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PS2にも使われている小道具「熱カシメ」甚さんの設計サバイバル大特訓(7)(3/3 ページ)

今回は「熱カシメ」についての解説。VTRデッキやホッチキス、ゲーム機器を分解しながら、実際に熱カシメの例を見ていこう。

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ホッチキスにおける熱カシメ

 図4は、美しい仕上げと、一見「丈夫そう!」と思う「加熱+加圧=塑(そ)性変形」による熱カシメの例です。


図4 ホッチキスにおける熱カシメ(『ついてきなぁ!加工部品設計で3次元CADのプロとなる!』 日刊工業新聞社刊より)

 熱カシメは、熱可塑性という樹脂の特性を生かした、安くて簡単な締結法ですが、いくつかの弱点もあります。まず、樹脂同士でも異種の材料、ましてや樹脂と金属の締結は、リサイクル時の分解が困難という理由で、「異種材料間の熱カシメ禁止」の企業も存在しますので、設計段階での確認が必要です。

良

甚さん! 第4回からここまで、ずいぶんと設計サバイバル術の小道具を学んできたような気がします。


甚

そうだ! 良君。技術者とは職人だ。学歴も必要だがよぉ、先輩のよき設計を盗め! よき設計を大いにマネをしろ〜〜いボ……(しつこいか?)。……まあいいか。良君。もう一度、アキバハラへ行ってくれないか? 今度は、同じS社製でテレビゲーム機の『PS2』(プレイステーション2)、そのジャンクを買ってきてくれないか?


良

(またボス!?)アキバもいいけど、甚さん! PS2なら、ネットオークションで『ジャンク扱い』というのがあって結構、安く手に入りますよ。インクジェットプリンタも豊富にジャンクが出品されていますね。


 筆者も設計コンサルタントという商売上、各種の工業製品を分解調査しなくてはなりません。そんなとき、ネットオークションで多くのジャンク(ジャンクと中古品が混在)を購入しています(以下)。

  1. インクジェットプリンタ:3台
  2. デジカメ:5台
  3. 液晶プロジェクタ:2台
  4. シュレッダー:5台
  5. おもちゃの樹脂製電車:29台
  6. テレビゲーム機「PS2」:3台
  7. 扇風機:2台
  8. 外付けCD−R機:3台
  9. 電卓:60台
  10. 空冷ファン:6台
  11. ノートパソコン:3台
  12. 腕時計:9本
  13. 零式戦闘機プラモデル:5式
  14. 携帯電話:6台

 すべてがジャンク扱い、もしくは中古で落とした商品(?)です。ジャンク扱いで購入したのですが、同じ商品を買うと部品を移植して正常品になってしまう楽しさも味わえます。

甚

そうだ! 良君。繰り返すが……技術者とは職人だ。学歴も必要だがよぉ、先輩のよき設計を盗め! よき設計を大いにマネをしろ〜〜いボ……(まずい! 癖になってしまった)。


良

では、甚さん! TVゲーム機のジャンクはネットオークションで落としますね。


 それでは、有名なS社のPS2のジャンクが入手できましたので、そこに内蔵されていたCDドライブを分解してみましょう。

CDドライブにおけるCD出し入れ用ラックアンドピニオン

 VTRデッキ同様に、CDドライブにおけるCD出し入れ用ラックアンドピニオンを図5で観察してみましょう。


図5 CDドライブに見るラックアンドピニオン(『ついてきなぁ!加工部品設計で3次元CADのプロとなる!』日刊工業新聞社刊より)

 設計の構想段階から、「オール樹脂化」の設計思想がなければ、具現化は困難です。見事な一体化設計と思います。

甚

フゥ〜ぃ! 今回は多過ぎるくらいの設計サバイバル術で、くたばっちまったたぜぃ! オイ、良君、いまから、アキバハラで名古屋の手羽先でも食らうかぁ? あん?


 実は、筆者もよく秋葉原の某手羽先専門店へ行きます。名古屋ではその店の本店で手羽先を注文し、ビンビールを注文します。東京ではその支店がアキバハラの地下一階にあります。手羽先の味は名古屋の本店と同じです。ビンビールの後は甚さんと同じホッピーのセットを注文します。

良

甚さん! 行きましょう。たまには、エリカちゃんを誘っていいですか?


甚

よし行くぜぃ!


 設計者は職人です。一流の職人は、一流の道具を所有しています。しかし一流の道具を所有しているだけでは、「宝の持ち腐れ」と称して軽べつされます。一流の道具を使いこなすには、設計サバイバル術から開始する「匠のワザ」の習得が必要です。

 筆者は設計コンサルタントとして生計を立てていますが、工業国の中で、日本の設計者は低レベルであることを「経験10年の設計者の働き口がないなんて」で暴露してしまいました。

 その証拠に、世界の技術スカウトマンは、日本の研究者と生産技術者はスカウトしますが、日本の設計者は決してスカウトしません。

 いま、高性能な3次元CADやCAEソフトの「道具」に注力されていますが、それはあくまで、ビジネスとしての注力です。それら一流の道具を使いこなす、一流の設計力を習得していきましょう。

 いまの日本における設計力とは、相撲取りがマワシの自慢話をしているようなものです。道具はもう十分に成長しました。もうそろそろ、中身で勝負しませんか?

 次回をお楽しみに……。(次回へ続く)。

Profile

國井 良昌(くにい よしまさ)

技術士(機械部門:機械設計/設計工学)。日本技術士会 機械部会 幹事、埼玉県技術士会 幹事。日本設計工学会 会員。横浜国立大学 大学院工学研究院 非常勤講師。首都大学東京 大学院理工学研究科 非常勤講師。

1978年、横浜国立大学 工学部 機械工学科卒業。日立および、富士ゼロックスの高速レーザプリンタの設計に従事。富士ゼロックスでは、設計プロセス改革や設計審査長も務めた。1999年より、國井技術士設計事務所として、設計コンサルタント、セミナー講師、大学非常勤講師としても活躍中。Webでは「システム工学設計法講座」を公開。著書に「ついてきなぁ!加工知識と設計見積り力で『即戦力』」(日刊工業新聞社)と「ついてきなぁ! 『設計書ワザ』で勝負する技術者となれ!」(日刊工業新聞社)がある。



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