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方法改善の手順 試行から実施、フォローアップまで 実践! IE:方法改善の技術(5)(4/4 ページ)

人・設備・モノのムダを見つけて改善する。製造業の原価低減に欠かせない3つの要素のムダを発見するために、インダストリアル・エンジニアリングにおける改善の技術を紹介していく。

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3.フォローアップ

 実施された作業が、提案通りであるかどうかをフォローアップし、その方法を維持していくことを忘れてはいけません。フォローアップすることにより、さらに新しい改善案を得ることができます。

3.1 結果のまとめ

 作業改善の最後の仕事として、「経過と結果」を改善報告書としてまとめて、関係者へ報告します。

3.2 新方法の維持

 一応の改善案が実施され、各関連する作業の標準類が設定されていても、作業条件が変わっていったり、時には管理者の不注意や怠慢によって旧方法に戻ってしまい、新方法の内容が次第に変わってくることがあります。最終的な作業標準を基にして、決められたルールに従って標準時間の改訂を行い、標準時間を作業のより所として、現場に作業の手順や内容を徹底していくことが重要です。

 標準時間の管理(工数管理)を行っていれば、標準時間と実績との差異が異常(例外)になることによって発見することが可能になりますから、その都度、異常の原因を突き止めて対策を講じなければなりません。たとえ標準時間が設定されていなくても、できれば定期的に作業方法が正しく行われているかどうかを調べてみる必要があります。

 こうした「作業のフォローアップ」は管理者の責任において行われなければなりませんが、分析者も提案の結果の良否をときどき調べ、結果をあらためて確かめることが必要です。フォローアップを行うことによって、次の問題を発見でき、さらには効果的な改善案を得ることもできます。

 一度改善して、それで満足すべきでないことはもちろんですが、あまり頻繁に作業方法を変更するのでは、作業者に心理的に悪い影響を与えます。また、ほかの管理面に面倒な手続きを伴う場合もあるので、ある期間は安定状態を維持していく必要があります。この意味からも、改善案の検討や実施は慎重を期さなければなりません。

3.3 N倍化

 改善案の横展開、つまりN倍化を行う際は、試行結果の問題点を改善し尽くした抜けのない状態で行わなければなりません。特に、機械設備の新設や改良を伴う改善においては、安全面や費用の面について注意が必要です。費用については、機能低下をさせないで、できるだけ安く作るようにメーカーと折衝していくことが必要です。

 また、作業の面においては、いくつかの作業が改善されたら、共通的な作業に対しても適用していくことが重要です。コンベヤー、作業台など、刃具、検査具などの改善は、全工場に適用できることもあり得るわけですから、また、そうすることによって工場全体の生産性が向上します。

このようにして、個々の改善から、全工場に適用できる改善具体策を誘導し、これを標準化することによって、生産のあらゆる面で標準化を推し進めることができます。一般的には以下のような項目が実施されています。


  • 部品や製品の標準化(設計の標準化)
  • 材料や原料の標準化
  • 機械設備の標準化(全体的、部分的)
  • 付帯設備の標準化(机、イス、コンベヤーなど)
  • 治工具や道具の標準化(刃物の角度など)
  • 加工条件の標準化(切り込み、送り、回転数など)
  • 作業手順の標準化(要素作業の順序など)
  • 作業動作の標準化(サーブリック的)
  • 環境条件の標準化(照明、温度など)

*** 一部省略されたコンテンツがあります。PC版でご覧ください。 ***

 改善の実施を「改善の手順」にのっとって進めていくのは、新しい作業方法が元に戻ることなく、決められた標準どおりに遂行されていくことを目的としてたどるステップです。

 本連載では「方法改善の手順」について、4回に分けて子細に解説してきました。ぜひ、もう一度読み返してみて、いままでの自分自身の改善に取り組む姿勢として気付かなかった部分を中心に、よく整理して活用することをお勧めします。

 次回からは、方法改善の改善技術の中心ともいうべき「動作経済の原則」について、2回に分けて説明します。ムダ排除活動やモーションマインドの醸成は、この「動作経済の原則」の理解と実践にかかっており、現場改善には欠かせない「原則」です。ぜひご期待ください!!


筆者紹介

MIC綜合事務所 所長
福田 祐二(ふくた ゆうじ)

日立製作所にて、高効率生産ラインの構築やJIT生産システム構築、新製品立ち上げに従事。退職後、MIC綜合事務所を設立。部品加工、装置組み立て、金属材料メーカーなどの経営管理、生産革新、人材育成、JIT生産システムなどのコンサルティング、および日本IE協会、神奈川県産業技術交流協会、県内外の企業において管理者研修講師、技術者研修講師などで活躍中。日本生産管理学会員。



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