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交通インフラと連携する“安全な自動車”への取り組み組み込みイベントレポート(2/2 ページ)

ET2008の基調講演で語られた、日産とホンダによる最新カーエレクトロニクスへの取り組みと、ニコンのデジカメ先端技術に注目!!

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=講演3:基調講演=ホンダの知能化を支える最新電子技術〜環境性能と安全性能を実現する The Power of Dreams〜

 ET2008最終日、本田技術研究所 四輪開発センター 第4技術開発室 第2ブロック 上席研究員 シニアマネージャー 中島豊平氏が基調講演を行った(画像10)。中島氏は講演の冒頭で、自動車業界が抱える大きな課題について言及。CO2削減をはじめとする環境対応や、事故の防止や事故時の損害を低減する安全対策への取り組みの重要性について多くの時間を割いた。「ドライビングシミュレータ」や「ライディングシミュレータ」の開発による運転者教習や、「マルチビューカメラシステム」による事故や接触の防止、歩行者などを検知する「ナイトビジョン」など、さまざまな取り組みを行っている。

中島豊平氏
画像10 本田技術研究所 四輪開発センター 第4技術開発室 第2ブロック 上席研究員 シニアマネージャー 中島豊平氏

 前述の日産自動車と同様、本田技研も交通インフラとの連携による事故防止情報サービスの実証実験を栃木県宇都宮市で実施している。見通しの悪い交差点での歩行者の情報や、路面凍結によるスリップの情報などを路車間通信や車車間通信によって伝達し、かなりの効果を得ているとのことだ。

 1970年代から現在までに「ABS」や「クルーズコントロール」「VGS(車速応動可変ギアレシオステアリング)」など、制動・操舵・駆動・ドライバーサポートとさまざまな分野で電子制御システムが高度化している(画像11)。「そのためにコンピュータ(ECU)の数が1990年代の3倍に増えた。それらをつなぐワイヤリングハーネスも、1990年代から現在までの間に約3倍弱の進化をしなければならなかった」と中島氏は語る。

安全研究車の進化について
画像11 安全研究車の進化について

 「シビックではハイブリッドエンジンを導入するうえで、ハイスピードCAN、車体系のロースピードCANというネットワークに加え、ハイブリッドCANなど数多くのネットワークを導入しなければならなくなった」(中島氏)。複数のCANを導入することでネットワークトラフィックも増加し、2003年のアコードを1とすると、2007年のハイブリッドエンジン搭載シビックは4倍のネットワークトラフィックになっているという。

 同社は近年、制御アルゴリズムのモデル化やアニメーションを用いたシミュレーションなどによって、実車テスト前の効果測定などを行っている(画像12)(画像13)。だが「これらのツールを利用しても、従来のソフトウェア開発では網羅性のある確認はできない」と中島氏は指摘する。

モデルベース設計(モデル構成)の例
画像12 モデルベース設計(モデル構成)の例
モデルを基にアニメーション化し、車両挙動をシミュレーションしている例
画像13 モデルを基にアニメーション化し、車両挙動をシミュレーションしている例

 従来は汎用OSを使用せず、さまざまな機能を組み合わせて一挙に開発する手法を取っていた。そのためソフトウェアの流用が難しく、マイコンの変更に合わせ、その都度ソフトウェアの再設計が必要になっていた。こうした問題について中島氏は「OSやデバイスドライバ、ミドルウェアを介するソフトウェアプラットフォーム化を実現することで、周辺機器との連携ができるような構造にしなければならない」と述べた(画像14)。

ソフトウェアプラットフォームの導入について
画像14 ソフトウェアプラットフォームの導入について

 続いて中島氏が語ったのが、次世代ネットワークへの期待だ。「CANの10倍の速度を持つFlexRayを導入すれば通信トラフィック増加に対応できるだけでなく、従来以上の高信頼性と通信遅延時間の保証、フォールト・トレラント通信が可能なBy Wire(油圧や機械により駆動していた制御を車内LANを介した伝送により行うこと)なども利用できる」(中島氏)。

 「高性能マイコンを導入するために、ミドルウェアやドライバだけでなく、業界標準のプロトコルに合意し、AUTOSARなどの大きなアーキテクチャの中でネットワークマネジメントなどを導入するのが不可欠だ。また、従来の高速CAN、低速CANとの共存の仕組みも必要になる」(中島氏)。

 加えて中島氏は、情報系LANの重要性も説いていた。「Aピラー(フロントウィンドウ左右の支柱)を細くしなければ視界が悪くなるが、細くするとハーネスを通しづらくなる。IEEE1394やMOST(情報系車載ネットワークプロトコル)などを導入し、情報系の新しいネットワークを作る必要がある」と語った。

関連リンク:
本田技術研究所

=講演4:招待講演=エンベデッド・コンピューティングの将来

ダグラス・デービス氏
画像15 インテル コーポレーション エンベデッド&コミュニケーション・グループ ジェネラル・マネージャー、デジタル・エンタープライズ事業本部 バイス・プレジデント ダグラス・デービス氏

