「ひげそりは洗面台」を変えた、パナソニックの“小さいシェーバー”ヒットの理由:小寺信良が見た革新製品の舞台裏(42)(2/5 ページ)
ひげそりの場所や時間、求められる価値が変わる中、日常使いの小型シェーバーという新市場を切り開いたのがパナソニックの「ラムダッシュ パームイン」だ。大ヒットを生んだ発想と、それを支える小型化技術や設計の工夫など、舞台裏を小寺信良氏が伝える。
シリーズ初の金属ボディーを採用、洗浄器も刷新
小寺 新製品は6枚刃に進化というところもあるんですが、シリーズ初の金属ボディーを採用しました。なぜここにトライされたのでしょうか。
田中氏 ラムダッシュ パームインの当初のコンセプトでもあるのですが、ひげをそるという目的に加えて、持つ喜びを作りたいという思いがあり、そういう意味でチャレンジしました。
本体のボディーを金属のアルミニウムから1台ずつ削り出すため、1個ボディーを作るのに約1時間かかります。量産品ではあるんですけど、この一つ一つのモノづくりですごく手をかけたものになっています。本体をお持ちいただくと、最初ひんやりし、触っているうちに徐々にぬくもりに変わっていくところがあり、そういうところもこだわったところです。
また、シェービング前後の時間をより楽しんでいただきたいと考え、今回新しく置くだけで充電できるワイヤレス充電機能を採用しました。また、ラムダッシュ パームイン専用の新しい洗浄器も新開発しました。
小寺氏 洗浄器付きタイプは、ランニングコストが気になるんですよね。専用カートリッジの単価が高くて、清潔ではあるんだけど、どんどんお金が飛ぶみたいな印象もあります。
田中氏 この商品は専用パウチに入った洗浄液を希釈して使うというスタイルなので、比較的ランニングコストは安い方だと思います。アルコールではなくせっけんに近い形のものなので、蒸発してしまうことも少ないです。一般にご購入いただけるのが3パック入りになると思いますが、こちらは希望小売価格1100円になっています。
小寺 1袋当たり約20日として、1カ月550円ぐらいだと、それはかなり安いですね。洗浄器の形状も生活空間になじむ形状です。
田中氏 従来の洗浄器はかなり武骨だったんですが、独自の存在感があまり出すぎないようにするところにこだわりました。シェーバーを入れて、充電や洗浄の際に蓋が閉まる構造にしました。洗面台に置いても、リビングに置いても、しっかり生活空間になじむ新しい形を作り出せました。
永島氏 実際には、洗浄器の設計には非常に苦労しました。シェーバーの洗浄器の形状は10年以上変わっていませんでしたが、ラムダッシュ パームインに合う形で、生活空間になじませることを考えると、一から考え直す必要がありました。
洗浄器は水のポンプやヒーター、ファンなど基本的な構成は変わりません。また、主要な機能部品は性能面や信頼性の面から変更したくありませんでした。その中でワイヤレス充電できる仕組みを入れるなど、新たな要素を加えつつ、ラムダッシュ パームインのイメージに合うラウンド感やサイズ感を実現するのが大変でした。シミュレーションでは問題ないはずなのに、洗浄試験では正しい場所に水が当たらず、水路の調整をしたり、構成を変更したりすることを繰り返しました。
小寺 所有感の対象になったという感じがありますよね。昔はシェーバーはわざわざ自慢するものでもなかったじゃないですか。
田中氏 その点で面白いエピソードを紹介すると、女性の方が男性にプレゼントするケースが増えています。シェーバーは普通男性が買うもので、女性だと何がいいのかが分からない商品だったと思うんですが、デザインが可愛いとかも含めて紹介したくなるところがあるんだと思うんです。その点ではすごくいいものが出せたかなという気がします。
池田氏 金属削り出しのモデルもそうなんですが、海水由来のミネラル成分から生まれた三井化学さんの複合材料「NAGORI」を採用したモデルなども用意しています。白黒のマーブル調模様のタイプも同じく6枚刃で出しています。「NAGORI」は海洋ミネラルから抽出した素材を使っているので、環境に優しいというところと、見た目が石っぽいのが特徴です。同じモデルを並べても、模様が微妙に違うみたいな面白さがあったりもして、家電では新しい取り組みも行っています。
シェーバーの使う場所やスタイルが大きく変化
小寺 コンセントで充電するタイプだと、洗面台ではコンセントの取り合いになるじゃないですか。でもこちらはUSB充電です。充電に対するアプローチも変わってきているということなんでしょうか。
田中氏 USB-C充電は、初期に発売した5枚刃から対応しています。ただ外側の蓋を開けてつなぐような動作がかなりノイズだったところもあるので、今回の6枚刃についてはマグネットでくっつくタイプの端子になっています。
田中氏 シェーバーを使う場所や時間、シーンが、変わっているなというのは、すごく感じていましたね。今までのシェーバーだと朝、もしくは夜寝る前に洗面台か、風呂の中かで使う使われ方やシーンが研究されていましたけど、例えば商談の前に車の中でそるとか、リモート会議する方はその直前にそるような話を伺っています。
池田氏 営業の方だと、商談の前に歩きながらそるとか、そういう方もいらっしゃいました。
小寺 今そんな「エクストリームひげそり」みたいなことになってるんですか! もうそういう時代に変わったってことなんですね。
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