空前のAIブーム!「猫も杓子もAI」な現状は今後も続くのか?【前編】:武田一城の「製品セキュリティ」進化論(5)(1/2 ページ)
近年「製品セキュリティ」と呼ばれ始めたセキュリティの新分野に関する事象を紹介し考察する本連載。今回は、連載テーマである「製品セキュリティ」から多少は逸脱するが、IT革命以来の世界を革新するものと世論に目されているAIのこれまでと今後について述べる。
ChatGPTの衝撃的な登場以降、世界はいまだかつてない「知の競争」に沸き立っている。さまざまな業種業態の企業が、あらゆるビジネスシーンでこの生成AI(人工知能)を使いこなし、圧倒的な優位性を築こうと競い合っている。それらの主導権を巡る「大騒ぎ」の様相は、もはや一時的なブームとしての「バズワード」を完全に超え、社会の構造を根底から書き換え始めたと言っても過言ではないだろう。
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この大きなうねりは、「単なる技術の進化」だと片付けられるレベルを超越している。四半世紀以上も前の1990年代、インターネットでつなげることで世界の価値観を一変させた「IT革命」の衝撃があった。現在のAIによる奔流は、それ以来の最大級の地殻変動――あるいはそれ以上の、人類史に残る変革の始まりかもしれない。
かつての蒸気機関が人間を肉体労働から、インターネットが距離の壁から私たちを解放したように、生成AIは人間の「知識」はもちろん「知能」をも拡張し、加速させ始めている。そして、その対象は資料作成やリサーチといった既存の業務効率化にとどまらない。新たなビジネスチャンスや創造性を次々と生み出すその力は、まさにゲームチェンジャーと呼ぶにふさわしい。
現代は、もはや「AIをどう使うか」ではなく、「AIと共にどう生きるか」が問われる時代と言っていいだろう。この巨大な波を乗りこなし、未来の覇者となるか、あるいは旧時代の遺構に取り残されるか。われわれは今、まさに歴史の分岐点に立ち、新たなデジタルフロンティアへとこぎ出そうとしているのである。
2026年のAIを巡る現状を、数多くの美辞麗句を駆使してできる限り称賛しようと、筆者の語彙(ごい)力の限界を使って試してみた。それでも、この内容はおおむね筆者の感想と変わらない。AIはそれほどの可能性を秘めている。
考えてみれば、1990年代半ばのIT革命の時期にも同様に「ITを称賛する美辞麗句」がWebや新聞、雑誌などにあふれていた。筆者はその頃は純粋無垢(むく)な学生だったこともあり、この内容をかなりうのみにしてしまい、うっかりIT業界に入ってしまい現在に至る。この意思決定の是非は、まだ筆者の中でも結論は出ていないが、気が付けばよわい50を超えるIT業界の大ベテランになってしまった。
今回は、IT革命から今までの筆者の「30年+αの経験値」を基に、IT革命以来の世界を革新するものと世論に目されているAI(主に生成AIやAIエージェントなど)のこれまでと今後について述べる。連載テーマである「製品セキュリティ」から多少は逸脱するが、セキュリティとAIは現時点ではそうでもないが、将来的には密接に関係してくる可能性が高い事柄であるので、ご容赦いただきたい。
今回は何度目のAIブームになるのか?
「AIの歴史は、人間の知能を機械で再現しようとする挑戦の歴史である」と言うのは、さすがに少々格好を付け過ぎかもしれない。それでも、現在のChatGPTなどが巻き起こしている熱狂は、過去のAIブームの延長線上にありながら、その破壊力において過去のそれとは一線を画すものだと思われる。
実は、現在のAIブームは史上初のAIブームというわけではない。現在のAIブームは、「3.5期または4期のどちらか」というのが政府(総務省、厚生労働省、文部科学省など)の資料を見る限り、妥当な見解だと思われる。まずは、この過去から現在に至るAIブームの経緯について述べたい。
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