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電極触媒の基本燃料電池と構成材料の基礎知識(3)(1/3 ページ)

本連載では、水素を燃料として発電する「燃料電池」について、基本事項から技術開発動向までを、技術系の方でなくても理解できるように解説していきます。第3回では、燃料電池の発電特性を大きく左右する電極触媒の基本事項を説明していきます。

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1.燃料電池の発電特性

 電極触媒の基本事項の説明の前に、燃料電池が発電している時の電流と電圧の関係がどのようになるのかを見ていきます。

 図1は、単セルが発電している時の発電特性(電流と電圧の関係)を示しています。この曲線は、電流(I)と電圧(V)の関係を表していることから、I-V曲線とも呼ばれます。横軸は、単位面積当たりに流れる電流値(電流密度)となっています。大きさの異なるセルで特性を比較する場合、セルの面積が大きくなるほど流れる電流値の絶対値は大きくなります。単位面積当たりに規格化することで比較がしやすくなります。電流密度を大きくすることは、燃料電池の出力を大きくすることを意味します。

図1 燃料電池の単セル発電特性(I-V曲線)
図1 燃料電池の単セル発電特性(I-V曲線)[クリックで拡大]

 電流が流れていない状態の電圧(開回路電圧:OCV=Open Circuit Voltage)は、連載第1回で説明した通り、1.23V(25℃)が理論値となります。これは、物理量のエネルギー(J)と電圧(V)は次のような関係式になっていることから計算できます。

(1) エネルギー量(J)=電荷(C:クーロン)×電圧(V:ボルト)

 連載第1回で説明した通り、ΔGに相当するエネルギーを理論的に直接電気エネルギーに変換できます。水が1mol生成される時のΔGは-237.1kJ/molで、反応式から分かる通り、関与する電子の数は2molとなります。電子1mol当たりの電荷は、いわゆるファラデー定数(96500C/mol)となります。すると(1)式は、符号をとった絶対値で表すと次のようになります。

(2) 237.1×103(J/mol)=2(mol)×96500(C/mol)×電圧(V)

 最終的に(2)式から約1.23(V)が得られます。ここでは詳細には触れませんが、開回路電圧(OCV)は温度や圧力によって変化します。一般的には、温度が高くなるとOCVは低下し、圧力が高くなるとOCVは上昇します。なお、ここまでの計算は25℃/1気圧を基準とした値です。

 実際のセルのOCVは1.23Vよりも低くなります。複数ある原因の中でも主要なものとしては、反応ガスが膜を通り抜けるガスクロスリークや、詳細は割愛しますが、水が生成する通常の酸素還元反応とは異なる副反応などが挙げられます。

 図1にある通り、どんな電流値においても1.23Vの電圧が常に得られるわけではありません。この後に説明するように、電流値が大きくなるとさまざまな電圧損失が増えていき、OCVから電圧が徐々に低下していきます。

2.過電圧

 図1に示した通り、燃料電池の電圧は3つの要因で理論電圧より低下します。このように理論電圧から低下する要因を専門用語で「過電圧(overpotential)」と呼びます。この「過電圧」は、ここでは「電圧降下」と考えて頂いて構いません。

 1つ目の抵抗過電圧は、セルの内部抵抗(セルの各部材が持つオーム抵抗や部材間の接触抵抗など)に由来する電圧降下となります。つまりオームの法則による電圧降下が起こります。

(3)E=I×R

  • E:電圧(V)
  • I:電流(A)
  • R:抵抗(Ω)

 (3)式から分かる通り、電流の増加に伴い直線的に電圧降下が大きくなっていきます。部材の中で電解質膜は内部抵抗の主要因となっており、膜厚を薄くしつつプロトン電導度を向上させることが重要となります。

 2つ目の活性化過電圧は、アノード反応およびカソード反応が進む際に、乗り越える必要がある活性化エネルギーに由来する電圧降下です。

 活性化エネルギーのイメージを図2に示します。まずアノード反応では、水素分子が水素イオンと電子に分かれる反応が進む際、活性化エネルギーと呼ばれるエネルギーの山を越えていく必要があります。さらにカソード反応においても、水素イオン+電子が酸素分子と反応する際も、活性化エネルギーの山を越えていく必要があります。これらの活性化エネルギーの山を越えるために余分なエネルギーが必要となり、その余分なエネルギーが電圧降下となって現れます。

図2 水素と酸素の電気化学反応における活性化エネルギーのイメージ
図2 水素と酸素の電気化学反応における活性化エネルギーのイメージ[クリックで拡大]

 活性化過電圧は、反応が開始する初期段階で大きく発生します。すなわち低電流密度領域でセル電圧が大きく低下するのは、主に活性化過電圧が原因となります。

 活性化過電圧を小さくするには、活性化エネルギーを低下させる必要があります。その働きをするものが「触媒」となります[参考資料1]。活性化エネルギーが低下すると反応が進みやすくなり(反応速度が増加)、結果的に燃料電池の発電特性が向上します。図2に示した通り、カソード反応の活性化エネルギーは、アノード反応に比べて非常に大きくなっています。つまり、アノードでの水素酸化反応(HOR:Hydrogen Oxidation Reaction)よりも、カソードの酸素還元反応(ORR:Oxygen Reduction Reaction)の反応速度が遅くなります。燃料電池ではカソード触媒の性能が燃料電池の発電特性を大きく左右するため、活性の高いカソード触媒の開発が重要となります。

 ここまで説明した過電圧を図3にまとめます。これらの過電圧で生じたエネルギー損失分は熱となって放出されます(図1中のエントロピー変化分の熱<TΔS>も)。そのまま外部に捨てるのはもったいないので、例えば「エネファーム」では熱回収して給湯に利用しています。連載第1回で説明した通り理論発電効率は83%(HHV基準)ですが、現実の発電効率は過電圧があるためにもっと小さくなります。例えばパナソニックのエネファームの場合、定格運転時の発電効率は37.0%、熱回収効率は51.5%(いずれもHHV基準)となっています[参考資料2]。総合エネルギー効率は88.5%にも上り、非常にエネルギー効率の高い装置と言えます。

図3 燃料電池の過電圧
図3 燃料電池の過電圧[クリックで拡大]

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