鉄鋼材料の製造プロセス:鉄鋼材料の基礎知識(4)(1/3 ページ)
今なお工業材料の中心的な存在であり、幅広い用途で利用されている「鉄鋼材料」について一から解説する本連載。第4回は、鉄鋼材料の製造プロセスについて説明する。
連載第3回では、鉄鋼材料の種類や成分について説明しました。鉄鋼材料には「純鉄(じゅんてつ)」「鋼(はがね)」「鋳鉄(ちゅうてつ)」などの種類があり、主要な鉄鋼材料である鋼は基本的な成分として「炭素、ケイ素、マンガン、リン、硫黄」を含有していることを説明しました。
実用的な形状に加工された鋼のことを「鋼材(こうざい)」といいますが、今回は鋼材を例に、鉄鋼材料の製造プロセスを説明します。前半では、代表的な製鉄法である「高炉法(こうろほう)」による製造プロセスを説明します。後半では、地球環境に優しい製鉄法として近年注目が集まっている「電炉法(でんろほう)」による製造プロセスを説明します。どのような原料が使われているかや、どのようにして成分が調整されているかなどに注目してみてください。
高炉法による製造プロセス
鋼材の製造プロセスをおおまかに説明すると、
- (1)原料から鉄を取り出す
- (2)鉄から不純物を取り除き、成分を調整して鋼にする
- (3)鋼を冷やし固めて成形する
となります。これらのプロセスは、実際には図1に示すように複数の工程に分けて行われます。ここで説明する高炉法では、原料の装入から鋼材の製造/完成まで、プロセスが途切れることなく一貫して行われるため、「銑鋼一貫(せんこういっかん)プロセス」と呼ばれます。
以下では、各工程の内容を詳しく説明します。
製銑(せいせん)
「製銑」は、原料から鉄を取り出す工程です。「銑鉄(せんてつ)」と呼ばれる粗い鉄を作る工程となるため、製銑と呼ばれます。原料には、鉄の天然資源である「鉄鉱石(てっこうせき)」が用いられます。鉄鉱石は、その中身のほとんどが酸化鉄(Fe2O3、Fe3O4など)であり、鉄と酸素が強固に化学結合した状態になっています。
つまりこの工程では、鉄と結合した酸素を除去する操作を行っていきます。結合した酸素を除去するには、鉄よりも酸素との親和性が高い物質と反応させ、鉄鉱石を鉄に“還元”する必要があります。そこで使用される装置が「高炉(こうろ)」です。高炉は筒状の大きな炉で、1日に1万トンの銑鉄を製造できる巨大な装置です。背丈があり、製鉄所のシンボルともなっています。
製銑では、鉄鉱石を還元するための材料として「コークス」を使用します。コークスは石炭を蒸し焼きにしたもので、いわば炭素(C)の塊です。鉄鉱石の還元に必要不可欠な材料であり、鉄鉱石と交互に高炉内へ入れていきます。そして、高炉の下部から約1200℃の熱風と微粉炭を送り込み、反応させていきます。このとき起こる反応を式にすると、図2のようになります。
反応初期では、熱風中の酸素(O2)がコークス(C)と反応し、一酸化炭素(CO)を生成します。生成した一酸化炭素は高炉内を上昇していき、鉄鉱石と接触して還元反応を起こし、鉄鉱石から酸素を奪っていきます。この還元反応は、鉄鉱石とコークスとの直接的な反応ではなく、一酸化炭素を介した反応であるため、“間接還元反応”となります。このときの高炉内の温度は、約2000℃にも達します。
こうして還元された鉄鉱石は、高炉下部に溶け落ちていきます。落下過程では、さらにコークスの炭素分と反応し、完全な鉄に還元されていきます(直接還元反応)。最終的には、高炉の下部から溶銑(ようせん:溶けた銑鉄のこと)が取り出されます。溶銑は、次の「溶銑予備処理」で鋼を作るための前処理がなされます。
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![図2 高炉内で起こる反応プロセス[参考文献1]](https://image.itmedia.co.jp/mn/articles/2511/05/kn20251105tekkou2.png)