設計者CAEも、そろそろレベルアップしなくちゃ!:ベンダさん、全員集合! 設計者CAE討論(1)(3/3 ページ)
設計者向けの解析ソフトウェア(CAE)について、関係者たちが一堂に会してとことん討論します。さてあなたの使っているソフトウェアのベンダさんは、出てくるでしょうか。
張 業界でナンバー1のツールを選ぶのではなく 自分にふさわしいものを選ぶことが大事だと思います。それから、(座学を含む)教育はしっかり受けた方がいいと思います。「簡単で使える」「勉強しなくても、大丈夫」といっても、限度があると思います。
栗崎 要は、自分の実力や会社、やりたいこととぴったり合ったソフトを選ぶこと。そして、それに対する適切な教育を受ければ、ボトルネックがだいぶ減るだろうということですね。
笹谷 いろいろあると思うのですが……まずボトルネックにならないように、解析を使うための目的をはっきりさせることが一番大事だと思います。それから会社全体で取り組むこと、担当者まかせにしないことなど。そういったことが意識されていれば、ボトルネックは自然となくなるのではないでしょうか。われわれも、うまくいくように精一杯サポートしますし。
栗崎 つまり、そのソフトを導入するにあたり、企業でちゃんとした体制を構築することですね。
笹谷 お金をかけないと難しいところでもありますが、非常に大事ではないでしょうか。
――べンダさんとしては、お客さんを精いっぱい助けてあげたいという気持ちは大きい。しかし現実的には、人員やコストに限界がある……。それでも何とか策を講じなければならず、ベンダ各社さんは強い問題意識を持っているとのこと。
また、ユーザーさん側が解析をするための目的を明確にし、予算をがっちりと確保したうえ、教育なり、ベンダさんのコンサルティングなりにしっかりと投資を行うことも肝心なのでしょう。もちろん、一筋縄ではいかないことではありますが。
設計者向け解析ソフトとは
――設計者向けの解析ソフトは、 どうあるべきでしょうか。
辻 当社の製品は、設計もするけれど、ちょっと熱や電気も見てみたい、などふと何かやりたいな、と思ったときに気軽に使えるという利点があると思います。世の中の設計者向けの解析ソフトのすべてが、そうある“べき”かどうかは、正直分かりません。でもそういう方向で、設計者の方々にお役に立てることを信じて取り組んでいます。
芸林 機械設計とは、機能を作ることです。その機能がきちんと動くか、自分の意図どおりになっているかを判断するうえで、解析結果は1つ重要なファクタとなります。せっかく出た解析結果を設計にしっかり生かしていけるようなツールの仕組みが大事だと考えています。
笹谷 あくまで 設計の品質を高めていくためのツールであるべき、また設計に注力するためのツールであるべきです。私どもとしては、いろいろな経験をCAE上でできやすい環境を提供していきたいと考えています。
張 私の考えは、大変シンプルです。とにかく、「使えるソフト」であること。実用的で実践的であること。
栗崎 ところで皆さん、20年ぐらい前からあるハイパーカードをご存じでしょうか。Mac(アップル社のMacintosh)にバンドルさせたにバンドルさせたフリーのアプリケーション(簡易プログラミングツール)です。アップル社のプログラムは開発が非常に難しいのです。それをユーザーに少し開放する意味で、そういうものを作ったようです。ハイパーカードは オブジェクト指向の原点だと思います。ハイパーカードではマウスでクリックができるボタン(GUI)を簡単に作れるのです。そして、
「ボタンが受け取らなければ、カードが受け取る」⇒「カードが受け取らなかったら、バックグラウンドが受け取る」⇒「バックグラウンドが受け取らなかったら、ハイパーカード自身が受け取る」
……という完全にきれいなオブジェクト指向のフローになっています。これで私は、オブジェクト指向とは何かが、何となく分かりました。
設計者向けCAEのシステムもまた、そういう、すっきりとしたオブジェクト指向であるべきだと私は思います。どういう意味かというと 自分が解きたいと思った問題をその機能で解決できなければ、ほかの機能なり仕組みなりが解決する…… というようなオブジェクト指向的な流れのある環境をベンダが提供するのです。構造でも流体でも磁場でも、どんな解析でも一丸となって囲って使えるような……。
いささか漠然とした話ではありますが、一世を風靡(ふうび)したハイパーカードのような環境を人間系とソフトウェア系で作れれば、おそらく設計者が使うための最高なCAEの環境になるのではないかと私は思います。
――今回は、いかがでしたか。あなたが使用しているCAEソフトのベンダさんは登場されていましたか? 設計者向けの解析について、議論のテーマにしてほしいこと、質問してほしいこと、あるいは記事に登場してほしいベンダさんなどありましたら、MONOist編集部までぜひご一報ください!
次回は、また違うベンダの担当者さんたちにお集まりいただき、同様のテーマにてお話をお伺いしてみたいと思います。(次回へ続く)
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