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「つながる製品」の時代に、なぜファジングが重要なのか:武田一城の「製品セキュリティ」進化論(9)(2/2 ページ)

近年「製品セキュリティ」と呼ばれ始めたセキュリティの新分野に関する事象を紹介し考察する本連載。今回も前回に続き「ファジング」がテーマとなる。近年の「つながる製品」によって増加している想定外データのリスクと、ファジングが品質、安全、セキュリティをつなぐテストとして重要になっている理由を説明する。

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現実的な解決策としてのファジング

 製品においてセキュリティを含む品質を確保するためには、完成の最終段階で一度だけファジングを実施すればよいというものではない。設計段階で入力経路を洗い出し、通信仕様やデータ形式を整理し、モジュール単体、ECU単体、システム統合、実機環境といったテストの段階ごとに適切なファジングを行うことが望ましい。

 早い段階で問題を見つければ修正コストは小さくなる。出荷後のリコールや緊急対応に比べれば、開発中に弱点を発見する方が、はるかに少ないリソースで対応が可能で合理的である。これは、先述したシフトレフトの基本的な考え方でもある。

 このように書くと、ファジングが「魔法のつえ」のように感じる方もいるかもしれない。しかし、当然のことながら、ファジングが全ての製品セキュリティに関する問題を解決できるわけではない。製品をセキュアにするには「脅威分析」「セキュア設計」「認証」「暗号鍵管理」「アクセス制御」「ログ」「アップデートの仕組み」「コードレビュー」「サプライチェーン管理」なども複合的に考慮する必要がある。

 このように課題を挙げていくと、膨大な項目に対応しなければならないことに気付く。それでも、多数の入力経路を持つ製品において、入力データに対する堅牢(けんろう)性を確認する手段として、ファジングというテスト手法は極めて実践的で現実的な解決策となる。

これからの製造業に求められる製品セキュリティの基本

 これからの製造業では、「つながる製品」が当たり前になる。つながる製品は、非常に利便性が高いが、その一方で、外部からデータの入出力を行うこと自体が大きなリスクとなる製品でもある。入力を受ける以上、「壊れたデータ」「想定外のデータ」「悪意あるデータ」にさらされる可能性は避けられない。

 繰り返しになるが、製造業が守るべきものは、情報資産だけではない。「製品の安全」「利用者の信頼」「現場の稼働」「企業ブランドそのもの」などがそれに当たる。ファジングは決して古い技術ではなく、製品が機械だけでなくソフトウェアで動くことが当たり前になった現在、製造業が製品セキュリティを現実的に高めるための基礎技術の一つとなった。

 製品を市場に出す前に、自社の手で多種多様な入力による製品の動作を確認する。特定の条件下でどのように壊れるか、どこで止まるか、どのように復帰するかを見つける。そして、そのような現象が利用者の環境で起こらないように事前に弱点を修正する。この姿勢を続けることこそが、これからの製造業に求められる製品セキュリティの基本である。

 とはいうものの、世界に冠たる品質を誇る日本の製造業は、何十年も前にこれを成し遂げてきた。これまで出荷してきた製品の品質の高さは、すでに世界的に評価されている。しかし、その品質を支えてきた技術は、主に機械によるモノづくりの世界を中心としていた。

 市場では、ソフトウェアを搭載したデジタル製品の割合が急速に大きくなっている。今後、従来のハードウェアだけでなく、ソフトウェア分野においても高い品質を提供し続けられるかどうかは、異常入力に対する堅牢性をどこまで確認できるかに懸かっているといっても過言ではないだろう。それを実現するためにファジングというテスト手法が重要であり、筆者としては、この分野においてこれ以上の対策を知らない。

 セキュリティに古くから携わる人にとって、ちょっぴり懐かしいと感じてしまうファジングは、実はこのように製品セキュリティの分野でこそ威力を発揮するものであった。ファジングは製品セキュリティ分野において、不可欠な対策となっていたのである。

著者プロフィール

武田一城(たけだ かずしろ) 株式会社ベリサーブ

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1974年千葉県生まれ。セキュリティ分野のマーケティングスペシャリスト。次世代ファイアウォールをはじめ、さまざまな新規事業の立ち上げに従事。セキュリティに限らず、IT全般の動向にも詳しく、インターネットや書籍の執筆実績が多数あり。NPO法人日本PostgreSQLユーザ会理事。日本ネットワークセキュリティ協会(JNSA)のワーキンググループや情報処理推進機構(IPA)の委員会活動、各種シンポジウムや研究会、勉強会での講演をはじめ製品セキュリティの啓発に向け精力的に活動している。


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