検索
連載

実に最高! ついに実物となった俺iPhoneケース俺仕様なiPhoneケースを作ろう!(3)(1/2 ページ)

iPhoneケースは、市販品もすてきなものがあるけれど、やはり自分のオリジナルがほしい! そういうわけで、評価版3次元CADとRP機を使って、「俺iPhoneケース」作りに筆者がチャレンジしてみた。(編集部)

PC用表示 関連情報
Share
Tweet
LINE
Hatena

 前回の記事では、iPhoneのケースとそれとセットになる台が、3次元CAD(Solid Edge)上では完成したことを報告した。しかしこのままでは、いってみればCGと変わらない。ここから実際のものにしてこそ「モノづくり」だし、3次元CADを使う醍醐味(だいごみ)ともいえる。PCの画面上であれば何でもできるが、リアルな物体にすれば、その難しさがある。ジュエリーなどであれば、ロストワックスなどで、そこそこの値段で単発ものでも作れるが、今回のようにiPhoneケースや台であれば、切削加工などを考えることになり、それだけでハードルが上がってしまう。しかし、最近であれば、救世主となり得るテクノロジーが身近になってきた。それが、ラピッドプロトタイピング(Rapid Prototype、RP)である。RP機も最近は、どんどん低価格化が進み(といっても個人で買うにはまだ高いが)、出力サービスを行う業者も出てきている。筆者が事務所を置いている3D-GAN(3次元形状を活用する会)にも、RP機が置いてある。

 ところで、RP機については、意外に情報をお持ちでない人も多いようだ。この手の機械には詳しい製造業関係者でも、ちょっと昔の情報のままで、あまり使い物にならないとお考えの方も中にはいるようだ。しかし現在は、光造形や樹脂の積層、あるいは焼結方式などさまざまな方式のRP機が登場してきており、最近出てきている200万円を切る機種でも、かなり滑らかな表面のものが出力できる。ジュエリー業界で使われるものでは、本当にツルツルの表面のものが出力できるほどだ。

RP機で出力するための準備

ALT 樹脂積層型RP機「Dimension BST」(米国ストラタシス社製)

 さて、前置きはこれくらいにして、前回Solid Edgeで作成した3次元モデルをベースにRPを使って実際のiPhoneケースを作成してみよう。今回、「俺ケース」を出力するために使ったのが、樹脂積層型RP機である「Dimension BST」(米国ストラタシス社製、以下「Dimension」)である。なぜ、この機種を使ったのかというと、もともと事務所にあるので手近だったということもあるが、何よりも出力に掛かるコストが一番安いということだ。特に今回は、3D-GANの会員価格でやっているので、いくつかのバリエーションを出力したとしても、「お父さんの1カ月分のお小遣い」でも何とかなるのだ。

 段取りなどをしなければならない切削加工と違って、やるべきことは驚くほど単純だ。しかも、この準備のためのプロセスは、基本的には、どの方式のRP機を使う場合でも同じだ。

 まず、最初にやるべきことは、STL形式で3次元モデルのファイルを出力することだ。Solid Edgeはもとより、通常市場に出回っている3次元CADであれば、STL形式でのファイルの出力には対応しているはずなので、通常は問題ないはずだ。Solid Edgeの手順では、ファイルを保存するときに、デフォルトで用意されているファイル形式の選択肢の中に、STLがあるのでそれを選んで保存するだけ。

 次に保存したSTLファイルに問題がないかどうかをチェックする。通常のオペレーションでソリッドモデルを作っていれば、まず問題はないはずだが、心配なら、フリーのソフトでもある「MiniMagics」(マテリアライズ社)などでも確認することができる。もし、そのSTLファイルに問題点があれば、それが何かを教えてくれる。

 ところで、そのSTLファイルに問題があったらどうするか。残念ながら、MiniMagicsでは問題点は教えてくれるのだが、修正ができない。もちろんCAD上では直接STLを修正するということができないので、その場合はちょっと困った状況になる。もっとも、そんな需要も増えてきたのか、最近では「MoNoGon」(株式会社カタッチ)と呼ばれるソフトが登場してきた。入力形式としては、STLのほか、CGでよく使用されるOBJファイルにも対応している。だから、CGソフトでモデリングをしていても大丈夫だ。あと、このソフトの何がよいかというと、カード決済で当日ライセンス800円というのが用意されているということだ。もし、その日しか利用しなければ、本当にその800円でよい。

 STLファイルに問題がなければ、次にそのSTLファイルを、それぞれのRP機が用意している前処理用のソフトに送り込む。Dimensionには、「Catalyst」と呼ばれるソフトが用意されていて、基本的にはそのソフトの指示どおりに操作していれば、STLファイルは自動的にDimension用の造形データに自動変換される。

ALT Dimension用の造形データに自動変換

 ところで、操作自体は簡単なのだが、ここで無自覚にモデルを配置してはいけない。モデルの造形方向によって積層時間や使用する材料の量が(つまりコストが)変わってくるのだ。基本的には、高さ方向を抑えた方が、造形時間も少なくて済む。それ以外に考慮したいのは、どの面を滑らかに仕上げたいかだ。前述したように機種によっては、そもそも仕上がりが滑らかなものもあるが、Dimensionは、それで比較してしまうと正直、平滑度については気になる部分もある。ただし、それも造形方向によっては、それほど気にならなくなるので、それも考慮して造形方向を決めよう。

ALT 俺ケースの造形過程

 造形方向が決定したら、あとはCatalystが自動的に造形にかかる時間や、サポート材も含めて使用する材料の量を教えてくれる。そして、ソフト上で断面データの確認を行い、造形のための領域内に造形データを配置すれば、データをDimensionに転送するだけだ。ちなみに、造形物が配置される「ワーク」の中に納まる限りにおいては、いくつ造形物を配置しても構わない。データがDimensionに転送されたら、機械に任せて家に帰ればよい。筆者は、iPhoneケースの「フックあり」と「フックなし」のモデルを1つずつ、それから「専用の台」1つの合計3つの造形品を出力した。出力時間は約6時間だ。しかし、これは機械に任せっ放しの6時間。ちなみに造形中の様子は以下の写真や動画に示すように、レイヤが1つ1つ積み重なって、自分が造形したものが少しずつ出来上がっていくのが分かる。帰り際に造形をスタートさせて、あとはDimensionに任せて、翌日はどのように仕上がっているのか!? ――期待でワクワクしながら家路に就いた。

*** 一部省略されたコンテンツがあります。PC版でご覧ください。 ***

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

       | 次のページへ
ページトップに戻る