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BMWの燃費向上の秘密は、バルブトロニックいまさら聞けない エンジン設計入門(6)(1/3 ページ)

バルブ設計はエンジン効率に大きく響く。ポンピングロスをなくすためには、スロットルバルブをなくせばよいのだが。

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 今回はエンジンの主要部品である「バルブ」について解説していきます。

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バルブとは?

 エンジンの低燃費化や高性能化を考える上で、さまざまな技術やノウハウがいまも注がれ続けている部品であり、今後もますます注目を集める部品ですね。バルブはピストンの往復運動に合わせて適切な時期に開閉し、燃焼室への混合気の導入や密閉、燃焼ガスの排出を行うための「弁」としての役割を持っています。ほかの部品同様に、バルブにも部ごとの名称が付いています(写真1)。

バルブの各部名称
写真1 バルブの各部名称

 バルブには以下の2種類があります。それぞれの役割による違いで構造や材料は若干異なります。

  1. 混合気を燃焼室に導入する「インレットバルブ(インテークバルブ)」
  2. 燃焼室から燃焼ガス(排ガス)を排出する「エキゾーストバルブ」

 インレットバルブは混合気の弁であるため、燃料による腐食などを考慮した耐食性が重要となります。そこで材料には炭素鋼にシリコンやクロムなどを含ませた特殊鋼が主に用いられます。またピストンの燃焼行程時には高温のガスにさらされることになるので、耐熱性を持たせることも必要です。

 エキゾーストバルブは燃焼ガスの弁ということもあり、バルブ全体が常に高温にさらされ続けるという非常に過酷な部品なので、耐熱性が最重要となってきます。そこで材料には炭素鋼やクロム、ニッケルなどを含んだ特殊鋼が主に用いられています。もちろん圧縮行程時には混合気にさらされるので、耐食性も無視できません。

 インレットバルブとエキゾーストバルブに共通して要求される項目としては、優れた耐摩耗性が挙げられます。どちらも高速で開閉運動を繰り返すためです。

インレットバルブとエキゾーストバルブの径を比較する

 温度が低く、かつ比較的圧力がかかっていないインレットバルブは、混合気を導入しやすいように大きいバルブヘッドが採用されています。逆にエキゾーストバルブは高温高圧であるために、小さな径であっても燃焼ガスが持つ自らの圧力で勢いよく排気されるようにすることから、インレットバルブに比べると小さく作られます(写真2)。

バルブの大きさ比較
写真2 バルブの大きさ比較

バルブの開閉

 バルブの開閉は、カムシャフトとバルブスプリングとで行われます。カムシャフトのおにぎり型の山形状によってバルブの開閉時期やリフト量が変化するため、エンジンごとに求められるカム山の形状(カムプロフィール)は大きく異なります(写真3)。

カムシャフト
写真3 カムシャフト

 バルブを閉じるために設けられているバルブスプリングは、超高速での伸縮運動を繰り返すことにより一定の周期でスプリングを往復する圧縮波が生じてしまいます。この圧縮波は異常振動(「サージング」)として現れ、最悪の場合は関連部品の破損につながります。そこでスプリングの固有振動数を変えることで共振を防ぐために、不等ピッチと呼ばれるスプリングを採用しています。一般的にピッチが狭い方をシリンダヘッド側に向けて組み付けられます(写真4)。

バルブスプリング(不等ピッチ)
写真4 バルブスプリング(不等ピッチ)

 超高速回転の際、カムプロフィールの周期で、バルブスプリングによってバルブを閉じる速度が回転に追い付かない場合があります。これによってバルブがジャンプしたような状態になることから「バルブジャンプ」と呼ばれていますが、バルブ首部が破損するという大惨事につながってしまいます。このバルブジャンプに対処するため、バルブスプリングには非常に強い張力を持たせています。

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