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小規模開発チーム向けの軽量PLM ― ProductPointものづくり支援ソフトウェア製品レポート(4)(2/3 ページ)

製造業を取り巻く厳しい経営環境の中で、高い次元のQCDを達成するにはITツールによる業務支援が不可欠である。本連載はPLM、ERP、SCMなど製造業向けの代表的な業務支援ソフトウェアの特徴をレポートしていく。

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構造化されたデータ管理のメリット

 ProductPointがターゲットとする設計エンジニア10人以下のチーム開発では、仕掛かり途中の設計データや過去の成果物、バージョン管理などは共有フォルダで管理していることが多いだろう。特に日本では厳密な運用ルールや命名規則を設けて、通常のフォルダによる管理でそこそこ事故を起こさずに運用できているのかもしれない。そんな開発チームにとって、ProductPointのようなデータ管理ツールを導入するメリットとは何だろうか。

 「ProductPointはマイクロソフト製のグループウェア『SharePoint』を拡張して、製品設計におけるデータ管理ツールに必要な機能を搭載したものです。特にSharePointにない機能として『構造化されたデータの管理機能』『独自のトランザクションモデル』の部分を作り込んで、エンタープライズシステムに引けを取らないデータ管理を可能にしています」(ガーフ氏)

 構造化されたデータというのは、単に親子関係を持ったツリー構造だけではなく、階層構造に限定されないネットワーク型の構造であったり、ある部品が別の部品のあるバージョンだけと関係していたり、イテレーションといって部品の世代(バージョン1、2、3など)の関係であったりする。ある製品のアセンブリを構成する設計情報は、このように複雑な関係性を持つのが普通で、こうしたデータモデルを単純なファイルシステムのディレクトリ構造で管理するのはかなりの危険が伴う。ProductPointはこうした設計データ特有の複雑なデータモデルをうまく扱えるようSharePointを拡張しているという。

 また共有フォルダでは同じファイルを別の作業者が上書き更新する事故も起こる。SharePointではこれを防ぐためにファイル単位のチェックイン・チェックアウト機能を実装しているが、製品設計では単なるファイル単位のトランザクションでは能力不足である。複数の作業者が1つのアセンブリに属する複数の部品に変更を加えるといったチーム設計において、アセンブリ単位でのトランザクションモデルが求められる。ProductPointはPDMLinkに実装されている独自のトランザクションモデルを継承している。

 こうしたデータ管理機能のほかにも、ProductPointを導入するメリットとして、ガーフ氏は「ProductViewによる可視化」および「Windchillとの連携機能」を挙げた。

 まずProductViewによる可視化から見ていこう。ProductViewとはPTCの製品ポートフォリオの1つである3次元設計データのビューアである。ProductPointには、ProductViewの無償版が組み込まれており、ProductPointの検索結果画面でCADデータのアイコン上にマウスを置くと、その形状のサムネール画像が表示され、CADソフトを開かなくても形状の確認ができる(図2)。ProductPointのさまざまな画面に、こうしたビューア機能が埋め込まれているので、設計データをエンジニアではない営業や企画の人たちと共有できる。

図2 ProductViewによる可視化機能
図2 ProductViewによる可視化機能
マウスをアイコンに載せるだけでサムネール画像とサマリー情報が表示される。ProductViewを立ち上げて、3次元で形状を確認することも可能だ

 Windchillとの連携については、前述の「エンジニア10人以下」というしきい値と密接に関係してくる。仮に10人以下の規模でProductPointを導入して、将来エンジニアの人員が増加した場合は、ProductPointからPDMLinkに切り替える必要があるのか。この質問に対して、ガーフ氏は次のように答えた。

 「ProductPointで初めてPLMを導入して将来ビジネスが拡大した場合は、ProductPointをPDMLinkに置き換えるという発想ではなく、ProductPointを使い続けながら不足している機能を補うためにPDMLinkを導入するというユースケースを想定しています。なぜなら、ビジネスが拡大したとしても、小規模なグループでのチーム設計そのものは継続されるはずなので、ProductPointを使うチームの数を増やし、設計データの変更管理や構成管理といった機能や、最終的にリリースする製品全体のデータ管理などをPDMLinkに任せるのです」

 こうした2つのPLM製品の混在環境を可能にしているのが、ProductPointに実装されているWindchillとの連携機能である。Windchillシステム間の情報交換を可能にするWindchill PLM Connector(以下、PLM Connector)という製品を利用して、ProductPointとPDMLinkを連携させられる。例えば、大手企業に導入されているPDMLinkに対して、ファイアウォールの外にいるサプライヤがWebブラウザベースのProductPointでアクセスできるのだ。

図3 ProductPointとPDMLinkの連携イメージ
図3 ProductPointとPDMLinkの連携イメージ
大手企業内に、コアとしてのPDMLinkがあり、そこと連携する部門レベルのProductPointシステムと、PDMLinkにはつながっていないスタンドアロンの設計チームがある。また、ファイアウォールの外にいるサプライヤのProductPointとPDMLinkが連携することもあり得る。さらに、中小規模の企業ではProductPointをスタンドアロンとして導入することもあるだろう

 また設計エンジニアはWebブラウザベースのProductPointを使わず、Pro/ENGINEERから直接ProductPointのデータベースにアクセスできる(Wildfire 4.0が対応)。つまりPro/ENGINEERでファイルを開いたり保存する際に、特別なアプリケーションを立ち上げることなく、通常の共有フォルダにアクセスしているかのような感覚でProductPointにアクセスできる。そしてPro/ENGINEERから、ProductPointの検索機能を使ったり、そのファイルの編集権限を持っている人やロックしている人といった属性情報を参照できる。

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