市場変化に対応するための日本製造業の課題:グローバルPLM〜世界同時開発を可能にする製品開発マネジメント(1)(2/3 ページ)
生産のグローバル化を超え、いまや設計・開発のグローバル化とローカライズが求められる時代。世界同時開発・市場投入で勝負をするために、日本企業が行うべきこととは
生産工場から販売先市場としてのアジアへ
急増する中国沿岸図の販売・サービス拠点
ここまでで、新興国が販売先市場として重要であることを説明しました。図2は、1998年から2008年の日系企業の中国における生産拠点数、販売・サービス拠点数の変化をまとめたものです。特に上海がある華東エリアは、生産拠点数で約3倍、販売・サービス拠点で約10倍と大幅な伸びを示しています。
日本と現地のニーズや意識の違い
海外で需要を獲得するためには、現地のニーズを把握し、それに適合した製品を開発し、販売することが重要だといわれています。特に家電や化粧品、住居環境など、日常生活に深くかかわる商材では、生活習慣が異なる海外の事情をつかみ、その違いを理解したうえで、商品企画や販売を実施することが重要です。
生活習慣や現地の事情に関する具体例を見てみましょう。
例えば、洗濯の方法はどうでしょうか?
欧米や日本では衣類は仕分けせずに洗濯機のみで洗うことが一般的ですが、中国の場合は、洗濯機に加え、手洗いによる洗濯を行うことが習慣とされています。中国では洗濯に対する考え方や清潔に対する意識が、日本とは異なっているようです(※3)。
では、自動車の活用方法はどうでしょうか?
日本や欧米では、ほとんどが整備された道路を想定していればよいのですが、東南アジアでは悪路や冠水が多いなどの路面状況を想定する必要があります。また、大型化や高級化ではなく、コンパクトで、かつ多人数が乗れるということも、現地特有のニーズであるといえます。
住宅・ビル建設の主要商材であるサッシはどうでしょう?
中国でも、北京オリンピックや上海万博などの国際的イベントが開催され、それに伴い、住宅やビル建設の需要が急増しています。中国における建設の技術的な基準は、「中華人民共和国国家標準(GB)」や「中華人民共和国業界標準(JGJ)」に規定されています。日本における、JISや建築基準法などの法令に相当するものです。省エネルギー政策もまとめられている途中ですが、2005年より住宅・事務所・商業施設におけるエネルギー消費量を前年度比50%に削減するという規制ができてから、外断熱構法を主体とした断熱構法が注目されています。しかし、住宅購入者の省エネルギーに対する意識は依然として低く、施主から強いコスト削減が要求されることから、品質管理面では製品精度や樹脂変形など性能が十分でないものもあるとされています(※4)。
どうでしょうか? 世界共通のように思われがちなものであっても、文化的、地理的、法的状況がまったく異なることがお分かりになったでしょうか。海外で需要を獲得するためには、このように現地ならではのニーズを理解したうえでの、商品企画や開発が必須となっています。
明らかになってきたモノづくりプロセスの問題点
バリューチェーンの連続性が難しくなっているモノづくりプロセス
ビジネス環境の変化に対応するためには、体制の再構築や、現地ニーズの理解、サービスの充実を図ることが重要です。図3は海外市場をターゲットとした日本の製造業の典型的なバリューチェーン変化と、その問題点について説明したものです。
「過去」は、国内で商品企画・設計・生産し、国際物流を通して海外市場に供給する方式が一般的でした。1990年代後半以降、日本の製造業は「現在」のバリューチェーンに示されるように中国などアジア各国における低コスト海外生産を実現してきました。
しかし、現在のグローバルビジネス環境下では、以下の問題点が明らかになってきました。
世界同時開発を推進するには?:「グローバル設計・開発コーナー」
世界市場を見据えたモノづくりを推進するには、エンジニアリングチェーン改革が必須。世界同時開発を実現するモノづくり方法論の解説記事を「グローバル設計・開発」コーナーに集約しています。併せてご参照ください。
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