最軽量の「WHILL」を帝人のカーボン素材が実現、ほれ込んだ点とは……:材料技術(1/2 ページ)
持ち運べるモビリティがさらに進化した。WHILLシリーズの新型「WHILL Model C Lite」は、帝人と共同開発した熱可塑性炭素繊維複合材料をフレームに採用。軽さとタフな耐久性を両立し、シリーズ最軽量の18.6kgを達成した。
WHILLは2026年9月3日、東京都内で記者会見を開催し、カーボン素材を採用した近距離モビリティ「WHILL Model C Lite」を同日に発売すると発表した。航空機や医療機器部品、スポーツ用品などで幅広く利用されるカーボン素材を採用することで、WHILLシリーズで最軽量を実現しつつ、フラグシップモデルから継承されたオムニホイールによる走破性などを備えた、電動車椅子規格のモビリティとしては世界初のプロダクトだという。
帝人のカーボン材料を採用したワケとは?
団塊の世代が75歳以上となった2025年以降、地方を中心に移動が課題となるケースが増えている他、高齢化率は2040年に約35%に上昇すると試算されている。さらに、500m以上歩くことにつらさや困難さを抱える65歳以上の人口は1200万人を超えるとも推計されている。
また、寿命の延伸とライフスタイルの多様化を背景に「人生100年時代」における自分らしい生き方への意識は高まっており、医療/介護分野での予防/自立支援重視のサポートへの転換や高年齢者雇用の拡大、自動運転/AI(人工知能)などの先進技術による身体機能の補完など、シニア世代の社会参画を後押しする動きも加速している。
一方、WHILLは創業以来、「すべての人の移動を楽しくスマートにする」ことを目標に掲げ、ニーズや利用シーンに応じた近距離移動を支える製品とサービスを提供してきた。しかし、移動スタイルの多様化が進む中、フラグシップの「WHILL Model C2」や折りたためる「WHILL Model F」ではカバーしきれない要望を寄せられるようになった。
同社の調べによれば、「もっと軽く楽に持ち運びたい」「身体に制約があっても簡単に折りたたみたい」「コンパクトさは維持しても悪路も気兼ねなく走りたい」「安定感は保ちつつ省スペースで保管したい」との声に加え、ユーザーの94%が「WHILLを車載して出かけたい」という意見が寄せられている。
そこで同社はWHILL Model C Liteを開発した。最大の特徴は、軽さと強度を両立させたカーボン素材をフレームに採用することで、バッテリーなしの本体重量で18.6kg(従来比22.5%減)を達成した点だ。加えて、帝人製の炭素繊維複合材料「Sereebo(セリーボ) P」を一部に採用することで、優れた成形性を実現し、形状設計自由度を高めた。これにより、軽さと剛性を担保した上で、WHILLらしいデザインを具現化している。
帝人 炭素繊維事業本部 複合成形材料事業事業部門長の八木穣氏は「WHILLがWHILL Model C Liteで独創的なデザインを実現するに当たり、『単に強くて軽いのは当たり前で、非常に壊れにくくて、かつ複雑な部品を作りたい』という要望を当社はいただいた。そこで、自動車の構造材に使える熱可塑性炭素繊維複合材料『Sereebo』の技術を最大限に活用し、Sereebo Pを開発して、採用してもらった。WHILLが掲げた非常に高い設計要件を満足するために、当社は炭素繊維の持つ力を最大限に発揮できるような材料設計に取り組んだ。また、非常に複雑部品形状を実現するに当たり、WHILL様の設計チームと緊密なコミュニケーションを取りながら、素材と設計の両面から開発に挑んだ」と話す。
続けて、「使用した炭素繊維は100%リサイクル品だ。帝人は、『Pioneering solutions together for a healthy planet』をパーパスとして掲げており、『より良い生活を顧客とともに実現するためにチャレンジする』、そんな思いを込めている。今回のWHILL Model C Liteは、まさに当社がやりたいことと合致しており、より良い社会の実現に向けた革新的な製品をWHILLとともに開発できた」と補足した。
WHILL 最高開発責任者(CDO)の内藤淳平氏は「日本は優れた炭素繊維を展開する複数の素材メーカーが存在する。その中で、帝人と手を組んだ要因には、『タイミングが合った点』『材料に対して強い開発力を持っていた点』『当社の開発スタイルに寄り添ってもらえる姿勢を見せた点』がある。Sereeboは自動車を中心にさまざまな製品で採用実績を積み上げている製品であるにもかかわらず、当社のためにカスタマイズに対応してもらった。このように、当社の熱意に応えてもらえ、一緒に開発することになった。また、Sereeboは成形性や強度に優れるため、そこにほれ込み、採用した」と決め手を述べた。
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