100%リーンな設計を実現する処方せんはコレだ!:リーン製品開発でムダな工数を30%削減する!(3)(2/4 ページ)
製造業の利益率は米国で十数%、アジアでも10%程度あるのに、なぜ日本企業はわずか数%なのか? 設計業務のムダな作業を削減し、ぜい肉の取れた“リーン”な製品開発を目指そう。
世の中には、IT活用に適した標準プロセスが存在する(24種類)
読者の皆さんのような方々と、日ごろディスカッションをしていると、必ず出てくる議論があります。
- うちの会社の業務内容は特殊だ
- 他社とは仕事のやり方が非常に異なっている
- 他業界の業務プロセスを参考にしても意味がない
というような発言です。何か、自分の会社の業務プロセスに関して、非常に特殊扱いされる方が多いように感じます。
しかし、決してそんなことはありません。少なくとも、設計業務の約70%を占めている定型的な作業項目や管理方法については、業種・業態に限らず、かなりの共通性があります。特に今回のテーマは、リーン製品開発でした。ITを活用し、業務を徹底的に標準化しながら、ムダ工数を削減させることです。だからこそ、標準プロセスというものを前提とした取り組みが重要になってきます。
世の中には、IT活用に適した「標準プロセス」というものが存在しているのです。
それは、大きく24種類に分かれています。図2に示すように、横軸に製品のライフサイクル、縦軸に業務上の役割を並べていくと、その中に大きく24種類の標準プロセスが展開しています。
もちろん、業種や業態、設計する製品特徴によって、各用語の意味合いや位置関係は異なるかもしれません。ただし、どの企業でも、おおむねこのような24のプロセスの組み合わせで、モノづくりが構成されているのです。
そして、24のプロセスそれぞれに対し、徹底的に業務のムダを発見しながら、正しいITを活用することで、リーン製品開発を実現できると考えられています。1つ1つのプロセスの中は、さらに詳細なサブ・プロセスに分かれます。ある1つのプロセスは、ほかのプロセスと依存関係を持ちながら、有機的に連携しています。24のプロセスは、さまざまな国や地域の多くの企業における、リーン製品開発の成功パターンを体系化しながら標準化したものです。ぜひ、参考にしてみてください。
例えば「変更管理と構成管理」という標準プロセスについてクローズアップしてみましょう。図3のように、約30個のタスクによって仕事の流れが細分化されています。この流れはIT活用を前提としたもので、理想的な業務プロセスであると解釈できます。
ただし、これはあくまでもTo-Beプロセスです。理想的なITツールがすべて理想的に配備され、適切な訓練を受けたメンバーが、理想の設計環境下で取り組んだ場合です。皆さんのいまの立ち位置(As-Is)からすれば、かなり程遠いものと感じるかもしれません。つまり、To-Beにたどり着くための段階的なアプローチ方法を考える必要があります。
完全なリーン状態になるまでに4段階(ホップ、ステップ、ジャンプで、100%リーン!)
ここでは業務プロセスを大きく24種類に分類してきました。そして、プロセス1つ1つが、IT化の大きな単位だとお話しました。24のプロセスは、IT活用で業務のムダ取りが期待できる重要な着眼点といえます。ただし、プロセス1つ1つを、いきなり100%完全なリーン状態にできるわけではありません。
つまり、IT化の現状(As-Is)とのギャップが大きい場合があります。そこで、当面どこまでリーン化を目指すか(Can-Be)によって、大きく4つのレベルに状態を分けることにします。これにより、理想のあるべき姿(To-Be)になるまでに、段階的かつ着実なリーン化をイメージすることができます(図4)。
皆さんの会社では、各プロセスは現状でどのレベルでしょうか。そして当面は、どのレベルまで狙いますか。特に今年度は、どのプロセスをどのレベルまで持っていきたいですか。関係者を集めてディスカッションをしてみてください。この活動もステップ(3)の中では、重要なポイントの1つです。
例えば、ある企業では図5のようになりました。レベル1(赤)の状態からいきなりレベル4(緑)に行きたいというプロセスもあります。思い切ってトライしますか。少し様子を見ますか。しかし、それでは問題の先送りにはなりませんか。さて、どうしましょうか。
前回の記事で説明したステップ(2)を思い出してください。そうです、あれです。IT活用に関する現場の実践能力を、1〜5段階に分けて評価したあの成績表です。もし真っ赤(1または2)な評価をもらってしまっている分野が、今回IT化を狙っているプロセスと大きく関係しているとすれば、IT改革は程遠いものかもしれません。
IT活用を企画・推進する側(例えば、読者の皆さん)の、思いだけが先行していることはないですか。しかし、一方でステップ(1)で見えている経営トップ層の思いも分かります。収益性を上げながら、さらに事業成長を狙うために、大きな現場改革を期待しています。さて、皆さんならどういう提言をしますか。
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