SynopsysとAnsysの技術統合が切り開く、AI時代の新たな設計/解析プロセス:Ansys Simulation World 2026 Japan(2/4 ページ)
アンシス・ジャパンは、年次イベント「Ansys Simulation World 2026 Japan」を開催した。基調講演と特別セッションでは、SynopsysとAnsysの技術統合によって進む半導体からシステム全体までを対象とした設計/解析環境の進化や、AIと物理シミュレーションを組み合わせたエンジニアリングの将来像を紹介。さらに、AIエージェントによる解析業務の効率化、デジタルツインやフィジカルAIへの取り組みなども披露された。
AIが提案し、物理シミュレーションが検証する
次にドーソン氏は、Synopsysが2026年9月30日(現地時間)に米国で開催した事業戦略説明会「2026 Investor Day」での発表内容に触れ、EDA、半導体IP、シミュレーションの各領域を横断する技術基盤の強みを強調した。
AIの普及によって研究開発投資がソフトウェアやITインフラなどのテクノロジーへと移行しつつあるとし、Amazonとの半導体IPに関する大規模契約や、OpenAIとの協業にも言及。こうした動きを踏まえ、デジタルAIやフィジカルAI、特定の用途に向けて設計された半導体がさまざまなシステムに組み込まれ、あらゆる場所にインテリジェンスが浸透する“Pervasive Intelligence”の時代について展望した。
その代表例の1つが、世界的に建設が進むデータセンターだ。現在、AIに必要な計算能力を確保するため、大規模な投資が行われている。ドーソン氏は、2030年までにデータセンターの整備に6兆7000億米ドルの投資が必要になるとの予測を示し、「半導体、システム、AIを一体的に設計する必要性が高まっている」と述べる。
こうした環境変化を踏まえ、ドーソン氏はSynopsysとAnsysのAI戦略を象徴する考え方として、“AI Proposes. Physics Validates.”を紹介した。これは、AIが解決策を提案し、その妥当性を物理法則に基づくシミュレーションで検証することで、確信を持ってエンジニアリングを進められるようにする考え方だ。その狙いは、シミュレーションによって開発プロセスのボトルネックを解消し、設計サイクルの短縮と物理的な試作回数の削減につなげることにある。
ドーソン氏は、顧客事例を基に、物理試作、仮想試作、AIによって高速化されたシミュレーションの比較例を提示した。従来の物理試作では20人以上のエンジニアが14カ月かけて1つの設計案を検討するのに対し、仮想試作では34人のエンジニアが1週間で20の設計案を検証できるという。さらに、AIを活用したサロゲートモデルによるシミュレーションでは、1人のエンジニアが10分間で2000もの設計案を評価できるとした。
ドーソン氏は「これこそがサロゲートモデルの力であり、AIによって高速化されたシミュレーションの力だ」と強調した。こうした技術を活用してシミュレーションを開発プロセスの初期段階へと移行させることで、開発期間やコスト削減を目指す。
サロゲートモデルをはじめとするAI技術やシミュレーションの活用は、実際の開発現場でも成果を上げているという。講演では、その事例として、Ferrariによるヘッドランプ開発での実物を用いた開発の反復回数80%削減や、Cumminsによる開発サイクルの短縮、Grundfosにおける数百人規模のエンジニアへのシミュレーション活用の拡大などが挙げられた。
AIとデジタルツインで液体の挙動を再現、解析時間を数時間から数分へ
続いてドーソン氏は、ドイツの機械メーカーKronesの取り組みを紹介した。Kronesは、飲料などのボトル製造や充填(じゅうてん)に関わる設備を手掛けている。同社では、工場や設備の設計において、液体の揺れや流れを把握するスロッシングシミュレーションが重要となる。従来、この解析には設計の反復1回当たり3〜4時間を要していたが、AIと高速な計算環境を活用することで、数分にまで短縮したという。
この取り組みには、Ansys、CADFEM、Microsoft、NVIDIA、SoftServeが関わっているとのことだ。AIを活用した流体シミュレーションとデジタルツインを組み合わせ、飲料充填工程における液体の速度、圧力、流れ、乱流などの挙動をデジタル上で再現する。
このデジタルツインには、「NVIDIA Omniverse」やクラウド基盤「Microsoft Azure」「OpenUSD」のライブラリなどを活用して実現された。物理法則に基づくモデルで液体の挙動を再現し、設備の状態把握や継続的な最適化につなげている。これにより、設備の立ち上げ時間の短縮、生産効率の改善、水の使用量削減、設備の設定や構成の最適化などを目指す。
ドーソン氏は「Kronesの課題解決を支援できたのは、同社が私たちに具体的な課題を示してくれたからだ」と振り返った。その上で「皆さんが抱える最も難しい課題を、ぜひ私たちに相談してほしい。私たちには、以前よりも幅広い製品ポートフォリオと新たな技術がある」と呼び掛け、基調講演を締めくくった。
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