「Car-as-a-Robot」という概念が示す自動車とロボットの再定義:和田憲一郎の電動化新時代!(66)(2/3 ページ)
近年、「自動車はロボットである」と位置付ける企業が現れ始めている。その背景には、従来の自動車観と異なる新たな発想の転換がある。その代表例が、中国新興自動車メーカーのXpengが提唱する「Car-as-a-Robot」という概念だ。今回は、このような潮流を前にして、自動車とロボットの関係性を整理するとともに、将来的な影響を考えてみたい。
「Car-as-a-Robot」の概念とは
2026年10月1日、中国の新興自動車メーカーであるXpengは、次世代AIを搭載したフラグシップSUV「G9L」を発表するとともに、「Car-as-a-Robot」という新たな概念を公表した※1)。
この概念は、Xpeng 董事長である何小鵬氏がこれまで提唱してきた「自動車はロボットである」という考え方を具体化したものである。自動車とロボットを別々の製品として捉えるのではなく、共通のAI基盤上で統合的に開発することを目指している点が特徴だ。
その方針の下、Xpengは自動車としてのAIDV(AIデファインドビークル)、ヒューマノイドロボット、ドローンを単一の技術体系として位置付け、開発を一体的に進める考えを示している。
こうした考え方は、従来の自動車メーカーが持つ産業観とは大きく異なる。従来は「自動車」が上位にあり、その一部として自動運転車が存在するという構図であった。しかしXpengは、最上位概念としてフィジカルAIを置き、その実装形態としてロボットが存在し、さらにロボットの一形態として自動車、ヒューマノイドロボット、ドローンを位置付けている。
言い換えれば、自動車は独立した製品カテゴリーではなく、AIによって駆動されるロボットの一種として再定義されているのである。ここに、従来の自動車産業とは異なる価値観の転換を見ることができる。
また、この考え方は自動運転技術だけに限定されるものではない。近年は生成AIや車載AIエージェントの進化により、自動車そのものが知能を持つことを前提とした開発が進みつつある。Xpengの考える次世代車両とは、高度な自動運転機能を実現するだけでなく、周囲の環境を認識/理解し、ユーザーとの対話や利用データを通じて継続的に機能を高度化していく存在である。
このように、Car-as-a-Robotとは、自動車をロボットというより大きな枠組みの中に位置付ける概念であり、自動車とロボットの境界を再定義する試みでもあろう。
今後10年でどのようなことが起こるのか
2030年代に向けて最も重要な問いの一つは、自動車とロボットの関係性がどのように変化するのかという点である。筆者は、これまで明確に区別してきた境界線が、2030年代後半には次第に薄れ、自動車とロボットが同一の技術的枠組みの中で捉えられるようになると考えている。
その兆候はすでに現れている。既存の自動車メーカーは、E2E方式をはじめとするAI技術の導入を進めることで、従来の自動車開発の枠を超え、ロボティクス領域へと足を踏み入れつつある。自動運転への取り組みに慎重であった日系自動車メーカーも、トヨタ自動車、日産自動車、ホンダが2027〜2028年にかけてE2E方式の自動運転技術搭載車の実用化を公表している。また、テスラの無人タクシー「サイバーキャブ」は、外見こそ自動車であるものの、その技術的本質は、環境を認識し、自律的に判断しながら移動するロボットと捉えることもできる。
こうした流れは、自動車メーカー自身の認識とは無関係に進行する可能性が高い。たとえ自らを自動車メーカーと位置付けたとしても、AIによる認識、判断、操作の機能を高度化するほど、その製品はロボットの基本構造に近づいていくからである。そして気が付けば、自動車産業はすでにロボティクス産業の一部となっていたという状況も十分に考えられる。
この変化がさらに進めば、自動車産業とロボティクス産業の区分そのものが意味を失うかもしれない。2030年代後半には、現在の「自動車産業」と「ロボティクス産業」という分類に代わり、「フィジカルAI産業」もしくは「AIプラットホーム産業」という新たな産業分類の下で、各種モビリティやロボットが捉えられるようになる可能性もある。
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