市場変化に対応するための日本製造業の課題:グローバルPLM〜世界同時開発を可能にする製品開発マネジメント(1)(1/3 ページ)
生産のグローバル化を超え、いまや設計・開発のグローバル化とローカライズが求められる時代。世界同時開発・市場投入で勝負をするために、日本企業が行うべきこととは
設計開発の海外シフトやグローバル開発におけるビジネス環境変化、それに対応するための課題、今後のモノづくり戦略の在り方や最新の改革ソリューション動向を紹介する(編集部)
連載開始に当たって
リーマン・ショックから脱するための企業努力の成果が徐々に出始め、各種製造業においても、景気回復を感じる今日このごろです。筆者は、1990年代から設計開発領域の業務改革やIT導入に従事していますが、改革テーマはビジネス環境変化に対応して、変遷してきました。当初は設計部門を中心とした効率化のテーマ、次にBOMを中核とした設計・生産部門の連携効率化、最近は設計開発の海外シフトやグローバルでの開発ガバナンス強化のテーマが増加したように思います。
今回の連載では、最近多くの方々が関心を持たれている、設計開発の海外シフトやグローバル開発におけるビジネス環境変化、それに対応するための課題、今後のモノづくり戦略の在り方や最新の改革ソリューション動向について、ご紹介したいと考えています。今後の技術企画や情報戦略立案にご参考になれば幸いです。
グローバル市場変化と日本製造業の体制再構築
アジアにリソースシフトする日本の製造業
2000年以降、日本の製造業は積極的にアジアへの進出を推進してきました。図1は日本の製造業の海外における現地法人数推移の調査結果をまとめたものです。アジア全体では2000年以降で40%以上、中国に限定すると100%以上増加し、逆に欧米は減少しました(※1)。
アジアでの拠点数急増の理由
東南アジアや中国での製造業法人数は、この10年間で急増しています。その理由は2つあります。低コスト生産が実現できることと、販売先市場として魅力があることです。
日本製造業は、低価格化競争の激化により、低賃金でかつ多くの従業員を集めやすいアジアに生産拠点を多く設置してきました。従来のように大量生産が主流であった時代は、生産設備を用いて自動化で低コスト生産を実現することもできたのですが、多品種少量生産が主流となった現在では、低賃金でかつ多くの人を雇って組立工程を行う必要があります。中国を中心としたアジアはその要求に応えるエリアであったわけです。
同時に、アジア地域は販売先としての魅力も大きくなってきました。日本の製造業が海外に進出する理由の1番目として、「進出先の市場の有望性」を挙げています(※2)。しかも、この理由を選択した企業数は、1990年代から増加傾向にあります。新興国需要が大きくなった現在では、この重要性はさらに高まっていると考えられます。
欧米拠点減少の理由
一方、欧米における拠点数は減少しています。特に北米では前年比マイナス12%と大きな落ち込みになっています。表1は経済産業省がまとめた北米における拠点再編の最近の動きです。リーマン・ショックに端を発した北米における自動車販売の落ち込みにより、特に自動車部品や金型などの関連業種の閉鎖や集約が発生したことが大きな要因であるようです。
時期 | 業種 | 内容 |
---|---|---|
2009年2月 | 自動車部品 A社 | 経営体制強化のため、北米の1工場を閉鎖し、生産拠点を集約 |
2009年2月 | 繊維 B社 | 北米生産拠点の集約を開始 |
2009年3月 | 自動車用金型 C社 | 米国工場を閉鎖し、製造・販売子会社を譲渡 |
2009年10月 | 自動車部品 D社 | 1工場を閉鎖、1工場を休止し、生産拠点を集約 |
2009年12月 | 自動車部品 E社 | 複数あった北米生産拠点を集約し、一部の事業をアジア拠点に移管 |
2009年12月 | 金属製品 F社 | 北米自動車関連市場の需要激減を受け、米国の製造・販売子会社を解散 |
2010年春 | 自動車部品・材料 G社 | 米国自動車販売の急激な落ち込みを受け、2009年に生産停止し、子会社も解散予定 |
2010年春 | 非鉄金属製品 H社 | 自動車向け部品生産拠点数を3拠点に集約予定 |
2010年春 | 電気機器 I社 | 電機製品・部品の生産活動を終了し、他国拠点に集約予定 |
2010年中 | 輸送用機械 J社 | 米国の製造・販売会社を閉鎖予定 |
世界同時開発を推進するには?:「グローバル設計・開発コーナー」
世界市場を見据えたモノづくりを推進するには、エンジニアリングチェーン改革が必須。世界同時開発を実現するモノづくり方法論の解説記事を「グローバル設計・開発」コーナーに集約しています。併せてご参照ください。
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