日産のV字回復を支えた生産技術「NPW」に迫る:「ものづくりNext↑」見どころレビュー
2009年11月18〜20日の3日間、東京ビッグサイトで開催されるイベント「ものづくりNext↑」のプログラムの中から、本フォーラム読者に向けて当日の見どころを紹介する。
次のモノづくり戦略のための最新情報が結集
2009年11月18〜20日の3日間、東京ビッグサイトを会場に日本能率協会主催「ものづくりNext↑」が開催される。
このイベントは、各種製造業事業者に向けた最新のテクノロジーによる取り組みなどを紹介するもの。全体は下記2つのカテゴリに分かれている。
- 生産システム見える化展
- ものづくり3D eXpo
また、同時日程で「メンテナンス・テクノショー2009」「非破壊評価総合展2009」「インフラ検査・維持管理展」も同時開催される。このほか、19〜20日は「2009生産技術革新シンポジウム」も併催される。
本稿ではこのうち、当フォーラム読者の関心の高いと思われるものを中心に、見どころを紹介していく。
V字回復を見せた日産が誇る「日産生産方式(NPW)」による技術革新
まず、当フォーラム読者ならぜひ聴講したいのが、「生産システム見える化展」会場内の「可視化・整流化・ITカイゼン・コーナー」における、「特別講演『つくり過ぎ在庫』『納期遅れ』がなく『リードタイム最短』の向上経営を目指して!」と題した3つの特別講演だ。
このうち、18日に行われる日産自動車 NPW推進部 エキスパートリーダー 武雄 裕司氏によるNPWについての具体的な取り組み事例に注目したい。
日産生産方式(NPW,Nissan Production Way)は、顧客への限りない同期をテーマとした日産独自の生産活動として知られている。当日はこのNPWの取り組みのうちでも、とくにいかにして受注確定型計画生産によるリードタイム短縮と在庫削減を実現しているか、を主軸にした解説になる予定だ。日産のV字回復を支えた生産方式を聴講できるまたとないチャンスとなるだろう。
特別講演ではこのほかにも、三菱電機における改善活動(19日)や、日立製作所 大みか事業所における「セルフコンセプト生産」の事例(20日)も紹介される予定だ。
また、11月18日に開催される「メンテナンステクノショー2009」「非破壊評価総合展2009」合同のオープニングセッションでは「グローバル展開を支える経営を一体化した技術開発」と題して日産自動車生産事業本部NPW推進部 設備技術グループ エキスパートリーダー 小林 洋氏の講演も行われる。こちらも足を伸ばして聴講したいところだ。
中小企業ならではの特性を生かした改善方法も
「大企業の事例だけでなく、中小規模事業者向けに最適な情報が入手できるのも本イベントならではです」とは、今回、イベントの概要を紹介いただいた日本能率協会 開発・技術振興本部 技術振興第2事業部 次長 吉野 生也氏だ 。会場内の展示では、小さく始められるITを利用した改善方法も紹介される。
たとえば、可視化・整流化・ITカイゼン・コーナーでは「中小製造業のIT経営のための進化型ITツール」と題して、中小製造業でのITシステム導入に詳しいアプストウェブ ITコーディネーター 河出 孝司氏の講演(19日)が挙げられるだろう。氏の講演では、中小企業ならではの、機動力の高さ・柔軟性の高さを損なうことなく、事業規模に合わせた効率のいい改善方法を中心に解説が行われる予定だ。ぜひとも組織の特性を生かした原価低減・利益創出のヒントを得ていただきたい。
このほか、日本プラントメンテナンス協会 研究開発本部長 浅井 誠司氏による「整流化生産の仕組み構築への課題とその取り組み」と題した講演(20日)では、受注生産を主とする製造を行っている方を対象に、いかにして日々の受注対応に掛かる負担を減らしていくかを、実際のモデル企業での実証研究をもとに紹介するという(20日)。
展示会場も上述したテーマに則した改善のヒントとなる情報が各種展示される予定だ。出展者と直接、自身の課題などを相談できる場でもあるので、ぜひ、情報交換のためにも足を運ばれたい。
モノづくりの3次元化はここまで進んでいる
一方の「ものづくり3D eXpo」展は、CAD/PDM/PLM/DMUや、3次元計測機、シミュレーションツールの最新動向が紹介される。
