公差解析、どうしてみんなやらないの?:メカ設計 イベントレポート(9)(2/3 ページ)
公差解析は難しくて面倒そうだし、実機を作って検証したほうが早い? しかしそれで、今日の厳しい市場で生き残れるだろうか
公差解析とはどういうことをするのか
次に公差解析で、具体的にどういう問題が解決できるのか見ていく。ローランド ディー.ジー.の杉山氏は、キャスターの部品を例に出して説明していった。
キャスターのホイール軸が大きく傾けば、当然作動にも大きく影響する。このズレの許容値を0.2mmとした(図2)。これ以上になると、キャスターのシャフトがブシュに干渉する。
構成部品は、以下のようになっている(図3)。これで公差解析を行い、トッププレートからブシュの軸までの距離がどれぐらいずれるか予測した(図4)。
ワーストケースで±0.191mm、二乗平均で±0.082mmであることが分かった。許容範囲の
±0.2mm以内に収まっているので、問題はないということになる(図5)。
次に、アクセルサポートを切削加工から板金に変えたい場合、どれぐらいの値になるかを予測した。部品の板金化は、設計では一般的なコストダウン手段だ。強度の懸念もあるが、その前に、寸法公差の見直しが必要だ(図6)。
まず曲げた板金に図のような穴を開ける場合では、板金の曲げの角度、曲げの順序、どこを基準にしてパンチするかなど、さまざまな要因が寸法に絡み、ばらつきも出やすい。図面でブシュ用穴の位置寸法に指定されているのは「±0.05mm」。図のようなサイズだと、一応は製作可能な範囲とはいえるが、規格から外れる部品もたくさん発生するので、製作コストは跳ね上ってしまう。
ここでは、アクセルサポートを板金に変えた場合の寸法公差を±0.2mmと、現実的に無理のない値とした。その公差計算の結果は、最悪値で±0.504mm、二乗平均で±0.286mmであることが分かった。これでは、非常に高い確率で部品干渉が起こってしまう。
よって、アクセルサポートの板金化のメリットはあまりなさそうだと判断ができる。
このような部品のばらつきに起因する問題を実機試作に持ち込む前に洗い出すことができる。その結果、試作コストや設計工数を大幅に減らすことができる。
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