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燃料電池とは何か?燃料電池と構成材料の基礎知識(1)(1/3 ページ)

本連載では、水素を燃料として発電する「燃料電池」について、基本事項から技術開発動向までを、技術系の方でなくても理解できるように解説していきます。第1回では、燃料電池の発電原理や発電効率について説明します。

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1.燃料電池って何?

 1997年に採択された京都議定書を経て、温室効果ガス排出削減目標が2015年にパリ協定が採択されました。我が国では2020年に「2050年カーボンニュートラル」を宣言しました。温室効果ガスの排出量削減を進めるため、日本のみならず世界各国においてCO2を排出しないエネルギーへの転換が求められています。

 その中でクリーンなエネルギー媒体として注目されているものの1つに「水素」があります。水素を燃焼させることで熱エネルギーが得られますが、水素を使って直接電気エネルギーを取り出す装置があります。それが「燃料電池」と呼ばれるものです。

 「燃料電池」は英語の「Fuel Cell」の日本語訳として使われています。一般的な「電池」とは異なり、外部から燃料としての水素を供給している時だけ発電する「発電装置」だと捉えてください。

 燃料電池の特長として、「(1)発電時に排出するのは水だけでクリーンである」「(2)電気化学反応で電気エネルギーを取り出すため静粛性が高い」「(3)理論発電効率が高い」などが挙げられます。これらの特長について、本連載で説明していきます。

 燃料電池の開発は、世界中で古くから行われてきました。日本においては長年の技術開発の末、燃料電池自動車(FCV:Fuel Cell Vehicle)が世界に先駆け2014年に、そして家庭用燃料電池「エネファーム(商品名)」の一般販売が2009年に始まりました。

 燃料電池にはいくつかの種類がありますが、本連載では上記のようにFCVやエネファームに使われている「固体高分子形燃料電池」を中心に解説します。

2.燃料電池の発電原理

 学校の理科の授業で、水を電気分解して水素を作る実験をしたことがあると思います。例えば、硫酸溶液のような電解液に2本の電極(炭素棒や白金板など)を浸し、それぞれの電極に電源装置のプラスとマイナスを接続します。ここに1.5V(ボルト)程度以上の電圧をかけると、次のような反応が各電極で進行します。

(1)プラス極:2H2O→O2+4H+4e

(2)マイナス極:2H+2e-→H2

 プラス極では水が酸化(電子を失う)されて酸素が発生し、水素イオン(プロトン:H)と電子(e)が生成します。このように酸化反応が起こる電極を英語で「アノード(anode)」と呼びます。

 マイナス極では溶液中の水素イオンが還元(電子を受け取る)されて水素が発生します。還元反応が起こる電極を「カソード(cathode)」と呼びます。ちなみに電極の呼び方が日本語では、電解時は「陽極/陰極」、電池の場合は「正極/負極」と表すことが多いと思います。混乱することが多いため、本連載では基本的に英語の「アノード/カソード」を使用します。

 アノードとカソードの反応を合わせると{(1)+(2)×2}、全体で次の反応が進行したことになります。

(3)2H2→2H2+O2

 式(3)だけ見ると電子のやりとりが見えませんが、外部から電気エネルギーを加えることで水が水素と酸素に分解されます。それでは式(3)を逆に進めるとどうなるでしょうか? 反応式を書くと次のようになります。

(4)2H2O+O2→2H2O

 気体の水素と酸素を単純に混ぜ合わせて反応させると、式(4)のように水が生成されます。実際には、混合して静置するだけでは反応せず、何らかのきっかけ(静電気や白金触媒との接触など)により反応が起こります。その際に反応熱が放出されますが、これは熱エネルギーであり、直接電気エネルギーを得ることができません。

 燃料電池反応は水の電気分解の逆反応だとよく言われますが、電気分解の時と同様に、式(1)と式(2)の逆反応をそれぞれ別の場所で進めるような仕掛けを作ることが必要です。

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