本フォーラムでもたびたび取り上げているように、従来の実機を使った組み付け検証や工程検証などは時間がかかるうえ、手戻りをした時のリスクが非常に大きくなる。コスト低減とリードタイム短縮を考えたときに、ぜひとも検討したいのが仮想環境下での事前検証だ。
工場レイアウト1つとっても、ロボットアーム同士の挙動タイミングの問題で配置変更が必要になったり、物理的に導入が不可能となる場合もある。また、試作品の組み付けに不具合があれば、設計の初期段階までさかのぼった変更が必要になる。いずれも実機で検証するとなると、相応の人員と工数が必要となる。
実物を製作する前に、極力3次元の環境下で検証を行うことで得られるメリットを体感できるよう、こちらの展示会場には「Mixed Reality」パビリオンが置かれる。来場者は仮想の三次元環境を活用したモノづくりがどのようなものかを、実際に触れてみることができる。
いままで三次元の環境に触れていない方も、このパビリオンで気軽に実際を知ることで開発から生産までのリードタイム短縮のアイデアを得ていただきたい。
このほか、「デジタル現場力シアター」コーナーでは、三次元設計情報を活用したモノづくりの最新動向が紹介される予定だ。
基調講演では、首都大学東京大学院 システムデザイン研究科の下村 芳樹教授が「サービス工学が創る未来―価値創出の方法論―」と題して、サービス工学の視点からイノベーションの手法を解説、新しいサービスの開発・設計・生産を検討するための工学的手法が披露されるとのことだ。
このほか、特別講演では、機械技術振興会 技術研究所 技術主幹の日比野 浩典氏より、「生産システム構築における設備シミュレーションの開発紹介と今後の展望」と題した講演も行われる。
制御機器など、工場内で稼働させる設備は、どうしてもすべての実機が完成してから制御プログラムを設定したり検証したりと、稼働直前のタイミングまで検証が難しいのが一般的だが、仮想環境下では、実機がないうちからラダープログラムの動作タイミングの検証などを完了させておくことができる。生産開始時期を早めるための取り組みとして、ぜひ参考にしていただきたい。
同時開催プログラムではトヨタのHVを支える生産技術もお披露目
会期中は上記2つの展示会のほかにも、あわせて見ておきたい情報が多数ある。
展示会場近くの会議棟6階を会場に開催される「2009生産技術革新シンポジウム」では、トヨタ自動車 第2HVユニット生技部 部長 日高 克二氏による「HVを支える生産技術革新」と題したセッションが行われる(19日)。初代プリウスからスーパーHVプリウスに至るまでの、トヨタで行われてきた生産技術革新がどのようなものかが示される予定だ。
このほかにも、リコー/パナソニック電工(19日)、ホンダエンジニアリング/ファナック/富士通(20日)など、2日間で国内大手企業8社それぞれの生産技術革新の取り組みが披露される予定。
設備保全技術・複合素材などの検査技術の最新情報も
「メンテナンス・テクノショー2009」では、トライポロジー技術コーナーが設けられる。2009年10月から実施されている「ISOに準拠した機械状態監視診断技術者資格制度」の概要や関連技術・サービスなどを紹介する場となる。ISO資格でもあるため、設備保全に関る方はぜひ訪れてみてほしい。
また「非破壊評価総合展2009」では複合素材の非破壊検査の技術動向や関連する機器・サービスなどを中心に展示する特別企画が開催されるほか、「検査とメンテナンスの情報交流プラザ」では、日本非破壊検査工業界、日本非破壊検査協会による技術・技術相談コーナーも設けられる。
なお、同展示会と併設の会場では、先端材料の情報やプラント系の技術動向の総合展INCHEM TOKYO 2009も同時に開催される。
「当日はいずれかの展示会場で受付を済ませれば、自由に往来できるようになっているので、ぜひ、たっぷりと時間をとって各会場で最新の情報を入手していただきたいと思います」(吉野氏)とのことだ。ぜひ、事前登録のうえ、3日間を有効に活用し、皆さんの今後の取り組みのヒントを得ていただきたい。会場の詳細、タイムテーブルなどは下記リンクから参照を。
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