「ひげそりは洗面台」を変えた、パナソニックの“小さいシェーバー”ヒットの理由:小寺信良が見た革新製品の舞台裏(42)(4/5 ページ)
ひげそりの場所や時間、求められる価値が変わる中、日常使いの小型シェーバーという新市場を切り開いたのがパナソニックの「ラムダッシュ パームイン」だ。大ヒットを生んだ発想と、それを支える小型化技術や設計の工夫など、舞台裏を小寺信良氏が伝える。
機能は増えたのになぜ大きくならないのか
小寺 今回の新製品は、6枚刃になっただけでなくワイヤレス充電にも対応しましたよね。機能は増えているのにサイズはほとんど変わっていません。もともと隙間があったとは考えられないんですが、どうやっているんですか。
永島氏 今回の大きなポイントとしてワイヤレス充電機能の搭載があるんですが、もちろんコイルが増えるので搭載部品は大きくなります。ここに断面があるんですけど、単純にこの部品部分が増えるわけです(下の写真の赤枠)。でもこれに合わせて本体を長くしてしまうと、せっかくのサイズ感が保てません。
そこで、防水構造を見直しました。ラムダッシュ パームインはもともと二重の防水構造になってました。中に一重の防水があって、その上を完全に覆うように外装があったんですね。それを今回、底板の部分を取ることで、防水性能を保ちつつコイルを入れられるようにしました。そのために底部を削らないといけなかったんですが、これを削るのも大変でした。
小寺 削り出しとかでコストが上がっている一方で、(価格レンジを保つためには)どこかでコストダウンしていかないといけないと思いますが、部品の共通化なども意識されたんでしょうか。
永島氏 基本思想は同じで共用できるものはしていこうという考えはもちろんあります。ただ、それも、新たな制約がある中で性能や機能の面で100点を目指していくと、オリジナル化しなきゃいけない部分は出てきます。
例えば、スティック型の5枚刃だと、刃の下にバネを入れているんですよ。このバネで上に押し上げているから、刃にテンションがかかった状態になります。これがないと、ひげをそっている時に、ビビっているような音がしちゃうんですね。
同じ仕組みをラムダッシュ パームインでは入れられないので、小さいゴムの突起を入れて、そのゴムの反力で押し上げていました。ただ、それを6枚刃でやろうとすると、このゴムを追加で入れるとコストがかかったり、組み立て工数がかかったりするので難しいということになり「どうしよう」と頭を悩ませました。
そこで、防水機能を担っていたゴムのパッキン部分に2つの役割を担わせるようにしました。その一部を伸ばして、上部に出るようにしたんです。これを一体成形でできるようにしたので、今までだったら8部品が必要だったのが、1部品でできるようになりました。こんな感じで、独自で工夫したところをたくさん入れています。
小寺 なるほど。こんなに小さいゴム部品だと埋め込みだと取れたりしそうですもんね。でも下でつながってるから取れないんですね。
永島氏 そうなんです。他にも部品点数を減らす工夫としては、充電状態のお知らせ機能があります。充電容量が少なくなると、ピピッという音でお知らせしてくれる機能があるんですが、スピーカーを入れるとそこの防水が弱くなりますし、完全防水にすると外に音が出なくなります。そこで、専用の部品を入れずにリニアモーターを使って、その振動周波数でピピッという音を出しています。追加コストなく、制御だけで音を出しているんですが、実は社内でもあんまり知られていない工夫です。
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