小規模開発チーム向けの軽量PLM ― ProductPoint:ものづくり支援ソフトウェア製品レポート(4)(3/3 ページ)
製造業を取り巻く厳しい経営環境の中で、高い次元のQCDを達成するにはITツールによる業務支援が不可欠である。本連載はPLM、ERP、SCMなど製造業向けの代表的な業務支援ソフトウェアの特徴をレポートしていく。
マイクロソフトのプラットフォームに搭載した理由
ProductPointは、PLM製品として上位モデルであるPDMLinkのサブセットという位置付けで、10人以下という少数の設計チームの基本的なニーズに応えようと、シンプルかつ使い勝手のよい製品になるよう開発されたという。競合するPLMベンダは上位モデルの機能限定版というアプローチで中小規模向けのPLM製品を市場に投入しているが、同社はマイクロソフトのSharePointプラットフォームにアドオンするという独自のアプローチを選択した。その理由について、ガーフ氏は次のように語った。
「PDMLinkの機能限定版といったアプローチも可能でしたが、そうしなかったのはWindowsのインフラが中小規模の企業に広く浸透しているためです。SharePointはすでに全世界で1万7000社以上に導入されているといいます。SharePointの世界シェアで日本はトップ5に入っています。こうした既存のITインフラを活用できれば、IT投資の初期コストを低減できると考えました。また、ツールを実際に使用するユーザーにとっても、新しいツールの使い方を習得するコストが要りません。普段使い慣れたWindows製品の操作感覚を生かして、すぐにProductPointを使いこなせるようになります。こういったメリットから、ProductPointはSharePointのアーキテクチャにアドオンする選択をしたのです」
多くのPLMベンダが言及しているように、中小規模の企業にPLM導入を提案する際に、最もユーザーが重視する点は早期導入、早期立ち上げだといわれている。導入期間に1年もかかるのは論外で、せめて2〜3カ月で実稼働を始められるようでなければ、中小規模ユーザーは納得しないだろう。その点、ProductPointのアプローチは、SharePointという既存インフラを流用できるユーザーにとって、導入時の障壁を下げるアピールポイントとなるだろう。その一方で、マイクロソフトの製品戦略と一体化することで、自社の製品展開に制約を受けるリスクもある。
「確かにWindows Serverのサポート打ち切りなどの制約を受けるかもしれませんが、マイクロソフトの製品サポート期間は一般のソフトウェア企業よりもずっと長いので、問題ないと考えています。ただ、ProductPointの開発はマイクロソフトの製品戦略と歩調を合わせて進めていく必要があります。もしマイクロソフトが新しいテクノロジを投入しようとしているなら、われわれはそれを待ってからProductPointを拡張していくという順序にはなるでしょう」(ガーフ氏)
ProductPointの将来像
これまで紹介してきた以外のPDMLinkとProductPointの違いについて、PDMLinkにあってProductPointにない主な機能を以下にまとめておく。
- 変更管理
- 高度な構成管理
- Windchillのさまざまなモジュール(Windchill MPMLinkなど)への対応
- ワークスペース(プライベートな作業空間)
- 高度な条件を用いた検索
- 高度なファイルのチェックイン・チェックアウト
こうした本格的なPLM機能で、習得するのに時間のかかる部分は思い切って切り捨てている。また、SharePointにアドオンしているため、Windows Server 2003(およびWindows Serverに同梱されているWindows SharePoint Services 3.0)の導入が前提となる。
ProductPointのバージョンアップサイクルは6カ月を予定しているという。2009年6月には最初のバージョンアップとなるバージョン1.1がリリースされ、バージョン2.0はおそらく2009年末から2010年初頭となる公算だ。バージョン1.1では大きな機能追加はなく、ユーザーからのフィードバックに対応することがメインで、ほかにインフラ回りの拡張性をリファインしたり、Mathcadとの連係機能が入る予定だという。
こうした短期的な機能追加とは別に、中長期的な視野でのProductPointの方向性として、ガーフ氏は次のように語った。
「私の個人的な興味でいえば、マイクロソフトとの協業で多くの可能性が残されているだろうと感じています。例えば情報保護を支援するWindows Rights Management Servicesやビジネスインテリジェンス・レポート製品のOffice PerformancePoint Server、それにCRMやERPといった業務アプリケーション製品のDynamicsなどとProductPointを連携できれば面白いと思っています」
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ProductPointは非常に割り切った製品だと思う。SharePointによるファイル共有管理を導入している設計チーム環境であれば魅力的な製品に映るだろうし、そうでなければ「なぜSharePointなの?」という疑問がぬぐえないかもしれない。この大胆な製品戦略が日本のPLM市場でどのように受け入れられるのか注目していきたい。
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