ステンレス鋼の基礎知識:鉄鋼材料の基礎知識(13)(2/3 ページ)
今なお工業材料の中心的な存在であり、幅広い用途で利用されている「鉄鋼材料」について一から解説する本連載。第13回は、ステンレス鋼について説明する。
ステンレス鋼のプロセス
ステンレス鋼のプロセスは、原料を溶かして鋼を作る「製鋼工程」、溶けた鋼を冷やし固める「鋳造工程」、鋼を塑性加工で鍛える「熱間加工工程」、鋼に機械加工や熱処理などを施す「二次加工工程」に大きく分けることができます。プロセスの全体像を図5に示します。
他の特殊鋼のプロセスと比べると、ステンレス鋼は製鋼工程に特色があります。よって、ここでは製鋼工程の詳細を説明します。他の工程の詳細については連載第4回をご参照ください。
製鋼工程では、まずステンレス鋼の原料となる鉄スクラップ、フェロクロム、フェロニッケルなどを電気炉で溶解していきます。溶解してできた鋼には炭素が多く含まれるため、「脱炭(だったん:鋼中の炭素を除去する操作)」を行います。そして低いレベルにまで炭素含有率を下げていきます。
脱炭の方法は、通常の鋼では「吹錬(すいれん)」と呼ばれる精錬法が取られます。これは、溶鋼に対して酸素ガスを吹き付けて脱炭する方法です。吹き付けられた酸素ガスは溶鋼中の炭素と反応し、一酸化炭素ガスとなって浮上し、鋼の外に出ていきます。
ステンレス鋼の場合は吹錬を行うと、図6に示すように、炭素よりもクロムが優先的に酸化してしまいます。これにより脱炭が十分に進まず、クロムの損失が起こります。そこでステンレス鋼では「AOD」や「VOD」などの、クロムの酸化を抑制しつつ脱炭を行う精錬法が適用されます。
AODは「Argon Oxygen Decarburization」の略語で、日本語では「アルゴン酸素脱炭法」と呼ばれます。AODでは、取鍋(とりべ)の底からアルゴンガスと酸素ガスの混合ガスを溶鋼中に吹き込みます。アルゴンガスによって溶鋼が撹拌(かくはん)されるのと同時にCO分圧が下がるため、脱炭が進んで低炭素のステンレス鋼を製造できます。
VODは「Vaccum Oxygen Decarburization」の略語で、日本語では「真空酸素脱炭法」と呼ばれます。VODでは取鍋を真空槽の中に入れ、真空排気しながら溶鋼に酸素を吹き付けます。これによって溶鋼中のCO分圧が下がり、脱炭が進みます。取鍋の底からアルゴンガスの吹き込みも行われるため、溶鋼が撹拌され、効率的に脱炭することが可能です。ステンレス鋼はこれらの精錬法を適用して製造されます。
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