国産ヒューマノイドへ、日本精工が「世界一のカレー屋」目指すアトムから得るもの:FAニュース(1/2 ページ)
日本精工とスタートアップのアトムが、国産ヒューマノイドの開発に関するMOUを締結。両社のトップが、提携の狙いや今後のロードマップなどを語った。なぜアトムが自社の開発戦略を「世界一のカレー屋」に例えるのか、日本精工はこの提携で何を得ようとしているのか。会見の模様から真意をひもとく。
日本精工(NSK)とアトムは2026年8月26日、東京都内で記者会見を開き、両社が結んだ戦略的パートナーシップに関する基本合意書(MOU)に関して、日本精工 代表執行役社長 CEOの市井明俊氏とアトム 代表取締役 CEOの青木俊介氏が出席して今後のロードマップなどを語った。
出力に応じたヒューマノイド向けアクチュエーターを共同開発
日本精工とアトムが結んだのは、国産ヒューマノイドAI(人工知能)ロボットの開発/実装に向けたMOUだ。アトムは2025年に設立されたスタートアップで、双腕二足のヒューマノイドの機体とフィジカルAI基盤モデルの開発に取り組んでいる。ヒューマノイドは、製造現場をはじめとする幅広い産業の人手不足を解決する切り札としても期待されている。かつては、「ASIMO」などで日本がリードしていた領域だが、今では中国や米国が開発を先行している。
青木氏は今回の提携に関して「日本精工が持つ部品、ハードウェアの開発力とアトムが持つロボット、ソフトウェアの開発力を融合させ、世界レベルのヒューマノイドを開発したい」と意気込み、市井氏は「AIだけではロボットは動かない。理想の動きを実現するためには、AIの意図を正確に把握し、滑らかかつしなやかに体現する、精密機械部品が必要になる。われわれの製品は、フィジカルAIによる動きの実現に欠かすことができない重要なパズルのピースになる」と期待する。
青木氏は自社の戦略をカレー屋に例える。カレー屋は作りたいカレーの味を実現するために、最適な材料を選び、調理する。ただ、自分たちで材料になる野菜や家畜を育てるわけではない。ヒューマノイドの開発においても同じように、国内で実績のある部品メーカーと協力しながら、「世界一のカレー屋になる」(青木氏)ことを目指す。
市井氏は「長年培ってきたトライボロジー技術を生かして、部品レベルでの摩擦や動作特性を高精度に予測しながら、AIが求める動きを安定して再現できる機械ユニットの開発に取り組む。今後、ヒューマノイドの実装、量産において重要な技術になると考えている」と語った。
具体的に今回のMOUでは、ヒューマノイド向けアクチュエーターの共同検証と、NSKの製造現場を活用したフィジカルAIデータの共同収集に取り組む。日本精工が軸受や直動部品、モーターなどを組み合わせたアクチュエーターを開発し、アトムのヒューマノイドに搭載して検証する。
アトムが開発を進めるヒューマノイドは、可搬重量が片手で15kg、両手で30kgとなっており、重量物を扱うことが多い製造現場を意識している。30個前後のアクチュエーターが搭載される見込みで、ロータリーアクチュエーターとリニアアクチュエーターを組み合わせて使用する。既に製造業、物流業を中心に約100台の「購入意向表明」を獲得しているとする。
市井氏は「基本的な構想としては、出力に応じて大、中、小といった3つくらいのバージョンのアクチュエーターが必要になるのではないかと考えている。それらのラインアップが年内にそろい、2027年になれば実装が進められるのではないかと期待している。ヒューマノイドに実装して、データ検証までしっかりできるようなアクチュエーターに仕上げていく」と話す。
一方、青木氏は「実は、われわれの創業当初から日本精工と一緒になって試作を進めてきた。“これほど日本精工が前のめりになってくれるのか”と感じるくらいのスピード感で進めることができている」と語る。
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