インテル、「Atom」を武器にアミューズメント市場へ:組み込みイベントレポート(1/3 ページ)
過去最大規模で開催された組み込みイベント「ET2008」。広大な展示会場の中で特に目を引いた最新技術・製品をレポートする。
CPUベンダの巨頭、インテルとアームの動向
450もの企業や団体が大小の展示ブースを展開するET2008の中でも、CPUベンダの巨頭、インテルとアームが向かい合い、ともに巨大ブースを構えているのが印象的だった。別のいい方をすれば、超低消費電力CPU「Atom」を擁したインテルは、組み込み分野でも存在感を強めているのだ。実際、インテルのブース内では、オムロン直方やPFUなど何社ものパートナがAtom搭載ボードを出展(画像1)。ユニダックスは、Atom搭載ボード(Z530/1.6GHz)でフルHD MEPG映像のハードウェアエンコードを実演し、プロセッサの温度を示しながらAtomの低電力性をアピールしていた。
また、Atomの用途イメージを喚起するため、ブース前面ではパチンコ機を模したパネルに液晶ディスプレイを埋め込み、動画を表示していた(画像2)。なお、ボードはビデオメール・ジャパンとNECシステムテクノロジーが共同開発したもので、「Centrino Atom」(モバイルインターネット機器向けAtomと統合チップセットを組み合わせたプラットフォーム)を搭載しており、MEPG-2/H.264のフルHD映像を再現できるという。説明員によれば、「インテルは、Atomの重要な適用分野の1つとしてアミューズメント機器市場を見ている」とのことである。Atomの先行きは興味深い。
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一方、これを迎え撃つアームも横河ディジタルコンピュータなど数多くのパートナが豊富な関連ソリューションを展開するとともに、アーム自身はソフトウェア統合開発環境の最新版「RealView Development Suite v4.0」を強力にアピールしていた(画像3)。
RealViewは、Eclipseプラグインとして提供される。v4.0ではソフトウェア解析ツール「RealView Profiler」より、ソフトウェアのメモリサイズを4割も削減できるというのが売りで、カバレッジ解析により品質や信頼性も向上させられるとしている。また、サポートCPUに最上位製品「Cortex-A9」が加わる。アームの展示内容はインテルに比べれば華々しさこそないが、実績に裏付けされた安定感を示していた。
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百花繚乱(りょうらん)の映像ソリューション
ET2008が掲げる4つの応用テーマの1つ“デジタルコンシューマ”。この分野では、半導体から完成品まで垂直統合で手掛けるパナソニックが、デジタル家電統合プラットフォーム「UniPhier」を積極的に訴求していた。
システムLSIに45ナノプロセスを採用しているUniPhierは高い集積効果を誇り、例えば、Blu-ray Disc(以下、BD)/DVDレコーダー向けUniPhieは、以前は4つあったLSIを1つに統合し、基板面積を4割、消費電力を5割削減している。さらに、「(パナソニックのBD/DVDレコーダー)“DIGA”最新機種に搭載されている最新のUniPhierは、ソフトウェアの更新だけで機能・性能を大幅に拡張している」と柔軟性も高いようだ(画像4)。また、各商品分野向けUniPhierのロードマップが披露され、2010年ごろに登場する“Next Generation”では早くも、「32ナノプロセスも検討されている」とのことだった。
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映像処理技術が目立っていたのはH.264関連。富士通マイクロエレクトロニクスが参考出展していた「H.264トランスコーダー」は、フルHDのMPEG-2をそのままの解像度でH.264へトランスコード、6倍以上の再圧縮ができるという。現行のレコーダーでトランスコード方式のMPEG-H.264再圧縮の最高は約5倍だ。さすがに6倍の再圧縮となるとH.264特有のアラが目立つが、改良が進めば、十分実用できそうだった(画像5)。
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映像関係では、NECエレクトロニクスの「1枚超解像」も関心を集めた。超解像は、先に行われた「CEATEC JAPAN 2008」でも注目されていた新技術で、映像をより高解像度のディスプレイへ拡大表示する際、複雑な演算処理により本質的に“解像感”を高める技術。単純に画素を補間する一般のアップコンバート技術と比べてボヤけが生まれにくい。東芝の液晶テレビ「REGZA」上位機種が超解像をすでに採用しているが、専用LSIを外販しているのはNECエレクトロニクスのみ。元映像と超解像処理を施した映像を比較しながら、「画質で東芝さんに負けていない」と説明員は自信を見せていた(画像6)。
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オンメモリ型も登場の組み込みDB
アプリケーション上で取り扱うデータ量の増大に伴い注目が集まる組み込みDB分野では、日立製作所が「Entier」を前面でアピール。ルネサス テクノロジのSoC上でエイチアイの3D描画エンジン「MascotCapsule」とEntierを組み合わせたデモアプリケーションは、検索性の高さとUIのリッチさが目を引いた。説明員によれば、Entierは2009年早々に新バージョンが登場する。「カーナビ向けの機能強化として、地図検索の使い勝手を高めるほか、(世界的に市場が拡大している簡易型カーナビ)PNDへの搭載を狙った機能強化も行う」としていた点が興味深い(画像7)。
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組み込みDBでは、シアンス・アールが展示していたオンメモリとディスクのハイブリッド型DB「ALTIBASE」(開発元:韓国アルティベース社)も興味深かった。ALTIBASEは、超高速にデータを処理する必要がある証券、通信などのエンタープライズ分野で実績豊富だが(ブース内でもKDDIが携帯電話の位置情報登録システムで採用した例などを紹介)、組み込み分野でもオンメモリDBの用途を広げようとしているのだ。シアンス・アールによれば、「(画像データを高速処理しなければならない)医療機器などで採用例が出ている。モバイル系も視野に入れている」という(画像8)。
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