「必要とされるモノづくり」を次の世代へ 未来は予測するものではなくつくるもの:必要とされるモノづくりの追求(6)(3/3 ページ)
連載「必要とされるモノづくりの追求」では、研究開発と実際の現場/ユーザーとの間に生じるギャップを整理しながら、技術の価値をどこに置くべきかを問い直し、必要とされるモノづくりの在り方を考察する。最終回となる第6回では、学生や企業、自治体、地域との連携を通じて、「必要とされるモノづくり」を次の世代へつないでいくための取り組みを紹介する。
小学生の想像力を大学と企業の技術で形にする
未来イノベーションプロジェクトから生まれたつながりの1つが、相模原市立橋本小学校との連携です。2026年4月、橋本小学校の4年生と伊丹研究室の学生たちによるロボット交流イベントを開催しました。橋本小学校の児童、大学生、企業、自治体などが一緒になって、「伝説のロボット」を製作するプロジェクトです。
まず、小学生が自由な発想でロボットをデザインし、学年内の選挙によって1つの案を選びました。そのデザインを基に、伊丹研究室の学生が設計を行い、地元企業であるモールドテックの3Dプリント技術によって形にしました。
こうして完成したロボットが、「はしもふ」です。
同年6月には、橋本小学校で完成お披露目会を開催しました。小学生の想像力、大学生の設計/モノづくりの力、企業の技術、自治体や地域の協力が組み合わさり、1つのロボットが誕生しました。この取り組みは、新聞各社にも取り上げていただきました。
さらに、はしもふは学校内で完成して終わるのではなく、同年8月7〜9日に開催された「第74回橋本七夕まつり」にも出展しました。地域の子どもたちが考えたロボットが、大学や企業の協力によって形となり、地域のお祭りで多くの人と出会いました。このプロジェクトは、「必要とされるモノづくり」の1つの形ではないかと思います。
小学生が自由に未来を想像し、大学生がそれを実現する方法を考え、企業が技術で支え、自治体や地域が発表する場をつくりました。
誰か1人が未来をつくるのではなく、異なる世代や立場の人たちが、それぞれの力を持ち寄って一緒につくる。その過程自体に、大きな意味があると感じています。
必要とされるモノづくりを次の世代へ
これまで本コラムで繰り返し述べてきたように、必要とされるモノづくりは、技術だけでは完成しません。
- 現場へ行くこと
- 異なる専門分野の方々と協力すること
- 本当に解くべき課題を多角的に考えること
- 実際に手を動かして形にすること
- 社会の反応を受けて改善を続けること
これらの全てが、必要とされるモノづくりの一部です。
大学教員として、私は学生たちに完成された正解を与えることはできません。そもそも、20年後の社会に唯一の正解はないからです。しかし、未来について考える機会をつくることはできます。社会と出会う場を用意し、企業や自治体、地域の方々と一緒に挑戦できる環境を整えることも可能です。そして、学生たちが自分の考えを言葉にし、自ら手を動かし、失敗しながら前へ進む姿を支えることはできます。
モノづくりとは、単に装置や製品をつくることではありません。私たちがどのような社会で生きたいのかを考え、その社会の実現に向けて、今できることを1つずつ形にしていく営みです。
未来を完全に予測することはできません。
しかし、未来をつくることはできます。
そして、これからの未来を担うのは、今を生きる学生や子どもたちです。私たち大人にできることは、若い世代に未来を託すだけではありません。彼らが自由に未来を想像し、社会と出会い、挑戦できる機会を、世代や組織の枠を超えて一緒につくることではないでしょうか。
「必要とされるモノづくり」を、次の世代へ――。
私自身も、現場の声に耳を傾け、学生たちとともに考え、手を動かしながら、必要とされる未来をつくるための研究と教育を続けていきたいと思います。 (連載完)
筆者プロフィール
伊丹 琢(いたみ たく)
明治大学理工学部電気電子生命学科 専任講師
スマートメカトロニクス研究室(伊丹研究室)主宰
1992年生まれ。2020年に博士号(工学、三重大学大学院工学研究科)を取得。2020年4月から2024年3月まで青山学院大学理工学部で助教を務め、2024年4月から明治大学理工学部電気電子生命学科に着任し、スマートメカトロニクス研究室(伊丹研究室)を主宰する。2022年4月から岐阜大学大学院医学系研究科博士課程(社会人・リハビリテーション学)に在籍。医療・福祉デバイスを中心とした、「現場で本当に必要とされる技術」を志向した研究開発に取り組む。
また、若者たちが輝ける未来社会を実現することを重要な使命と捉え、教育・社会連携活動にも積極的に取り組む。地方自治体や企業と連携した「学生未来プロジェクト」や「未来イノベーションプロジェクト」を立ち上げ、学生が実社会の課題に向き合いながら、研究開発・実証・発信までを経験できる教育研究プロジェクトを多数推進。企業・医療機関との共同研究、展示会への出展、地域社会との連携活動などを通じて、研究成果を社会に開く実践的な場づくりを行う。
⇒ スマートメカトロニクス研究室|伊丹琢|明治大学|神奈川県
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