PS2にも使われている小道具「熱カシメ」:甚さんの設計サバイバル大特訓(7)(2/3 ページ)
今回は「熱カシメ」についての解説。VTRデッキやホッチキス、ゲーム機器を分解しながら、実際に熱カシメの例を見ていこう。
100円のVTRテープを買っただけのオメェにいまから命令だ。いまから、アキバハラのジャンクショップへ行け!
えっ? アキハ“バ”ラ(秋葉原)ではないですか?
オレサマの若けぇーころからよぉ、そこは、アキ“バ”ハラっていうんだよ。江戸っ子なら当たりめぇようっ。だから、AKIBAHARAから『AKB48』が誕生したってわけよ。……多分な。
なるほど。じゃあ、AKIHABARAなら『AKH』ですね!
どうでもいいからよぉ、アキバへ行って、いまのうちにVTRデッキのジャンクを買ってこい。うまくいきゃー500円よ。
分かりました。ところで、甚さん、『いまのうちに』とはどういう意味ですか?
家電品、特にオーディオ機器がどんどん電子化になって、メカ機構がなくなってきているんだよ。まさか、机の上に小型エンジンを置くわけにはいかねぇだろがぁ! あん?
なるほど。メカ教材として、最後のサンプルなんですね。確か、甚さんは『設計はマネすることから始めよ!』といつもいっていましたね。
残念なことだけどよぉ、日本の若いもんは、車もエンジンも興味がねぇときたもんだ。まだ、家電品の方がマシってもんよ。
身近にある熱カシメの商品を調査
良君は、甚さんの指導の下、VTRデッキのフロントパネルから分解し始めました。まず「VTRデッキ」の登場です(図2)。フロントパネルは、樹脂部品に関する設計サバイバル術の「小道具」の宝庫です。
すばらしい! 僕でも『ベテランの設計が盛りだくさん』って理解できます。ウチの新米部長が、『関東のS社は、板金設計と樹脂設計はピカイチ』っていっていました。
なんだ、あの技術音痴の課長がかぁ? ……いや、上司にゴマすって新米部長になったやつがいったのか? あん? ていしたもんだ。
良君の上司「出世逃げ課長」が出世したらしいです。順調に“逃げて”いますね……。
どうでもいいっすよ。ところで甚さん、アキバで手羽先のウマい店、見つけたんです。いまからいきましょうよ。
テンメェ! あの100円VTRテープはどうしたぁ? もう、忘れたっていうのかい? いまから分解しろ。オメェ、本当に院卒か?
VTRテープケースを分解する
VTRデッキの次にくるものは「VTRテープ」です。第5回でも登場しましたが、図3でその上蓋を観察してみましょう。
この場合も、樹脂を熱で溶かした熱カシメのようです。従って、大きな荷重には耐えられないので、ケース内部で落下した場合、大事なテープを損傷する場合を想定し、2カ所でかしめています。
甚さん、VTRテープの件は、本当に反省しています。実は、会社で突然のトラブルがあって、時間がなかったんです。さらに、悪いことに実家の父が急病で入院して。そして、友人がバイクの事故で……。
やる気があったのか、なかったのかシンプルにいえ!
すみません! やる気がありませんでした。
いいかげんにしろ〜〜いボス! ボスといえば、……ボスに関する加工側とのルールをいえ! これは命令だ! いえなきゃ、次回からエリカちゃんと交代しろ〜〜いボス。
(なぜにボス!?)『根元の外径をφDとすると、ボス高さH1≦2×D、根元隅のRは、R≧0.8、ボス先端の肉厚t≧2.5、H1よりさらに高さを要求する場合はフィレットをもうけ、成形屋さんと事前打ち合わせが必要である』
さすがに院卒だ! 実務経験がなくても、クイズの回答のように暗記しておる。取りあえず、ほめてやらぁ!
そこで甚さん! 自主的にホッチキスの熱カシメを調査しました。
よい心構えだ。どれ、見シてみろ!
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