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AIは設計者を置き換えるのか Autodesk幹部に聞くCADと設計データの未来メカ設計インタビュー(1/2 ページ)

AIの活用が設計/製造の現場にも広がる中、CADの操作や設計者の役割はどう変わるのか。米Autodesk 製品開発/製造ソリューション担当エグゼクティブバイスプレジデントのジェフ・キンダー氏に、AIが設計業務にもたらす変化、AI時代に求められる設計データの在り方、そして同社が描く設計/製造ワークフローの将来像を聞いた。

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 製造業におけるAI(人工知能)活用は、これまで定型作業の自動化や作業時間の短縮といった用途を中心に広がってきた。設計業務でいえば、CAD操作の補助、設計情報の検索、繰り返し作業の自動化/効率化など、個別タスクを対象とした活用が中心であった。

 一方、生成AIやAIエージェントの進化により、AIの適用範囲は個別作業の効率化にとどまらず、設計から製造までのワークフロー全体へと広がりつつある。

 AIの進化は、CADを使った設計業務や設計者の役割にどのような変化をもたらすのか。そして、その変化に向けて、設計現場はどう備えるべきなのか――。

 米Autodesk(オートデスク) 製品開発/製造ソリューション担当エグゼクティブバイスプレジデントのJeff Kinder(ジェフ・キンダー)氏に聞いた。

米Autodesk 製品開発/製造ソリューション担当エグゼクティブバイスプレジデントのジェフ・キンダー氏
米Autodesk 製品開発/製造ソリューション担当エグゼクティブバイスプレジデントのジェフ・キンダー氏

AI活用は個別タスクの自動化からワークフロー全体の支援へ

MONOist 製造業におけるAI活用は、これまでの定型的なタスク自動化から、AIエージェントを使ってワークフロー全体を支援/加速する方向へと広がりつつあります。設計者の日々の仕事や、CADとの関わり方はどう変わっていくのでしょうか。

キンダー氏 われわれオートデスクは、AIによって働く人々の生産性をどう高められるかを考える上で、「タスク自動化」「ワークフロー自動化」「システム自動化」という3つの観点を重視している。

 これまでも多くのユーザーは、個々のタスクを自動化して、作業を加速し、作業時間を短縮するためにAIを使ってきた。こうした流れは今後も続くだろう。一方で、今まさに興味深いのは、AIエージェントを使ってワークフロー全体を加速する動きである。

 例えば、「Autodesk Fusion」(以下、Fusion)に組み込まれたAIアシスタント機能「Autodesk Assistant」では、自然言語による指示を基にFusionの機能を呼び出し、タスクやワークフローの自動化につなげられる。概念設計から、精密で編集可能な3Dジオメトリモデルへ短時間でつなげるといった使い方も、その一例だ。従来は複数のステップを踏んでいたプロセスをまとめ、詳細で編集可能なCADモデルへより早く到達できるようになる。

 AIエージェントによってワークフローを再構築できる領域として、PLM(製品ライフサイクル管理)も挙げられる。従来のPLMは非常に固定的で、決められたステップを踏む必要があった。しかし、AIを使えば、PLMをよりシンプルに再構築できると考えている。

 例えば、CADモデルに変更が加わると、複数のAIエージェントがPLM上の情報を更新し、さらにサプライチェーンの情報も確認する。そこで価格や在庫、納期にどのような影響が出るのかを確認し、設計判断に対するフィードバックを返す。CAD、CAM、PLM、サプライチェーンがリアルタイムにつながるような世界を想定している。

自然言語だけではなく、CADと設計の知識との組み合わせが重要

MONOist 自然言語でCADを操作するような使い方は、今後どのように広がっていくのでしょうか。また、従来のCADと設計の知識との関係も変わっていくのでしょうか。

キンダー氏 Fusionでは、Autodesk Assistantを通じて既に自然言語を使うことができる。ただし、今後しばらくは、自然言語と、CADと設計に関する詳細な知識を組み合わせることで、より良い結果が得られると考えている。

