弱い部分が1箇所でもあると台無しに、液晶リペア装置の失敗事例:冴えない機械の救いかた(9)(2/4 ページ)
本連載「冴えない機械の救いかた」では、メカ設計の失敗事例を題材に、CAE解析や計測技術を用いて、不具合の発生メカニズムとその対策を解説していく。第9回は、弱い部分が1箇所でもあると全体が台無しになってしまうメカの事例として、液晶リペア装置で発生した位置決め不良を取り上げる。
レーザーリペア装置
以上のように、液晶表示パネルの画素はとても小さいですね。ということは、図3に示した照射経路は、とても小さな移動量で精度の高い位置決め制御が要求されます。加えて、機械を動かしながらレーザー光を照射するので、動的な位置決め精度が求められます。
一方、液晶テレビや液晶モニターは大きいので、リペアしたい輝点の位置まで移動する「位置決め移動量」は、画面サイズのレベルで大きくなります。つまり、大きな移動量と小さな位置決めの両方が求められます。
ということで、問題となった液晶リペア装置は、大きな移動量を受け持つXYテーブルと、小さな移動量を受け持つXYZテーブルを使う設計でした。図4に問題となった装置を示します。実物の生写真もあると思いますが公開できないため、図4は説明用に筆者が作成したもので、実物とは軸構成や形状が異なります。
微小移動するXYZステージと、大移動するXYステージの違いは、サーボモーターの仕様とボールねじのリードとなります。
XYテーブルについて
メカトロ機器の設計者の方には説明不要ですが、そうでない読者の方が多いと思うので、XYテーブルについて説明しておきますね。図5は、XYテーブルの下側のX軸テーブルだけを取り出したものです。テーブルの生写真もいっぱい持っていますが、掲載はご容赦ください。
X軸テーブルは「サーボモーターやステッピングモーターで軸を回してテーブルを直線運動させるメカユニット」です。
モーターでボールねじを回すと、ボールねじのナットが軸方向に移動してテーブルが動きます。テーブルの動きを1方向に限定するために、直動ガイドが4個付いています。
ボールねじの動きは普通のねじと同じです。文献では「ねじ締結体に加えるトルクの80〜90[%]は摩擦に費やされ、残り10〜20[%]が軸力発生に使われる」と書かれています。ねじ締結体は強烈に効率の悪い機械要素ですね。
「ホントかな?」と思われた方は、過去の連載記事「ボルトの締め付けトルクを決める」で紹介した「ボルト諸量の計算シート」を使って確認してみてください。
ボールねじの場合は滑っているところはなく、全てボールの転がり対偶なので効率は悪くありません。投入したエネルギーのほぼ全量が推力に使われると考えてよいかと思います。厳密に計算したい場合はメーカーサイトを参照してください。
直動ガイドも滑っているところはなく、全てボールの転がり対偶なので摩擦抵抗は小さくなります。こうした転がり対偶にクーロン摩擦の概念を導入することには抵抗がありますが、μ=0.00*[-]程度です。本シリーズで扱うメカトロ機器は直動ガイドのガタは許されず、与圧(プリロード)をかけた直動ガイドを使うので、見掛けの摩擦係数はもう少し大きくなります。
ボールねじも同様に与圧品を使います。与圧品は、幾何学的に決まるボールが入る領域より少し大きなボールを入れて作るそうです。
CP制御(Continuous Path Control)とは
XYテーブルのCP制御(Continuous Path Control)について説明しておきます。図6左図は、普通のXYテーブルの動かし方です。最初にY方向に移動して、いったん停止してX方向に移動します。特に難しい制御ではありませんね。
では、斜めに動かす場合を考えましょう。図6中央図です。X軸とY軸を同時に動かしますが、重要な点は、X軸移動量(ないしは移動速度)とY軸移動量(ないしは移動速度)の比を一定値に保つ必要があることです。
サーボモーターで動かす場合、現在位置を測定してフィードバック制御をしますが、時々刻々、移動量と移動速度のX軸とY軸の比が一定値になるように保ちながら制御します。制御の時間間隔は短いものとなります。このような制御をCP制御と呼んでいて、専用の制御基板を使うことになります。
図6右図は角を円弧とする場合で、X軸とY軸の移動量はsinカーブとcosカーブとなり、計算量の多い複雑な制御になります。正確な円弧軌跡としたい場合は、制御時間間隔をかなり短くする必要があります。角を円弧とする場合は、次にお話しする「シール塗布装置」で登場します。
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