぁ。もっと、チャージしろ!
さて、今回のオープニングでは、平和で無難なある事例を必死に探しましたが、見つかりませんでした。
その代わり……。
つい最近、隣国の2つの国で民間人の死亡者が出る争いごとが起きました。北側の国からの160発の砲撃に対して、南側の国は約80発で反撃したそうです。しかし、その半分が目標地点を外れていました。その証拠写真を米国の民間衛星がとらえ、夜の有名なニュース番組で放映されていました。
えっ? 軍需といえば、民需にもない最新鋭の技術が投入されているのではないですか? しかも、莫大な資金を投入して。
「戦争」は決して起こしてはならないこと、起きてはならないことですので、以下は「技術」の話に限定します。
前述の命中率は、まるでギリシャ時代、江戸時代の大砲のようです。目視できる距離すら、半分も当たらないのですから……。
戦争勃発は、いかなる理由も認められない。しっかしよぉ、零式戦闘機の設計者、堀越 二郎が聞いたら嘆くぜぃ!
甚さん! 目線が僕の方を向いているんですが、何かいいたいのでしょうか?
いま、これと似た事象に困惑しています。
小学校から大学院まで、「理科離れ」に対しては、教職関係者の努力により、急速に挽回しています。また、「モノづくり」に関しても、各地方団体や中小・零細企業も「生産」に関して努力と向上を維持しています。
しかし、相変わらず、開発部門は低下の一途です。
- 累積公差計算ができない
- 自分で描いた図面のコストを見積もれない
- そして、設計書が書けない
さらに最近は、以下に示す4と5が加わってしまいました。
4.幾何公差を書けない、読めない
5.プレゼンができない
とても、残念です。歯止めが利きません。
その一方で、デザインツールだけが進化しています。3次元CAD、CAE、多種のアプリ……。江戸時代の「からくり人形」の方が、技術が進化しているような気がしませんか?
なんかよぉ、暗れぇ長話から始まっちまったがよぉ。良君、気にするな。オメェには、未来がある。しかも、空っぽだからいつでも、目いっぱい詰め込める。
褒められたのかなぁ? 実は、甚さん。僕は、いまの管理職指向の会社をとっとと辞めて、日本も捨て、隣国の企業に就職しようと思っています。
本当は、大日本帝国で再就職してほしいがよぉ、若けりゃ、なんでも挑戦しろ〜〜い。隣国で、オメェの好きなEV車を開発しろ〜いボス。
甚さん、僕、もっともっと、パワーチャージします。まるでポイントカードのように。ところで、甚さん、そのネタのCMはもう終わっていますよ。
そんじゃ、職人としての『実務』をチャージしろ〜ぜぃ(?)。終わったら、アキバに手羽先を食いに行くぞ。明日はボーナスが出るんだろ〜? 良君、おごってちょうだい。
ギアにおける板金部品と樹脂部品の融合
図1は、VTRテープをVTRデッキへ出し入れする際のスライド用ギアです。このような組み合わせのギアを「ラック・アンド・ピニオン(Rack and Pinion)」と呼びます。
板金の材料特性と加工特性を生かして、細長いラックのギアを板金製、精度と組み立て性と円滑な回転性を期待してピニオンギアを樹脂製(ポリアセタール)としています。
ラック・アンド・ピニオン……あっ、知っています。車のハンドル(かじ取り、ステアリング機構)にも使われていますね。回転運動を直線運動に変換するって、大学で学びました。
さすが、富士山麓大学の院卒だぁ。学問的解説はピカイチだ。そんじゃ、車のステアリング以外、ほかの応用例をいってみやがれ!
えーと、『顕微鏡の縮小拡大の上下スライド機構』『傾斜リフト』……これは、秋のみかん狩りの山にありました。そして、身近な『カメラの三脚(昇降機構)』などです。
板金も樹脂も優れた素材であり、優れた商品や部品を誕生させます。しかし、板金、樹脂の単品ではなく、優れた素材同士であるからこそ、その効果は、2倍は当たり前で、3倍、4倍の効力を発揮すると思います。
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