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小規模開発チーム向けの軽量PLM ― ProductPointものづくり支援ソフトウェア製品レポート(4)(1/3 ページ)

製造業を取り巻く厳しい経営環境の中で、高い次元のQCDを達成するにはITツールによる業務支援が不可欠である。本連載はPLM、ERP、SCMなど製造業向けの代表的な業務支援ソフトウェアの特徴をレポートしていく。

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 「日本ほどPLM製品を売りにくい国はない」という声をしばしば耳にする。裏を返せば「日本人は特別なツールを使わなくても、うまくデータを管理できる」ということなのだろう。その真偽はともかく、日本とは裏腹に世界のPLM市場は拡大を続けており、3次元CAD製品の市場がそろそろ頭打ちになっているのに対して、PLMはまだまだ拡販の余地が大きいといわれている。

 また、PLM市場の中でも大企業に向けたフル機能版より、中小企業向けの軽量版の方が伸び率は高いという。自動車や航空機などを製造する大手企業へのPLM導入はかなり進んでいる。このため主要なPLMベンダは中小規模の製造業に向けた製品を相次いで発表している。

 今回取り上げるのは、そんな軽量版PLM製品の最新モデルだ。大手PLMベンダの一角、PTCが2008年末に正式リリースした「Windchill ProductPoint」(以下、ProductPoint)である。本製品は2008年6月に開催された「PTC/USER World Event 2008」で発表されたもの。本稿では、ProductPointの開発統括を務める同社プロダクトマネジメント担当バイスプレジデント、リー・ガーフ(Lee Garf)氏へのインタビューを基に、その特徴を見ていこう。

10人以下の設計チームに最適化

 ハイエンド3次元CAD「Pro/ENGINEER」の開発元として知られるPTCは、会社設立が1985年。同社が初のPLMソリューション「Windchill」を発売したのは、それから13年後の1998年である。ジェームス・ヘプルマン(James Heppelmann)氏が創業したWindchill Technology社を買収し、PTCブランドのPLMとして発売されることとなった。ヘプルマン氏はPTCに入社後、PLMの製品戦略や開発を指揮し、今年(2009年)3月に同社の社長兼最高執行責任者(COO)に就任している。

 Windchillは大企業向けに最適化されたPLMソリューションであり、製品のライフサイクル全般の情報管理・共有を実現するために、多くのコンポーネントを組み合わせて構成するシステムとなっている。その代表的なコンポーネントを挙げてみよう。

Windchill PDMLink 製品開発に必要なデジタルデータを単一のデータベースで管理するWebベースのPDMで、WindchillによるPLMソリューションの中核を担う製品。変更管理や構成管理、製造部門との連携、地理的に分散したチームのサポートなどを提供する。

Windchill MPMLink 製造エンジニアが作成する製造工程計画、製造BOM、作業指示書といった成果物を管理するツール。設計と同時並行での工程設計を可能にする。

Windchill Supplier Management 複数の製品ラインや地域に広がったサプライチェーン情報を管理・分析して、最適な製造業者を選択するためのツール。

Windchill PartsLink Classification and Reuse Windchill PDMLinkの統合オプションで、オンラインの設計ライブラリを構築し、検索機能を通じて既存部品の再利用を促進するツール。

Windchill Archive 不要な情報をデータベースから切り離しアーカイブして長期保存し、必要なときにリストアする機能を提供する。

Windchill ProjectLink ファイアウォールの内外を問わず、Webベースのワークスペースを通して、適切な製品開発情報やプロジェクト管理情報へのアクセスを可能にするコラボレーションツール。

Windchill PLM Connector Windchillシステム間で製品情報の交換をする。

 2008年12月にリリースされたProductPointは、これらのWindchillコンポーネントの1つと考えてもいいのだが、重要な点で既存コンポーネントとの違いがある。それは、想定する設計チームの規模だ。ProductPointは中小規模の設計チームを想定するというが、そのしきい値はどこにあるのか。ガーフ氏は次のように述べた。

PTC プロダクトマネジメント担当バイスプレジデント リー・ガーフ氏
PTC プロダクトマネジメント担当バイスプレジデント リー・ガーフ氏

 「ProductPointの開発に当たって想定したのは、5〜10人程度のエンジニアが設計に当たっている開発チームです。これぐらいの規模のチーム開発に最適化できるよう、極力シンプルな機能に絞って設計しています」

 つまり、Pro/ENGINEERなどの設計ツールを使うエンジニアが10名以下で、例えば大手企業から設計業務を請け負っている中小規模の設計会社などを主なユーザーと想定している(なおProductPointはマルチCAD対応なので、設計ツールはPro/ENGINEERに限定されない)。これに加えて大企業でも、新製品開発などで情報を秘匿しておきたいプロジェクトなど、小規模なチーム開発で利用するデータ管理ツールのニーズがあり、実際にそのような引き合いもきているという。いずれにせよ、10人という明確な切り分けのポイントが示されているのは分かりやすい。もしそれ以上のチーム規模を想定しているなら、Windchill PDMLink(以下、PDMLink)の導入を推奨するという。

 ProductPointとPDMLinkのすみ分けについては、図1に示すようにPDMLinkは大企業で幅広い製品ライフサイクルをカバーする。これに対してProductPointはPDMLinkより小さな企業規模で、しかも製品設計を中心とした業務に絞り込まれている。将来ProductPointが拡張されるのは製品ライフサイクルのカバー領域を広げる方向に限られ、上位のPDMLinkと食い合うことはないという。

図1 ProductPointとPDMLinkのすみ分け
図1 ProductPointとPDMLinkのすみ分け
縦軸が企業の規模、横軸に製品ライフサイクルを取っている。PDMLinkは中堅から大企業に向けて最適化され、カバーする範囲は製品ライフサイクルの中間部分、つまりエンジニアリングのプロセスから始まる。これに対してProductPointは企業規模では中小企業、製品ライフサイクルでは設計の部分に最適化されている

 今後のバージョンアップで、ProductPointの守備範囲を中小企業のニーズに合わせた形で製品ライフサイクルの方向に広げる計画があるという。例えばプロジェクト管理や製品ポートフォリオ管理、サービスやデリバリといった製品完成後の業務領域、技術文書の管理といった領域が考えられているようだ。

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