製造業のコスト削減に効果大! それでも「開発購買」はなぜ根付かないのか:今だからこそ知りたい製造業の開発購買【前編】(2/3 ページ)
製造業が直面するコスト上昇圧力が大きく高まる中、コスト適正化の一手として、設計/開発の上流段階からコストに介入する「開発購買」という手法が、再び脚光を浴びている。本連載では、開発購買の考え方や課題に加え、従来になかった新しい開発購買のポイントを解説する。
開発購買はなぜうまくいかないのか
開発購買は「やらなければならないが、うまくいっていない」活動の代表格として挙げられ続けている。実際に筆者が実施していた調達部門向けアンケートでは「開発購買の推進」が5年連続で課題のトップに挙げられており、いまだ解決に至らない、もしくは解決方法が見いだせていないという回答が大勢を占めていた。この問題の根本には、2つの構造的な壁が存在している(図3)。
1つ目の壁は、部門間の意識のギャップだ。開発部門にとって「良い製品」の定義は、技術的な差別化や性能/品質であることが多い。一方、購買部門にとっての「良い製品」は、コスト最適化が不可欠な要素として含まれる。この本質的な価値観の違いが、部門間連携を難しくしている。購買部門は「仕様や設計が固まる前でなければ大幅なコスト削減はできない」という切実な問題意識を持っている。
だが、開発部門にとっては開発上流段階で購買部門に関与されることのメリットが実感しにくく、むしろ「コストの話を早い段階から持ち込まれると設計の自由度が下がる」と受け取られることもある。この意識のギャップは何らかの仕組みで解決する必要がある。
2つ目の壁は、情報共有の仕組みの機能不全だ。開発購買を機能させるためには、開発部門が「どのサプライヤーがどのような技術を持っているか」「この仕様ではコストがいくらかかるか」「代替案はないか」といった情報を、必要なタイミングで入手できる環境が必要である。
しかし現実には、このような情報は購買部門の特定ベテランバイヤーの頭の中に分散して存在しており、電子化自体が進んでいないケースも存在する。また、情報の鮮度管理も難しく、常に最新の状態を保ちながら開発部門が使用できる形で提供し続けることは、実務的に難しい。
開発購買推進のポイント
これらの2つの壁を乗り越えるための開発購買推進のポイントは幾つかあるが、まずは開発購買推進の仕組みや体制づくりが重要である。代表的な形態は「データベース活用の方式」、トヨタ自動車に代表される「わいがや方式」、開発購買チームなどの「クロスファンクションチーム方式」の3つだ(図4)。
この3つの形態の中で主流となっていたのはクロスファンクションチーム方式であり、代表的なものが、日産自動車が1999〜2002年度に実施したNRP(日産リバイバルプラン)時代の「3-3-3推進室」、富士通の開発購買推進チームであった「エンジニアリング購買統括部」などだ。これらの組織化によって、購買部門内に開発経験を持つ専門家を配置することで、主体的に開発購買を進めることができていた。
情報共有の仕組みの機能不全については、データベースの情報を管理するチームが情報の鮮度管理を行うなど、人材育成やスキルの継承といった活動に取り組むことで、壁を乗り越えようとしている。
この20年余りで上記の手法をはじめ、さまざまな仕組みが試みられてきた。しかし、これらの手法も抜本的な解決につなげることは容易ではない。
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