 同じく最終日に行われた招待講演では、インテル コーポレーション エンベデッド&コミュニケーション・グループ ジェネラル・マネージャー、デジタル・エンタープライズ事業本部 バイス・プレジデント ダグラス・デービス氏が登壇(画像15)。エンベデッド製品の将来像や、同社のAtomアーキテクチャ製品による今後の展開について語った。

 デービス氏は、2015年までに150億の端末がエンベデッド・インターネットに接続するだろうと語った。PCやサーバ、携帯電話だけでなく、タクシーのGPSナビゲーションや空港のチェックインカウンター、ATMなどさまざまな組み込み機器がインターネットに接続することになるという。そこで求められるのは「1.信頼性と長期寿命」「2.スケーラビリティ」「3.低消費電力と低コスト」「4.プライバシーやデータの保護」「5.IPv4からIPv6への移行」「6.オープン・スタンダードの採用」の6つだと話す(画像16)。


150億端末がインターネットに接続する際の重要課題とソリューションについて
画像16 150億端末がインターネットに接続する際の重要課題とソリューションについて

 成長が見込まれる市場として、デービス氏は最初に小売業界を例に挙げて解説した。「小売業は製品やサービスを限られたコストでいかに展開できるかが重要であり、そこで注目されるのが『デジタル・サイネージ(デジタル広告展示)』だ」(デービス氏)。従来は紙ベースが中心であったが、液晶のコストが低下したことから広告掲示の主流はインテリジェンス化へと進む。また、複数の広告主を1つの媒体で確保するだけでなく、顧客層に応じて内容を変えたり、広告効果の検証を行うことも可能になるという。

 講演では、顔認識を利用して、性別に合わせて別の広告を表示するというデモが行われた。男性と認識すると自動車広告が表示され、女性だと化粧品に変わるというもの。また、キオスク端末に携帯電話をかざすとクーポンを入手できるというデモも行われた。

 小売業界に続いてデービス氏が紹介したのはゲーム市場だ。マカオやシンガポール、フィリピン、オーストラリアなどでスロットマシンが急速に伸びており、世界で100万台のスロットが導入されているという。ロトマシンなども同様で、広告表示スペースとしても期待されているという。これらの機器は「2D表示から3D表示へと進化するだけでなく、多くの機能を盛り込むことを期待されている」とデービス氏。また、デービス氏はパチスロを含めた約30兆円規模の日本のパチンコ市場に期待を寄せた(画像17)(画像18)。

ゲーム市場の傾向について
画像17 ゲーム市場の傾向について
今日のパチンコ台が将来どのように発展していくのかについて
画像18 今日のパチンコ台が将来どのように発展していくのかについて

 「いままではマイクロコントローラでサポートしていたが、グラフィックスは高度ではなかった。もっと楽しくしたい、インタラクティブにしたいというのが新しい流れであり、そのためにはコンピューティング機能をどんどん上げなければならない」とデービス氏は語る。そこで新しいインテル・アーキテクチャを業界標準にしたい考えだ。

インテルアーキテクチャを採用したCPUボード「EX-6」
画像18 インテルアーキテクチャを採用したCPUボード「EX-6」

 続いてインテル・アーキテクチャを採用したCPUボード「EX-6」を紹介。低消費電力と2D・3Dグラフィックス機能のほか、コンテンツのオーサリングツールやミドルウェアを提供することを強みとしている。15年ほど前から液晶搭載のパチンコ台が普及し始めたが、近年ではきれいなグラフィックスを実現するためにROM容量が増大し、新機種におけるROMのコストインパクトが大きくなったとデービス氏は指摘。「エンベデッドIA(インテル・アーキテクチャ)プラットフォームが有効になってきた」と語った。その理由としてデービス氏は次の3つのメリットを挙げた。

 1つ目はリアルタイム3Dレンダリングにより、ムービー時間に比例したROM容量が不要になること。加えてオーサリングツールによる変更が即座に反映できることを挙げた。

 2つ目として挙げたのがスケーラビリティだ。コンテンツの開発途中にCPUパワーやグラフィックスパワーが足りなくなっても、ソフトの変更を最小限にして上位プラットフォームに変えられるという。デービス氏は「リリース時に最適なプラットフォームを選ぶことで、プラットフォームのリスクを減らせる」と述べる。

 3つ目がオープンアーキテクチャだ。「ハードウェア完成前にPCで開発できるため、ハードの開発とコンテンツの開発を並行して行える」(デービス氏)。

 デービス氏は最後に「新しい時代になって『マシンツーマシン』が増えており、テレマティクスなど新たな技術が求められている。新たなアプリケーションがどんどん開発されているアジアの中でも、日本はダントツ。世界では約8000万台の家庭用ゲームが出荷されているが、その約9割が日本発だ。デバイスは今後リッチユーザーインターフェイスを介してネットとつながるようになるが、日本はそんなデバイスの大きな原動力になる」と締めくくった。


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