原価の「見える化」はなぜ半年で形骸化するのか 犯人は機能不足ではなく「転記」:受託加工業に必要な原価管理(3/4 ページ)
自社の原価を把握するため、高機能なシステムの導入や精緻なExcelフォーマットの作成など、さまざまな方法で見える化を進めても、その多くが半年ほどで形骸化してしまうのはなぜでしょうか。その原因は「転記」にあります。本稿では受託加工業にフォーカスし、「案件別の原価」が見えない構造と、転記をなくす「3つの設計原則」を解説します。
発想を変える:転記をなくす3つの設計原則
この問いを解くためには、ツール選定ではなく「設計」が重要になってきます。自作のExcelフォーマットや市販のシステムでも、下記の3つを満たすかどうかで結果が分かれることになります(図3)。
1)見積もりと実績を同じ器で扱う
見積もりを作った構成(品目/単価/工数)を、そのまま実績入力の枠として使い回し、過去案件の複製で新規案件を起こすことができれば、転記の起点そのものが消えます。見積もりはExcelで、実績は別台帳でという分離こそが、転記を生む元凶です。Excelなら、見積シートの品目/工数の行を、そのまま実績記入の列にコピーせず横に並べます。「見積」列の隣に「実績」列を置くだけで、器は1つになります。
2)入力を原価に自動で変換する
材料は品目マスタの標準単価で、工数は「作業時間×作業者の単価」で機械的に金額化します。そして、現場は事実(数量と時間)だけを入力し、“金額化は仕組みの仕事”と役割を分けます。Excelなら、数量と時間だけ入力させ、金額セルは全て単価マスタ参照の数式にします。この際に手入力の金額セルを1つ残らず消すことが要点となります。
3)入力する人と、経営数値を見る人を分ける
作業者の画面に受注金額や粗利を出さないようにします。「入力したら自分の働きを査定される」と現場が身構えた瞬間、データは欠け始めます。心理的な安全は、続く仕組みの一部です。Excelの場合は、作業者が触るシートと集計シートを分類し、集計側は保護をして金額列を見せない。これだけでも入力者の心理は変わります。
なお筆者は、この設計思想で中小受託加工業向けの原価管理システムを開発/提供している立場です。ただし上記の3原則は特定の製品に依存しません。手元のExcelフォーマットをこの3つを満たす方向に直すだけでも、定着率は変わります。
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