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灯油ポンプの設計書を書こうじゃねぇかい!甚さんの設計分析大特訓(1)(3/3 ページ)

最近、設計思想がない設計者が多過ぎだ。それはリコール問題発生の原因にすらなる。今回は甚さんと一緒に設計書の基本を確認しよう

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「オメェ、これだって設計者の仕事なんだ!」――設計書を書いてみよう

 どうして良君は叱られてしまったのでしょう?

 ここで重要なのは、いきなり3次元CADで設計はできないということです。いきなり形(カタチ)を作る人は世の中にいません。芸術家もデッサンから入りますよね。どんな商品も「企画」が必要です。甚さんは良君にこれを強く訴えたかったのです。

 物を作れば何でも売れる時代がありました。そのような大昔なら、企画書は不要だったかもしれませんが。しかし、それでは企業として生き残れなくなってきたのです。リスクを最小限に抑えるために、「顧客が何を望んでいるのか?」しっかりとしたマーケティングや商品企画が必要な時代です。

 灯油ポンプといっても、ただ単純に設計・製造したところで売れません。競合が存在するからです。売れても、不良品や事故が発生すれば、もうけどころの話ではありません。リスクマネジメントも考慮した商品企画から開始します。

 大企業の場合は、企画部、企画者(プランナー)が存在し、企画書を作成します。しかし、中小企業の場合、営業が担当する場合もありますが、多くは設計者が企画します。零細企業では、設計者であり、営業マンでもある社長自らが担当しています。

設計書の書き出しは、「使用目的の明確化」から

 前ページに出てきた図1を見て、「使用目的の明確化」を探してください。


図1

 前述のような企画が承認されると「使用目的の明確化」へ入ります。ここからが、設計の仕事であり、「設計書」の書き始めとなります。

 「使用目的の明確化」とは、これから商品を設計するに当たり、その性格を定めることです。簡単にいえば、「いつ・どこで・誰が使うのか」など、すなわち「商品の6W2H」を決定します。

 ところで、5W1Hってご存じですか? 小学校、中学校で習いましたね。これと同じように「技術者の6W2H」というものがあります。誰のためにと訳す「Whom」とコストを意味する「How much」が加わりました。

 ここで、企画書が存在したと仮定し、灯油ポンプに関する「商品設計の6W2H」をまとめてみましょう。もちろんこれは、設計者のアウトプットの1つです。

 まずは、何も参考にせず自分で考えながら、以下の表を埋めてみましょう。


企画を6W2Hにまとめてみる
甚

6W2Hを書けるか否かで、企画者や設計者の能力だって判別できるんだぞ。書き方のコツは、“小説を書くこと”を思い浮かべることだ。


良

なんだ、案外簡単じゃないか。



記入例:「使用目的の明確化」を決定する前の「商品設計の6W2H」

 「使用目的の明確化」が定まると、いよいよ「設計思想」を決定します。次回は、実際の「灯油ポンプの設計思想」を甚さんが徹底分析します。(次回に続く)

Profile

國井 良昌(くにい よしまさ)

技術士(機械部門:機械設計/設計工学)。日本技術士会 機械部会 幹事、埼玉県技術士会 幹事。日本設計工学会 会員。横浜国立大学 大学院工学研究院 非常勤講師。首都大学東京 大学院理工学研究科 非常勤講師。

1978年、横浜国立大学 工学部 機械工学科卒業。日立および、富士ゼロックスの高速レーザプリンタの設計に従事。富士ゼロックスでは、設計プロセス改革や設計審査長も務めた。1999年より、國井技術士設計事務所として、設計コンサルタント、セミナー講師、大学非常勤講師としても活躍中。Webでは「システム工学設計法講座」を公開。著書に「ついてきなぁ!加工知識と設計見積り力で『即戦力』」(日刊工業新聞社)と「ついてきなぁ! 『設計書ワザ』で勝負する技術者となれ!」(日刊工業新聞社)がある。



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