日産化学がAras Innovatorを導入した理由とは 工場主体で始まったDX活動の歩み:製造ITニュース(2/2 ページ)
アラスジャパンは、東京都内で同社のコミュニティーイベント「ARAS CONNECT TOKYO」を開催した。本稿では同イベントに登壇した日産化学 袖ケ浦工場 技術開発室 室長の沼尻悟氏と同工場 デジタル改革室 室長の進士智成氏による基調講演の内容を紹介する。
レシピ管理にAras Innovatorを活用 袖ケ浦工場における取り組み
袖ケ浦工場はAras Innovatorを導入し、「案件テーマ管理」「レシピ管理」「設計変更管理」「製品安全管理」の4つの領域の機能を使用している。基調講演ではレシピ管理機能を活用した袖ケ浦工場の取り組みについて紹介した。
レシピ管理機能を活用することで、研究部門や次世代技術、量産部門といった各フェーズに存在するレシピを一元的なデータ形式で蓄積可能だ。これにより、工場や部署の壁を越えたデータ管理ができる状態を目指す。
袖ケ浦工場では日産化学独自のアイテムタイプを設定し、製造対象マスタや工程トランなどのアイテムを活用してレシピを管理している。例えば、製造対象マスタでは、試験品や製品名、主幹部署、フェーズ、ERPとのコードのひも付け、承認ワークフローといった内容を管理している。
製造フローについては、Aras Innovatorのツリーグリッドビュー機能で工程や原料を構造化し、可視化している。進士氏は「例えば、調整という工程があった場合、この部分には工程トランというアイテムも用いて表現している。この調整工程の中には、仕込みやサンプリング、工程分析、攪拌(かくはん)といった手順が存在しているが、これらのアイテムを用いて表現している。原料Aを仕込むためには投入物や副産物といったアイテムを使用して、仕込み手順にひも付ける。このような形で仕込み量や温度、圧力といった各種条件などのノウハウを一元的に管理/蓄積している」と語る。
また、Aras Innovatorを活用することで適用法令ごとに工程を管理可能だ。世界的に使用されている化学物質識別番号のCAS番号や消防法、化審法、労働安全衛生法といったどの法令に該当するのかを確認でき、危険性の把握とコンプライアンスを徹底する仕組みを構築している。
また、製造対象マスタには、製品の関連情報をひも付けて情報を一元的に管理している。例えば、原料調達や業務委託など他社との取引内容を示した外部取引マスタ、製品の製造条件、品質基準に関係する資料、工程や手順が似ている別製品、化学物質/成分管理といった情報をひも付けて管理している。
Aras Innovatorの利用開始から3カ月後にアンケートを実施した結果、ユーザーからは情報探索や属人化の解消、教育/業務引継ぎといった部分で効果が生まれるのではないかと期待の声が上がったという。「これまでは研究/開発/製造部門ごとにデータが分断して存在しているだけでなく、部門内でも属人化されたデータがさまざまな形式で存在していた。これらのデータをAras Innovatorを導入することで、部門を横断して一元的にデータを管理できるのではないかと考えている」(進士氏)。
今後のPLM活用促進に向け、DAP(デジタルアダプションプラットフォーム)の導入を検討している。これにより、操作手順をガイダンス形式で誘導し、マニュアルを読まなくても正確なデータ登録が可能な仕組みを構築する。
また、今後のPLMの社内展開について進士氏は、「現在は袖ケ浦工場で標準モデルの土台が構築できた段階である。日産化学の他工場展開を同時並行で進めており、工場間を跨いだPLMの導入効果を発揮していきたい。その後は、研究所や他部門への展開も含め、PLM導入効果の最大化を目指す」と述べた。
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