スループット計算書を作れば何がムダか一目瞭然:会社のムダを根こそぎ撲滅! TOCスループット(3)(3/3 ページ)
TOCでは「原価計算は生産性の最大の敵である」と主張する。現行の会計制度に存在する矛盾を明らかにし、企業の継続的な利益創出を支援するTOCスループットの基本を紹介しよう。
7つのムダとスループット
前回までの連載で説明してきたさまざまなムダも、スループット計算書で簡単に分析できることが分かりました。ここでトヨタ流の7つのムダを「利益創出! TOCの基本を学ぶ」の第4回で説明したDBR(ドラム・バッファ・ロープ)の考え方とスループット計算に当てはめて、もうけ損ないという視点で考えてみましょう。
(1)作り過ぎのムダ A社の例で見たように、売れないけれど原材料(I)支出が増加します。また、手不足状態ならば大きな機会損失が発生すると考えなければいけません。
(2)手待ちのムダ ネック工程の手待ちは工場全体のスループットの低下を発生させます。ものすごく大きなムダといえます。また、ボトルネック工程以外の手待ちに関しては、作り過ぎのムダを生じないためにある程度までは容認できます。しかし故障やトラブルの頻発で発生する極端な手待ちは業務費用(OE)の増大を招くだけでなく全体の生産性を大きく損ないます。トヨタ生産方式では「流れ化」と「同期生産」を重要視しますが、TOCのDBRでもバランスさせるべきは工程の能力ではなく、フローをバランスさせるべきと指摘しています。
(3)運搬のムダ 運搬業務だけに着目すれば、業務費用(OE)の増大という評価になりますが、運搬は「あるまとまった固まり」で行うため、在庫のムダ(I)を発生させるのです。
(4)加工そのもののムダ ボトルネック工程は全体の生産量を決定します。そのボトルネック工程で長時間かけてする加工は、全体の能力低下だけでなく多くの機会損失を発生させます。
(5)在庫のムダ 在庫(I)のムダはいうまでもなく、資金効率を悪化させ売りそこないを発生させる元凶ですから、すべての在庫はムダといえます。しかし、在庫とバッファはサプライチェーン内に存在するバラツキやゆらぎ(不確実性)からスループットを守る役割を持っています。要するに在庫は積み上げるだけではダメで、集めてバッファとして管理することが重要であり、バッファとして必要のない在庫は削減しなければならないのです。
(6)動作のムダ 人間の動作には多くのムダがあります、ただ単に人が「動く」だけでは「業務費用」のムダが発生します。また手不足状態であれば大きな機会損失が生まれることになります。原則は設備から人を離し、自動化を推進すること。人間を単純労働から知恵を使う労働にシフトさせることが重要なのです。
(7)不良のムダ 不良は作り過ぎのムダと同じ、大きなもうけ損なのです。
簡単に7つのムダとスループットの関係を説明してきましたが、もちろん状況によって7つのムダがもっと大きなもうけ損ないを発生させていることも当然考えられます。トヨタ流の7つのムダとは、
- 全体のリードタイムを長期化させ、流れを遅くする要因
- バラツキを生じさせ、波やノイズを作り出す要因
- 工数を浪費し、全体の効率(スループット)を低下させる要因
を具体的に「ムダ」という表現で説明したものだったのです。
TOCの「もうけ損ない」という視点を、ムダの考え方とドッキングすることで、隠されたムダもあぶり出せるようになります。スループットの考え方はトヨタ流のムダ取りを経営レベルで考えるツールということなのです。
スループットの総額を増やすことを目標に掲げることによって、ムダ取りという名の経費低減活動から、スピードの重要性がはっきりと見えてきます。投資されたキャッシュの回転が改善されスループット総額が増え、この結果サプライチェーン内に棚卸しとして滞留するキャッシュは減り、経営効率は飛躍的に高まるのです。またリードタイムを短縮する活動により、市場・顧客との物理的な距離を短縮し、今回お話しした営業・生産管理に潜む大きなムダ(もうけ損ない)を見える化し、撲滅することが可能なのです。
TOCにも現場で守るべき原則がありますので紹介しておきましょう。
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次回は最終回として、会社のムダ撲滅の進め方を具体的に見ていきましょう。
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