CCDやCMOSを超える裏面照射型CMOSセンサって?:知っていればもっと楽しいデジタル家電の仕組み(6)(2/2 ページ)
デジタルカメラやビデオカメラに搭載されている撮像素子「CCD」と「CMOS」の違いを基に、両者の課題を補う新技術を紹介します
従来のCMOSはその構造上、CCDに比べて光の利用効率が低くなり、それが高感度対応への妨げになっていました。その欠点を解決したのが裏面照射型CMOSです。以下、図2を基に説明します。
図2(左)は一般的なCMOS(表面照射型)の構造図です。まず光を集めるためのレンズがあり、その下にカラーフィルタ、金属の配線が3〜4層という順にあります。金属の配線部では、受光面への光を金属が邪魔しないよう、穴が開いています。レンズからの光はその穴を通過し、フォトダイオードへ入ることで、初めて電荷に置き換わります。
しかしこの構造では、金属に当たってしまった光が反射してしまうなど、すべての光がフォトダイオードまで到達しにくくなっています。処理速度を上げるための金属配線が、光を集める際に思わぬ邪魔をしているというわけです。
そこで、裏面照射型のCMOSでは、図2(右)にあるように金属の配線部とフォトダイオードの位置を逆転させることで、光を効率よく取り込むことに成功しました。以前は難しかった斜めからの光も入りやすくなっています。
また、裏面照射型CMOSはフォトダイオードからノイズが発生してしまうのですが、すでに開発を発表しているソニーでは、特殊な技術によりノイズの問題を解消しています。さらに、以前のように配線部分の集光効率を考えなくてもよくなったので、配線設計の自由度が高まりました。
CMOSはどうして最初から裏面照射型構造にしなかったの?
アイデア自体はCMOSを作り始めたころからあったんだけど、金属配線の上にフォトダイオードを持ってくるという構造がとても難しくて、量産できなかったんだよ。以前から手作業では作っていて、例えば天体観測用望遠鏡向けとか、X線の検出機なんかではこの裏面照射型構造のCMOSが一部使用されていることはあったんだ。ただし量産化しづらいだけでなく温度を下げた状態でないと使えないとか、いろいろ課題があったので民生用には採用されていなかったのが現状だったんだ。
CCDとCMOSの欠点を解決した裏面照射型CMOS
裏面照射型CMOSは、2009年2月20日にソニーから発売されたデジタルビデオカメラ「HDR-XR520V」および「HDR-XR500V」に初搭載されました。
CCD、CMOSそれぞれの欠点を解決したのが裏面照射型CMOSなんだ。もしコンパクトデジカメにも裏面照射型CMOSが搭載されるようになれば、高感度で低ノイズな、一昔前のデジタルビデオカメラに匹敵するほどの高画質な動画がコンパクトデジカメで撮影できるようになるのさ。
じゃあデジカメの撮像素子は、これから全部CMOSに変わっていくの?
いや、画質とコストのバランスを考えると、静止画であればまだCCDの方が有利かな。裏面照射型CMOSの量産が進んでいけば、ビデオカメラだけでなくデジカメなどもCMOS搭載のものが主流になるかもしれないね。
次回もお楽しみに!
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