灯油ポンプの設計書を書こうじゃねぇかい!:甚さんの設計分析大特訓(1)(2/3 ページ)
最近、設計思想がない設計者が多過ぎだ。それはリコール問題発生の原因にすらなる。今回は甚さんと一緒に設計書の基本を確認しよう
手抜きだらけの設計フロー
すべてのトラブルは、「設計書を書かない」という設計プロセス上の「手抜き」から生じ、いきなり「造形」へと先走る開発姿勢が招いた結果といっても過言ではありません。
それでは、ここで正統派の設計フローと手抜きの設計フローを比較してみましょう(図1)。
11ステップ中、6ステップもスキップしていることが分かります。これで、「設計」とはとてもいい難いと思います。
設計思想を持たぬ設計者
おい、若いの! 設計書を書かない設計者がいるってかぁ? 図面も描かない、設計書も書かない。じゃあ、かくのは恥かい? ああ、もしかして領収書かい?
スイマセン、スイマセン、校長っ!
校長と呼ぶなっ! 設計書のことは、取りあえず置いておくとしよう。百歩譲って、その(良君が設計しているノートパソコンの)『設計思想』をいってみぃ。
せっ、設計思想って何ですか?
コンニャローッ!
設計者に、設計思想がない――思想を持てる職業は、「政治家」「宗教家」「設計者」ぐらいなのに。設計書の中で最も重要なのが「設計思想」の はずなのですが……。
昨今、人身事故や火災事故を招く欠陥商品が生まれ、社告やリコールが絶え間なく世間を騒がせています。その原因の源泉は、日本企業の中に“設計思想が存在しないこと”だといえます。
べらんめぇ! オレサマをおちょくってんじゃねぇだろうなぁ。どの国の設計者で設計思想を語れない設計者がいるってぇんだ。ひょっとして、オメェは単なるCADオタクか?
スイマセン。校……、いや、甚さん! ねえ、設計書って何ですか? お願いですから、まず、それを教えてくださいよ。
そうか! 急に素直になったじゃねぇかい。実は、このオレサマだってわけぇころは知らなかったんだ。設計の巨匠と呼ばれた――いまはいねぇけどよ――そのオヤっさんに教わったのよ。
じゃあ、オレサマと一緒に灯油ポンプの設計をしてみようじゃねぇか。まず3次元CADのことを忘れちまいな! いまから100円ショップへ行ってよぉ、『灯油ポンプ』を買おうじゃねぇかい……って、あ! オメェーッ!
(こんな町工場にも、一丁前に3次元CADがあるんじゃん!)
良君は事務所の隅にあるパソコンデスクに気が付きました。彼はちゃっかりそこに腰掛けて、起動していた3次元CADを勝手に操作し始めました。
甚さんは、腸(はらわた)が煮えくり返るような気持ちをぐっとこらえ、黙って良君の様子に目を光らせていたのですが。
甚さん! できました。3次元CADは得意だっていったじゃないですか!(図2)
良君は得意顔で甚さんにパソコンの画面を見せたのですが、その瞬間、また甚さんの鉄拳制裁が下ってしまいました。
てんめーッ! 設計っていうのは、そうやっていきなり3次元CADを使わないものなんだよ!
ンモーッ! 痛いじゃないですか! お願いだから、ポンポン殴るのだけはやめてくださいよ。
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