 FusionのAutodesk Assistantでは、ユーザーが自然言語で指示を入力すると、大規模言語モデル(LLM)がその内容を解釈し、Fusionの機能を呼び出す実行可能なスクリプトを生成する。これにより、自然言語による指示だけで、モデルの作成や参照、編集、削除といった操作を実行できる。単にモデルの情報を問い合わせるだけでなく、ユーザーに代わって実際にアクションを起こす点が重要である。

 ただし、AIを有効に使うには、CADシステムから何を引き出したいのかを理解している必要がある。CADと設計の知識だけで作業していると、従来と同じ設計の進め方にとどまりがちだ。一方で、CADや設計を理解していないままAIに多くの質問をしても、常に実用的な結果が得られるとは限らない。

 より早く成果にたどり着くためには、自然言語と詳細なCAD/設計の知識を組み合わせ、設計のコンテキストを理解することが重要だ。

MONOist 自然言語によるAI活用は、コンセプト設計の段階で特に有効なのでしょうか。

キンダー氏 自然言語を起点としたAIによる設計アプローチは、消費財や自動車などの分野におけるコンセプト設計を加速するだろう。そこでは大きな効果が期待できる。

 ただし、AIの価値はコンセプト設計だけにとどまらない。自動図面化やスケッチ拘束の自動化、3Dモデルから加工指示を導くことなど、設計から製造までのエンドツーエンドの流れにAIを適用できる。

 オートデスクが持つ強みの一つは、設計から製造、さらに運用に至るまでのエンドツーエンドの文脈を理解していることだ。われわれの優位性は、単体の大規模言語モデルや、特定領域だけを見るソリューションとは異なり、設計データが下流工程にどうつながるのかを理解できる点にある。

AI時代の設計者には「システム思考」が求められる

MONOist AIが設計を支援するようになると、人間の設計者に求められるスキルや役割はどう変わりますか。

キンダー氏 AI時代において、競争力を保つためには、設計者は自身の担当する特定タスクだけでなく、より広い範囲を見る必要がある。設計上の意思決定が、プロセスの異なる段階にどのような影響を及ぼすのかを考える「システム思考」を取り入れることが重要になる。

 これまで設計者は、特定の部品や作業に集中することが多かったと思う。しかしAIによって、役割の境界は少しずつ変化し、重なり合うようになる。これは、専門性が不要になるという意味ではなく、むしろ、詳細なCADと設計の知識や経験が、引き続き欠かせないものであることを意味している。

 高度にAIを活用するユーザーほど、CADと設計の知識を持つことで、より大きな恩恵を受けられる。自然言語を使いつつも、自分がCADシステムから何を得たいのかを理解しているかが重要だ。

 そのため、設計者には、AIが自分の仕事をどう効率化し、創造性を高め、設計が下流工程に及ぼす影響の理解にどう役立つのかを考える「AIマインドセット」が必要になる。

 例えば、製造性を考慮した設計(Design for Manufacturability)という考え方は以前からあるが、AIを使えば、自分の設計が製造しやすいかどうかをより把握しやすくなる。ジェネレーティブデザインも同様だ。これまでは詳細な工学的条件や数式を理解して設定する必要があり、インタフェースも難しく感じられたかもしれない。だが、自然言語を使えば、こうした高度な機能にもアクセスしやすくなる。

MONOist AIの支援範囲が広がる中で、設計判断や責任の所在についてはどう考えるべきでしょうか。

キンダー氏 設計の判断から人間が外れることは考えていない。オートデスクでは、AIは設計者を置き換えるものではなく、設計者を拡張するものだと考えている。

 AIは設計者の作業を早め、より多くの選択肢を探索できるようにする。しかし、最終的に意思決定するのは設計者だ。

 例えば、AIを使って3Dモデルから加工指示を自動生成できるようになったとしても、その指示が適切かどうか、機械を壊さないかどうかを確認/判断する責任は、製造技術者である人間にある。AIは製造技術者や設計者の仕事を加速し、支援するが、人と置き換わるものではない。

 AIによって作業時間が短縮され、より多くの選択肢を検討できるようになったとき、その時間をどう使うかは企業やユーザーが決めることだ。より多く生産するのか、コストを下げるのか、より創造的な選択肢を検討するのか、全体のスループットを高めるのか。AIはそのための可能性を広げるものである。

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