幾何公差の基準「データム」を理解しよう:製図を極める! 幾何公差徹底攻略(4)(3/3 ページ)
データムの配置位置の仕方には、さまざまなルールがあるので要注意。あなたの作成した過去図面は大丈夫?
姿勢拘束とデータム
計測に当たり、部品を完全拘束するには、一般的に3つのデータムを用いて姿勢を拘束します。このように、互いに直交する3つのデータム平面によって構成されるデータム系を「三平面データム系」と呼びます(図11)。
データム形体として平面を指示する場合、面積が大きければ大きいほど、表面はうねり、理想的な形状と大きく異なります。この場合、表面全体をデータム形体として指示すると、加工や検査のときに大きな誤差を生じる可能性があり、繰り返し性や再現性が悪くなり計測の不確かさにつながります。また、凹面の底部をデータム面とする場合は直接定盤にデータム面を当てることができない場合もあります。
そこで、これらを防止するために「データムターゲット」を指示し、必要最小限の部分をデータムと設定するものです。
データムターゲットは、横線で2つに区切った円形の枠(「データムターゲット枠」)によって図示します。データムターゲット記入枠の下段には、形体全体のデータムと同じデータムを指示する文字記号およびデータムターゲットの番号を表す数字を記入します(図12、13)。
幾何公差とデータム
ここまで、データムの使い方を説明してきましたが、JISハンドブックや一般の製図書では、データム面は基準面であるのに対して、その面に平面度や円筒度、真直度などを記入した事例はほとんどありませんでした。
また第二次データムや第三次データムなど優先順位の低いデータムにも、第一次データムとの関係を表す平行度や直角度、位置度などを指示する事例も皆無に等しい状態でした。
これは、データム面だから、それなりの形状精度が必要という暗黙の了解で指示を省略しているためです。
しかし、このような考えは、“曖昧性を排除する”という目的に反することになるので、「データム+幾何公差」は必然であるといえます。
JISには、「相互に関連したデータム形体および実用データムの形体の精度は機能上の要求に対して十分でなければならない。そのためデータム形体には、形状公差を指定することが望ましい」と記載されています。つまりデータムは、基準となる面あるいは線ですから、精度が必要なのです(図14)。
幾何特性は、「形状」「姿勢」「位置」「振れ」の4つの公差に分類されます。まずは、幾何特性の全体像を把握しましょう。さらに、これら4つの幾何特性に共通する指示に関する作法を知ることが必要です。今回学習したデータムを必ずしも使うとは限らないのです。次回より、幾何特性が定義できる領域を知り、図面指示上の作法を学習していきましょう。(次回に続く)
◎併せて読みたい「CAD」関連ホワイトペーパー:
» 主要7製品を完全網羅! 製品選定・比較に役立つ「商用3D CADカタログ 完全版」
» 【導入事例】食品加工機械メーカー不二精機による“3D CAD推進”
» 設計現場の56.5%が3D CADを活用、2次元からの「移行予定なし」も16.7%
» エクスペリエンス時代に向けて進化を続ける「CATIA」
» PTCが語る3D CADの歴史と「Creo」の注目機能
関連記事
- 「データム記号」の使い方と設計者が身に付けておくべき作法
機械メーカーで機械設計者として長年従事し、現在は3D CAD運用や公差設計/解析を推進する筆者が公差計算や公差解析、幾何公差について解説する連載。第5回はデータム記号の使用方法を説明する。 - データムはどうやって決めるの? 3D CADで考えよう
機械メーカーで3D CAD運用や公差設計/解析を推進する筆者から見た製造業やメカ設計の現場とは。今回は具体的にデータムとは何により決められているのかを説明する。 - データムを必要とする幾何公差【その1】〜姿勢公差の平行度〜
機械メーカーで機械設計者として長年従事し、現在は3D CAD運用や公差設計/解析を推進する筆者が公差計算や公差解析、幾何公差について解説する連載。第8回はデータムを必要とする幾何公差をテーマに、姿勢公差の平行度について取り上げる。 - データムを正しく使えていますか?
アイティメディアがモノづくり分野の読者向けに提供する「MONOist」「EE Times Japan」「EDN Japan」に掲載した主要な記事を、読みやすいPDF形式の電子ブックレットに再編集した「エンジニア電子ブックレット」。今回は人気記事「幾何公差の基準「データム」を理解しよう」をお届けします。 - 「データム」とは何か? をあらためて理解する
「データム(Datum)」とは? 今回は、設計者であれば当たり前のように聞くこの用語について掘り下げていきます。 - 幾何公差の本領発揮! データムを使った姿勢公差と測定
幾何公差や寸法測定の課題に対する幾つかの取り組みを紹介していく本連載。第4回はデータムと関連する姿勢公差について解説する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.