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実に最高! ついに実物となった俺iPhoneケース俺仕様なiPhoneケースを作ろう!(3)(2/2 ページ)

iPhoneケースは、市販品もすてきなものがあるけれど、やはり自分のオリジナルがほしい! そういうわけで、評価版3次元CADとRP機を使って、「俺iPhoneケース」作りに筆者がチャレンジしてみた。(編集部)

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ついに実物になった!

 さて、翌朝いつものように仕事に向かったが、いつもならまずPCを立ち上げるのだが、その日に限っては、まずDimensionに向かった。まずは、ワークごと造形物をDimensionの中から取り出す。

ALT ワークごと取り出した造形物

 取り出したばかりのときは、iPhoneケースや台はワークの上に張り付いているので、ワークからこれらをはがすのが最初の作業である。Solid Edgeから始まって、Dimensionと、ちょっとハイテクっぽいものが続いてきたのだが、ここからはいきなりアナログ、……というか原始的である。このiPhoneのケースたちはどうやったら、ワークからはがれるのか?

ALT サポート材の付着した部品

 それは、ワークを力任せに曲げたりひねったりするのだ。バリバリという音とともに、iPhoneケースたちははがれていく。くっついている表面積が大きいなど、はがれにくい場合には、コテのようなものを使ってはがしてもよい。肝心のパーツとワークの間には、ワークとなじませるための樹脂のレイヤがあるので、傷つくことは心配しなくてもよい。

 ワークから部品が取れたら、次にやることは、サポート材をはがすこと。モデル内の空洞部分や、下に支えのない構造を作るため、その部分を支えるサポート材が、熱で溶けた樹脂を積層するのと同時に使用される。部品が出来上がったら、このサポート材をはがす必要があるのだ。

ALT 取り出した“俺iPhoneケース”

 このサポート材の除去のやり方も、RP機によってであるが、Dimension BSTの場合には、手でバリバリとはがしていく。Dimensionでも水溶液で溶かして除去するモデルもあるのだが、今回は極めてアナログに、手ではがす。それ故に、もし微細な形状などがある場合には、先の細いペンチなどで注意深くはがしていかないと壊れてしまうことがあるので、そこは注意する。今回作成したiPhoneケースは、肉厚が薄めなので、若干の注意が必要ではあったが、特に大きなトラブルはなかった。念のため、ケースをiPhoneにはめるために曲げる部分については、プラモデルなどに使用するハケで塗るタイプの接着剤を塗って補強した。

 そして、ついにSolid Edgeのモデルがリアルになった。ケースと台のはめ合いも、ばっちりだ。まあ、どちらもSolid Edge上でモデリングして、アセンブリを組んだので当たり前といえば当たり前なのだが。最も緊張したのは、やはり自分のiPhoneに装着したときだ。

 ちゃんとモデリングしたのだから合うはずなのだが、もともとリアルだったものに自分の造形物をはめるときはちょっと違う。ケース上部のフックを少し曲げて、iPhoneを押し込んでいく。実にスムーズ過ぎでもなく、かといってきつすぎもせず。絶妙なきつさではまっていく。最もちょうどよいカシメ具合だ。

ALT そして、ついに、「俺ケース」が自分の手の中にやって来た!

 実に最高の瞬間だ。

 もちろん、ニコラデザインで商品を企画し、モデリングし、試作では苦労し、実際に値を付けてそれを世に送り出してはいる。しかし、商品を作るのとは違って、本当に自分の欲しいものを、最初から最後まで、自分だけで、一貫して目の前に生み出していく楽しさは格別だ。

調子に乗ってバリエーションも作った!

 しかし趣味で作っただけに、ノリでモデリングをした部分もあるし、またPCの画面上で見たものと実際の物体ではこれまた印象が異なるということもあった。ということで、せっかくなので少し改造してみることにした。

 まずケースだが、背面を抜いたため、生身のiPhoneを感じることができるようになった。これまで使ってきたiPhoneのケースでは、iPhone全体が覆われているため、元のiPhoneとはどうも感覚が違うのである。もともとのモノが素晴らしいだけに、どこかでiPhoneを感じていたい。だけどアクセサリとしてのケースも欲しいという望みはかなえられた。とはいえ、背面から見たときに、もう少し格好良くならないかと考え、Solid Edge上でいくつかのパターンを考えてみた。また数日俺ケースを使ってみると、フックはまったく使わないことに気が付いたので、これはなくし、代わりに同じ位置に自分の会社のロゴを付けることにした。

ALT 実際に筆者が愛用中

 さらに台にも改良を加えた。実際に作ってみるといろいろな発見があるもので、最初はフック付きモデルで背面の板を挟み込んで安定を上げることを考えたのだが、実際にはケースのくぼみと、台の出っ張りが思ったよりもしっかりとかみ合って、安定して台に乗っているのだ。

 ということで、このデザインは踏襲することにした。ただ、充電ケーブルをつなぐことは当初あまり考えていなかったのだが、やっぱりこれはあった方がよい。それでケーブルを引き回すための切れ込みなどを入れた。モデリングが終わり、手近にRP機があれば出したくなるのが人情だ。そこで、実はこの間、ちょっと改造しては出力していた。おかげで、今月分のお小遣いはどんどん減っていったのだが、その代わりに自分がモデリングしたものが形になってきたのはやはりうれしい。

 それ以来、わたしのiPhoneケースは「俺ケース」。台ももちろん事務所では、2台目の台。ご機嫌で使用している。

もっと自分のためのモノづくりを

 今回、Solid Edgeを使ってモデリングをして、それをRPで出力するということを純粋に個人的な目的でやってみて感じたことがある。業務で3次元モデリングをしている人にとってはいまさらいうことでもないが、最近のUIはカジュアルなユーザーにとっても使いやすくなっている。残念ながらソリッドモデラーの場合、個人に手が届くものがほとんどないという現状はあるが、価格が下がり続けるRP機の普及とともに、バーチャルとリアルが近づいてきたのではないかと思う。3次元CADやCAEのような便利なものが普及してきた一方で、それらの道具はすっかりプロのものとなってしまった。つまり、メーカーにいてプロとしてモノを生産する人たちと消費者が完全に分断されてしまっているのではないかと思う。

 そうなると、モノとは誰かに作ってもらうものになってしまい、モノづくりへの興味は失われてしまう。しかし、もっと手近にこのような使いやすいツールが普及し、簡単に自分のオリジナル品を作ることができるようになれば、モノづくりはもっと身近になるのではないだろうか。また、メーカーで設計をやっている人たちも、自分が設計したものを一度出図してしまえば、あとは生産部門へと自分の手元を離れてしまう。それに仕事ではそもそも、自分の好きなものを作るというわけにもいかないだろう。モノづくりのプロであっても、自分の好きなものを作るという最も原始的なモノづくりの感覚を味わうことも意義深いのではないだろうか。

Profile

水野 操(みずの みさお)

1967年生まれ。ニコラデザイン・アンド・テクノロジー代表取締役。首都圏産業活性化協会(TAMA協会)コーディネータ。外資系大手PLMベンダやコンサルティングファームにて3次元CADやCAE、エンタープライズPDMの導入に携わったほか、プロダクトマーケティングやビジネスディベロップメントに従事。2004年11月にニコラデザイン・アンド・テクノロジーを起業し、オリジナルブランドの製品を展開しているほか、マーケティングやIT導入のコンサルティングを行っている。著書に『絵ときでわかる3次元CADの本』(日刊工業新聞社刊)がある。



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