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現役組み込みエンジニアがAIを業務利用して分かったこと――期待と限界と現実解AI基礎解説(2/3 ページ)

組み込み開発の業務でもAI活用に対する期待は大きく高まっている。本稿では、現役の組み込みエンジニアが本業である筆者が、日々の業務にAIを組み込み続けてきて見えてきたAI活用の限界と現実解について解説する。

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4.セキュリティ設計――仕組み側で解ける問題を先に解く

 ここからは、先に挙げたAIの限界を踏まえた上で、実際にどうAIと付き合うか――セキュリティ設計側の仕組みを取り上げる。

 AIツールを“使う/使わない”以前に、製造業の現場では「そもそもAIにデータを渡していいのか」が最大の問題になる。この問題は、個人の判断で乗り越えるものではなく“仕組み側”で解いておく必要がある。

(1)製造業現場のセキュリティ縛りの実態

 製造業では、図面/仕様書/顧客とのやりとりなど、社外に出せば大問題になる情報が業務の中に日常的に混ざっている。「これはAIに渡してよい情報だろうか」とユーザーに考えさせ始めると、動きは確実に鈍る。判断を各自に委ねる運用にすると、AI活用そのものが避けられていく――。こうした光景は現場で繰り返し観察される。

(2)仕組み側で解ける問題を、先に解く

 問題を解く筋道はシンプルで、“個人の判断に委ねないツール環境を先に整える”ことに尽きる。企業契約のAIツールでは、企業内データが外部の言語モデルの学習に使われず、社外に流出しない仕組みが標準的に担保されている。ユーザーはこの前提の中で機密度を細かく判断せずにAIを使える。

(3)前提条件が整った上での“ユーザー側の実践”

 もっとも、仕組み側で担保されているからといって、ユーザー側に工夫が要らないわけではない。業務のどこにAIを組み込むか、AIの出力を誰がレビューするかを、業務単位で線引きする必要がある。仕組みが漏洩(ろうえい)リスクを消すことと、業務としてAIを活用しきることは別の話だ。ここは次の5章であらためて掘り下げたい。

 これらの運用は、“AIの能力を引き出す”というより、“AIを使える状態を仕組み側で作る”工夫である。

5.2026年のAI活用の現実解

 ここまで挙げてきたAIの有効性と限界、活用に向けて解くべき問題を前提として踏まえた上で、2026年のAI活用の“現実解”を、業務単位で捉え直したい。

 第2〜4章で見てきた通り、AIが効く場面と、そうでない場面には明確な線引きがある。この線引きを踏まえると、2026年時点での“現実解”は次の3層で整理できる。

(1)業務単位で“効く/効かない”を取捨選択する

 全業務のAI化は非現実的である。第2章の「効いた3工程」と第3章の「止まる3場面」の対比が示す通り、AI活用の成否は“どの業務にAIを組み込むか”の切り分けで決まる。「AIに自動化させる業務」と「人が判断する業務」を業務単位で明確に切り分けることが、地道だが最も効いてくる。

(2)AIの予測結果に“人間のレビュー”を必ず挟む

 第3章で見た限界を踏まえれば、AIの出力をそのまま採用する運用は成立しない。“AIの下ごしらえ⇒人間のレビュー”を業務フローに組み込むことが、AI活用の安定性を作る。2段階運用の設計こそが、AIを実務で使い続けるための骨格である。

(3)セキュリティ設計を先に整える

 第4章で述べた通り、AIを業務で使えるかどうかは、ユーザーの判断力より“仕組み側の設計”に依存する。企業契約のAIツールを選定し、社外にデータが流出しない環境を先に整えることが、AI活用の広がりを生む出発点になる。「AI導入の前にセキュリティ設計を整える」が現実解の第一歩だ。

 業務単位の取捨選択、2段階運用、セキュリティ設計の前提整備――これらの3層がそろうと、AI活用は“派手な事例”ではなく“地道な業務分解”として着実に進む。

図2
図2 製造業AI活用の現実解における3層構造[クリックで拡大]

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